チョコレート・ミステイク【完結】
-- Winter, about 17 years old
チョコレート・ミステイク④【完結】
◇
窓の外でバイクのエンジン音が止まったかと思えば、数分後。玄関の鍵が開く音と同時に、殺気(と、それ以上の熱量)を纏った快斗が部屋に踏み込んでくる。
「あ、快斗! おかえり。早かった……ん、んぅっ!?」
お風呂上がり、湯気に包まれていた花梨の身体は、言葉を発する間もなく快斗の腕の中に閉じ込められる。
乱暴に奪われた唇から伝わってくるのは、さっきまでの「お菓子管理」なんて可愛いもんじゃない、剥き出しの独占欲。
「ン……快斗、苦しいよ……っ」
「……誰に、どこに、ちゅーしたんだよ」
「え……?」
「全部知ってんだよ。あの探偵ボウズに、自分からしたってこともな……!」
盗聴器の存在を隠すことすら忘れて、快斗は花梨の首筋に顔を埋め、まるで自分の印を上書きするように、熱い吐息と痕を残していく。
「……コナンくんは、子どもだから……っ」
「アイツは子どもじゃねーよ! ……いや、子どもだろうがなんだろうが、オメーがオレ以外の男を優先すんのは許さねー」
快斗の瞳には、普段のマジシャンらしい余裕なんて微塵もない。
紅子に教えられた「呪縛」なんて言葉が出る前に、快斗自身の愛が、より深く花梨を縛り付けていく。
「……一生、オレから逃げられなくしてやる。……覚悟しろよ、花梨」
ひんやりしたベッドに沈められながら、快斗の熱に煽られた花梨の意識は、甘く、ドロドロに溶かされていく……。
結局、バレンタインの最後に花梨が味わうのは、どのチョコよりも甘くて刺激的な、“快斗という名の猛毒”だった。
◇
「わぁ♡ 私の勝ち……!?」
翌日、チョコの山を数えて、花梨の指が二本立てられ、チョコレート競争は幕を閉じる。
コナン&蘭の分、そして、快斗が渡した二個で二本の指。
快斗は二個差で、花梨に負けたのだ。
「くそ~~!! あの探偵ボウズ……! 余計な1個――自分の分まで寄越しやがって!」
――オレの分あってもなくても負けじゃん! あんのエロ探偵! なーにがほっぺにチューだよ! 催促してんじゃねーわ!!
花梨に負け、悔しがる快斗。
だが、その怒りは鏡を見るたびに少しだけしぼんでしまう。
昨夜、嫉妬に任せて「検品」という名のチョコ食い荒らしを強行した結果……今朝、快斗の鼻の頭は見事にテカテカに輝いていた。
(……くそっ、花梨の肌を守るつもりが、オレがテカってどーすんだよ……)
さっき必死にあぶらとり紙で抑えたものの、花梨には「快斗、なんだかお鼻が眩しいね♡」と無邪気に笑われる始末。
けれど、目の前で無邪気にVサインを作って微笑む花梨に、快斗は目を細めた。
昨夜たっぷり可愛がった、花梨の真っ白な肌には「自分のもの」だという証が刻み込まれている。
その満足感で、快斗の表情はどこか誇らしげだ。
(けど、いいもんね! 花梨っつーチョコレート、溶かしたったもんな~♪)
そんな「大人の勝利」に浸っていた快斗の耳に、花梨の純粋な悩みが飛び込んでくる。
「ね、快斗」
「ん?」
「もらったものにはお返ししないとだね。……こんなにたくさんもらっちゃったから、なにをお返ししようかな~?」
(ヒロお兄ちゃんに相談してみようかな……)
食べ物と言えば、諸伏。
降谷も頼りになるが、彼は忙しい身。
休職中の彼なら、力になってくれるに違いない。
「――――っ!! ちょっと待てえぇぇぇ!!」
快斗がガタッと椅子から立ち上がった。
「へ?」
「今、何か感じた! 察した!! 諸伏さん、思い浮かべただろ!!?」
「ん……? え、ひょっとして声に出してた?」
「なんでそこで、その……諸伏さん出すわけ!? 料理上手な優男(諸伏)に相談なんかしたら、ホワイトデーに『手作りお菓子で胃袋まで掴んじゃおう大作戦』でも吹き込まれるに決まってるだろ!!」
「えぇー? でも、何がいいか分からないし……」
「オレだ! オレに聞け!! お返しは……そうだな、肩揉み券とか、快斗さまの言うことを一日聞く券とか、そういうので十分だ! ってか、それがいい!!」
またしても警察組(オニイチャンズ)に花梨が接触するのを阻止しようと、必死に“自分にとって都合のいいお返し”をプレゼンし始める快斗。
「えー、それは快斗が嬉しいだけだよね? 私、みんなが喜ぶお返しをしたいな♡」
首をかしげる花梨。その鎖骨あたりに、快斗が昨日付けた「赤い痕」がチラリと見えて、快斗は一瞬でまた昨夜の独占欲を思い出し……。
「……あーもう! 分かったよ、オレが一緒に考えてやる! その代わり、オニイチャンたちに電話すんのは禁止だ! いいな!?」
結局、三月十四日まで、快斗の「お返し監修(妨害)」の戦いは続くのでした――。
おしまい☆
ホワイトデー編に・・・続く?
※次ページはあとがき。