【OVA版】誕生編:第1章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
復職する2週間前に、霜月は事務次官の執務室に呼ばれ、垂柳とスカーレットから、今後の仕事の説明を受けていた。
「君の階級は、退職する前と同じ、中尉からだ。……ただし。本来なら、独立部隊を持つ立場ではあるが……。
君には2年のブランクがある上に、ブリューナクの操縦には、相当神経を使う。
そちらに気を取られ、部下への指示が上手くいかなくなる可能性は高い」
「そうですね……。俺のミスで、部下を死なせる訳にはいきませんし……」
「そこで……君はしばらくの間、グレンファルコン隊に所属する事になった。
サブパイロットとして、スカーレット大尉から、ブリューナクでの戦い方を学び、経験を積むんだ」
「部隊を持つのは、完全に操縦にも慣れ、あたしの許可が出てから、だな。
……その為にも、まず一ヶ月は、落ちていた体力の向上と、実践の勘を取り戻すことに、集中しろ。
だから、勤務初日から、みっちり訓練するぞ」
そして2週間後。霜月は富士の麓の訓練場で、グレンファルコン隊の面々に、挨拶した。
「霜月誠中尉です。これからしばらく、皆さんにはお世話になります。
……ブリューナクのメイン・パイロットになるためには、今のままでは足りないと、痛感しています。
なので、至らない点があれば、遠慮なく指摘して下さい。よろしくお願いします」
頭を下げた霜月に、他の隊員達も、気前よくニンマリと笑った。階級こそ霜月より下とはいえ、年上の隊員の方が、多かったからだ。
今日は出動要請が無ければ、トレーニングと事務仕事が中心の予定だった。
基礎トレが終わり、ロボットに乗っての演習になった所で、隊員達は、格納庫へ向かった。
霜月が乗る機体がどこにあるかは、ニコラス・ヘイデン曹長が案内した。
「アンタの機体は、大体いつもこの辺に置いてるから。……確か、休職前もアレ使ってたんだっけ?」
「はい。速度を考えたら、どうしてもアレになって……」
2人の視線の先には、LP-100型という、槍型の機体があった。
この「100型」は、剣や銃でも同タイプの物が製造されており、WSO軍で一番速い機体だが、その分耐久力は低い。
(ブリューナク程でないにしても、コレもけっこうピーキーなんだけどな……)
使いこなせれば、短時間で多くの敵を倒せる機体ではあるが、少しでも移動や防御に失敗すれば、逆に撃墜される可能性も大だ。
なので、搭乗者数は少なく、もう少しスピードを落とし、防御力を上げた機体の方が、よく使われていた。
しかも霜月の場合、「あまり重いとスピードが落ちるから」という理由で、盾も薄めの物を使っていた。
(それでもちゃんと戦績上げてるからな……。やっぱスカーレット大尉まで行かなくても、十分バケモンだな、この人も)
そしてグレンファルコン隊のロボットは全員、空戦用の練習場に並んだ。
元々は全て陸戦型ではあるが、今は背に、飛行用の翼を取り付けていた。
スカーレットはブリューナクに乗り、小隊同士の模擬戦を指示した。ただ、霜月だけは、バーチャル・ターゲットが沢山ある区画に、案内された。
霜月の両手足には、黒いリストバンドが巻かれていた。
「ざっと動いてみた感じ、どうだ?」
「かなり重いですね……。これはだいぶ、操作性も落ちると思います」
「それが狙いだ。しばらくは、ロボットでの演習の時は、必ずそれをつけろ。
では、早速始めるが……。霜月。ブリューナクに乗る際、一番注意しなければならない事は、何だと思う?」
霜月は数秒だけ考えた。過剰な重力と、耐久力の低さ……いや、違う。これは……。
「……ターボブースターに頼りすぎる事、でしょうか? 速さ頼みになっては、いざその手段が封じられた時、一方的にやられてしまう」
「正解だ。そもそもブリューナクは、速さや飛び道具だけが売りのロボットでは無い。……コイツは槍を操る技術も、最高峰の性能だ」
スカーレットはブリューナクの背についていた、青紫の十文字槍を、取り出した。
「だから、ブースターが封じられても、槍だけで一騎当千の働きが出来るようになれ。
お前は確かに初戦でも、ブリューナクをしっかり操縦していたが、真価を引き出すためには、まだ足りない。
……そのために、まずはその機体で、攻撃、防御、機動力を、基礎から底上げする必要がある。
だから、お前の第1の目標は、今の操縦スピードを、リストバンドを巻いてる状態でも、出来るようになる事だ」
厳しい目標だった。ブリューナクの操縦は、槍は基本はコントローラーで、後は足のペダルと、聞き手では無い方の手で、ボタンやレバーをいじるだけなので、簡単な方ではある。
だが、重いリストバンドつきだと話は別だ。
「今日は初日だから、お前の課題は『ターゲットを、指定時間以内に破壊する』だけでいい。……ただし、撃破の個数は、高く決めてあるぞ」
演習が始まった。敵はホログラムの的やロボットで、霜月が攻撃される心配は無い。
しかし、やはりコントローラーを持つ手が重く、何回か、決められた個数に届かない事があった。
(くそッ、遅れる……!! 筋力の向上もそうだが、敵の動きを先読みしながら、操作するようにならないと……!!)
***
結局クリア率は7割で、スカーレットから、「1週間以内には、100%になれ。ロボットでの直接戦闘は、それからだな」と言われた。
午前中の予定が終わり、隊員達が昼休憩に入った所で、霜月はスカーレットから、午後のトレーニング内容を聞かされた。
「2年間のブランクを埋める、お前専用の特別メニューを組んできたぞ。私と1対1の演習も入れている」
「あぁ、やっぱり……。絶対何か用意してくるだろうなって、思ってました……」
ニヤリと笑んだスカーレットに、霜月は覚悟はしていたとはいえ、寒気が走ってしまった。
スカーレットによる壮絶な訓練の数々は、昔も体験していたからだ。
(……俺達が1年の時から、ハードな訓練メニュー考えてたからなぁ、この人……)
実は霜月とスカーレットは、同じ士官学校の出身だ。極東2区屈指の名門校で、霜月は1年の時に、3年生のスカーレットに出会った。
小隊の演習で、3年生が隊長、2~1年生が部下、という想定での訓練だった。
当時から、スカーレットと霜月の成績はずば抜けて良く、一緒の隊になる事が多かった。
その頃から指導を受けていて、海兵隊に入隊してからも、教官として世話になっていた。
「それは当然だ。メイン・パイロットになるには、この程度の課題、クリアしてもらわねば困る」
「……はい」
霜月は、午後に吐いてしまうことを懸念し、昼食の量を少しだけ減らした。
***
午後に入り、『特別メニュー』を何とか終わらせた時には、もう日は暮れかけていた。
霜月は吐かずに済んだが、よろめいて、壁に右手をついて俯き、ゼェ、ゼェと上がった息を整えていた。
その横で、スカーレットはピンピンしていた。
「道場に、勤めていた頃も……。トレーニングは、毎日沢山、していたつもり、だったんですが……。やっぱり、だいぶ体力、落ちてますね……」
「それだけじゃ無く、環境の変化や、気疲れもあるだろうな。
……ま、それでも、立っているだけ及第点だ。他の奴らなら、既にへばって倒れてるぞ」
「じゃあ、無駄じゃ、なかった、ですね……」
「明後日からは、実戦形式での対戦も、入れていくぞ」
スカーレットは口の端を上げていたが、そこで真剣な顔つきになった。
「……ところで、霜月。明日の予定だが……。トレーニングは、4時で切り上げだ。それ以降は、あたしと共に、LLIに行く」
「LLIに? 何でですか……?」
この段階では、LLIの業務は「遺失科学の復興」としか、公表されていなかった。
なので、霜月には全く心当たりが無く、戸惑った。
「ブリューナクでの、任務の話があるからだ。……明日は、LLIで復活を進めている“モノ”を、直接見てもらう。
機密情報だから、今日は詳しく話せないが……。明日になれば、納得するだろう」
「君の階級は、退職する前と同じ、中尉からだ。……ただし。本来なら、独立部隊を持つ立場ではあるが……。
君には2年のブランクがある上に、ブリューナクの操縦には、相当神経を使う。
そちらに気を取られ、部下への指示が上手くいかなくなる可能性は高い」
「そうですね……。俺のミスで、部下を死なせる訳にはいきませんし……」
「そこで……君はしばらくの間、グレンファルコン隊に所属する事になった。
サブパイロットとして、スカーレット大尉から、ブリューナクでの戦い方を学び、経験を積むんだ」
「部隊を持つのは、完全に操縦にも慣れ、あたしの許可が出てから、だな。
……その為にも、まず一ヶ月は、落ちていた体力の向上と、実践の勘を取り戻すことに、集中しろ。
だから、勤務初日から、みっちり訓練するぞ」
そして2週間後。霜月は富士の麓の訓練場で、グレンファルコン隊の面々に、挨拶した。
「霜月誠中尉です。これからしばらく、皆さんにはお世話になります。
……ブリューナクのメイン・パイロットになるためには、今のままでは足りないと、痛感しています。
なので、至らない点があれば、遠慮なく指摘して下さい。よろしくお願いします」
頭を下げた霜月に、他の隊員達も、気前よくニンマリと笑った。階級こそ霜月より下とはいえ、年上の隊員の方が、多かったからだ。
今日は出動要請が無ければ、トレーニングと事務仕事が中心の予定だった。
基礎トレが終わり、ロボットに乗っての演習になった所で、隊員達は、格納庫へ向かった。
霜月が乗る機体がどこにあるかは、ニコラス・ヘイデン曹長が案内した。
「アンタの機体は、大体いつもこの辺に置いてるから。……確か、休職前もアレ使ってたんだっけ?」
「はい。速度を考えたら、どうしてもアレになって……」
2人の視線の先には、LP-100型という、槍型の機体があった。
この「100型」は、剣や銃でも同タイプの物が製造されており、WSO軍で一番速い機体だが、その分耐久力は低い。
(ブリューナク程でないにしても、コレもけっこうピーキーなんだけどな……)
使いこなせれば、短時間で多くの敵を倒せる機体ではあるが、少しでも移動や防御に失敗すれば、逆に撃墜される可能性も大だ。
なので、搭乗者数は少なく、もう少しスピードを落とし、防御力を上げた機体の方が、よく使われていた。
しかも霜月の場合、「あまり重いとスピードが落ちるから」という理由で、盾も薄めの物を使っていた。
(それでもちゃんと戦績上げてるからな……。やっぱスカーレット大尉まで行かなくても、十分バケモンだな、この人も)
そしてグレンファルコン隊のロボットは全員、空戦用の練習場に並んだ。
元々は全て陸戦型ではあるが、今は背に、飛行用の翼を取り付けていた。
スカーレットはブリューナクに乗り、小隊同士の模擬戦を指示した。ただ、霜月だけは、バーチャル・ターゲットが沢山ある区画に、案内された。
霜月の両手足には、黒いリストバンドが巻かれていた。
「ざっと動いてみた感じ、どうだ?」
「かなり重いですね……。これはだいぶ、操作性も落ちると思います」
「それが狙いだ。しばらくは、ロボットでの演習の時は、必ずそれをつけろ。
では、早速始めるが……。霜月。ブリューナクに乗る際、一番注意しなければならない事は、何だと思う?」
霜月は数秒だけ考えた。過剰な重力と、耐久力の低さ……いや、違う。これは……。
「……ターボブースターに頼りすぎる事、でしょうか? 速さ頼みになっては、いざその手段が封じられた時、一方的にやられてしまう」
「正解だ。そもそもブリューナクは、速さや飛び道具だけが売りのロボットでは無い。……コイツは槍を操る技術も、最高峰の性能だ」
スカーレットはブリューナクの背についていた、青紫の十文字槍を、取り出した。
「だから、ブースターが封じられても、槍だけで一騎当千の働きが出来るようになれ。
お前は確かに初戦でも、ブリューナクをしっかり操縦していたが、真価を引き出すためには、まだ足りない。
……そのために、まずはその機体で、攻撃、防御、機動力を、基礎から底上げする必要がある。
だから、お前の第1の目標は、今の操縦スピードを、リストバンドを巻いてる状態でも、出来るようになる事だ」
厳しい目標だった。ブリューナクの操縦は、槍は基本はコントローラーで、後は足のペダルと、聞き手では無い方の手で、ボタンやレバーをいじるだけなので、簡単な方ではある。
だが、重いリストバンドつきだと話は別だ。
「今日は初日だから、お前の課題は『ターゲットを、指定時間以内に破壊する』だけでいい。……ただし、撃破の個数は、高く決めてあるぞ」
演習が始まった。敵はホログラムの的やロボットで、霜月が攻撃される心配は無い。
しかし、やはりコントローラーを持つ手が重く、何回か、決められた個数に届かない事があった。
(くそッ、遅れる……!! 筋力の向上もそうだが、敵の動きを先読みしながら、操作するようにならないと……!!)
***
結局クリア率は7割で、スカーレットから、「1週間以内には、100%になれ。ロボットでの直接戦闘は、それからだな」と言われた。
午前中の予定が終わり、隊員達が昼休憩に入った所で、霜月はスカーレットから、午後のトレーニング内容を聞かされた。
「2年間のブランクを埋める、お前専用の特別メニューを組んできたぞ。私と1対1の演習も入れている」
「あぁ、やっぱり……。絶対何か用意してくるだろうなって、思ってました……」
ニヤリと笑んだスカーレットに、霜月は覚悟はしていたとはいえ、寒気が走ってしまった。
スカーレットによる壮絶な訓練の数々は、昔も体験していたからだ。
(……俺達が1年の時から、ハードな訓練メニュー考えてたからなぁ、この人……)
実は霜月とスカーレットは、同じ士官学校の出身だ。極東2区屈指の名門校で、霜月は1年の時に、3年生のスカーレットに出会った。
小隊の演習で、3年生が隊長、2~1年生が部下、という想定での訓練だった。
当時から、スカーレットと霜月の成績はずば抜けて良く、一緒の隊になる事が多かった。
その頃から指導を受けていて、海兵隊に入隊してからも、教官として世話になっていた。
「それは当然だ。メイン・パイロットになるには、この程度の課題、クリアしてもらわねば困る」
「……はい」
霜月は、午後に吐いてしまうことを懸念し、昼食の量を少しだけ減らした。
***
午後に入り、『特別メニュー』を何とか終わらせた時には、もう日は暮れかけていた。
霜月は吐かずに済んだが、よろめいて、壁に右手をついて俯き、ゼェ、ゼェと上がった息を整えていた。
その横で、スカーレットはピンピンしていた。
「道場に、勤めていた頃も……。トレーニングは、毎日沢山、していたつもり、だったんですが……。やっぱり、だいぶ体力、落ちてますね……」
「それだけじゃ無く、環境の変化や、気疲れもあるだろうな。
……ま、それでも、立っているだけ及第点だ。他の奴らなら、既にへばって倒れてるぞ」
「じゃあ、無駄じゃ、なかった、ですね……」
「明後日からは、実戦形式での対戦も、入れていくぞ」
スカーレットは口の端を上げていたが、そこで真剣な顔つきになった。
「……ところで、霜月。明日の予定だが……。トレーニングは、4時で切り上げだ。それ以降は、あたしと共に、LLIに行く」
「LLIに? 何でですか……?」
この段階では、LLIの業務は「遺失科学の復興」としか、公表されていなかった。
なので、霜月には全く心当たりが無く、戸惑った。
「ブリューナクでの、任務の話があるからだ。……明日は、LLIで復活を進めている“モノ”を、直接見てもらう。
機密情報だから、今日は詳しく話せないが……。明日になれば、納得するだろう」