｢見つけたぞ、追え！｣
『ちっ、クソッ！』


ガサガサと草木をかき分け、数人の影と一つの影が追いかけっこをしている。しかし、その一つの影はハァハァと息切れをしていた。


『……！』


キョロキョロとあたりを見回していると、いい隠れ家が見つかった。すぐさま軌道をずらし、その場に行くと息を潜めた。


｢くそ、どこに行きやがった!? 何としてでも見つけ出せ！｣
｢｢了解っ！｣｣


ザザッ、と敵が分散していく。おそらく先ほどの影を探しているのだろう。しかし、今は夜だ。月が出ている分、光も入った来るだろうが…深い森の中なので、少ししか入ってこない。しかも前日に雨が降っているせいで、足場も悪い。おまけに視界も悪いという悪条件の中でたった一つの影を見つけ出すのは不可能に近い。彼女は、身を潜めながらも息を整えていた。


『ハァ……ハァ……ぐっ……！』


不意に彼女は自分の左の脇腹を押える。多分、追われているのは今日だけじゃないのだろう。かなり深い傷であり、しかもそれは数日くらい前の傷だと思われた。


『あの野郎……深くやったな……！』


グチグチと愚痴る彼女は、まるで少女のような感じだった。暫く休憩し、息も整ったところで彼女はあたりを確認する。そして誰の気配も感じないことを確認すると、すぐに立ち上がった。……が、スッと首に冷たい何かが触れた。


『!!?』
｢ククッ……全員はけたとでも思ったか？ここでお前が出てくるのを待っていた。｣
『お前……っ！』


反撃しようとして武器を取ろうとすると、グッとのど元につきつけられた刀が食い込む。切れ味がいいのか、ツー……と血が流れ落ちた。


｢おっと動くな。動けば刀が喉に突き刺さるぜ。｣
『く……！』


もはや何もできない絶対的危機的状況。


(もう駄目か……大人しく捕まるべきなのだろうか……？)


らしくない事を考えているのは、自分でも分かっていた。しかし、どうしようもなかった。大人しく負けを認めようとしたとき……グッと引き寄せらた。