×××しないと出られない部屋

×××しないと出られない部屋


 オレは高校生探偵、工藤新一。
 幼なじみで同級生の毛利蘭と遊園地に遊びに行って、黒ずくめの男の怪しげな取引現場を目撃した!!

 取引を見るのに夢中になっていたオレは、背後から近づいて来るもう一人の仲間に気付かなかった。
 オレはその男に毒薬を飲まされ、目が覚めたら……。


「体が縮んでしまっていた!!」

「わかってるよ、早く脱出する方法を探そうよ」

「……あ、そうだな」


 ベッド周辺を念入りに物探しする花梨にツッコまれ、オレはシャワールームへと向かった。















 ……約五分前のことである。


「……花梨、おい花梨」


 オレはベッドに横たわる意識のない花梨を揺すり起こした。


「ん……、ううん……? コナン……くん?」

「大丈夫か? オレたち落とし穴に落ちたみたいだ」

「落とし穴……あ、うん……、びっくりした……」

「怪我はないか?」

「平気……」


 見た感じ花梨に怪我はなさそうだ。
 花梨はベッドに座ったまま目を擦りながら辺りを見回している。

 彼女より少し早めに目覚めたオレは既に状況を把握済み。
 ……ここは出入口のない密室。

 どうやらオレと花梨はベッドと冷蔵庫、トイレ兼シャワールーム以外何も無い部屋に閉じ込められたらしい。

 いったいここは何の部屋なんだ……。
 足を踏み入れた途端落とし穴に嵌るなんて。
 なぜ花梨と黒羽はこんなよくわからない場所に?

 ……というのも、出先でデート中らしき花梨と黒羽を見つけたオレと蘭は二人の後をつけていたのだが、途中で黒羽に見つかってしまい、一緒にとある洋館を訪れることになった。
 洋館に入った途端、足元の床が突然消え四人とも地下へと落下――、気付けばベッドの上だったというわけだ。

 部屋の広さは二十畳くらいあるだろうか……、床はフローリング。コンクリート打ちっ放しの壁にはシャワールームへの扉しかなく、外に続く出入り口がなかった。
 地下に落ちたから上に出入口が? とも思ったが、天井は高めながらエアコンと照明、それに換気のための設備に火災報知器があるだけで、頭上が開く仕掛けなどはない様子。
 空調はしっかりしており暑くも寒くもない。
 そして冷蔵庫には食べ物が入っていた。
 ……三日分くらいだろうか。


 というわけで、オレが一度見た室内を花梨が調べている間に、オレはシャワールームにやって来たわけだが――。
 ざっと見回してみても何の変哲もない少し広めのトイレ付きシャワールームだ。
 外に続くような出入口はやっぱり見受けられなかった。


「……脱出する方法はないのか……?」


 オレが呟くとドア向こうで“新ちゃーん!”と花梨の声が聞こえた。


「なにかあったのか?」

「んと、さっき一瞬だけ急に風が強くなったんだけど、そしたら天井からこれが落ちてきて」

「なに?」


 花梨が天井から落ちてきたという小さなメモ用紙を手渡してくる。
 メモ用紙の上部に弱い接着剤が塗られているから、強風で落ちるように予め貼られていたのだろう。


「なになに……?」

「なんだろうこれ……、文字っぽいけど、読めない……」


 メモ用紙には文字らしき記号が書かれていた。
 書かれている記号を見るとなんだか物足りなさを感じる。読めそうで読めない、そんな感覚。
 この文字列には全体的に何かが足りていないのだとオレはすぐに気付いた。
 足りない部分を足してやれば、意味不明だった記号が文字となり読めてくる。


「……これは……、っ……嘘だろ……?」

「ん? なにかわかったの?」

「……花梨。こ、ここはせ、せ……――ないと出られない部屋らしい」


 ――まさか、そんな部屋があるなんて……!


 メモを持つオレの手が震える。


「はい……? せ?」


 よく聞き取れなかったのだろう。花梨がきょとんと柔和な顔で首を傾げ、オレを見る。

 ……くそ、やっぱり可愛い。
 ふわふわした雰囲気がもう、そこに居るだけで癒しになるから、他人ひとのものだというのに胸が疼いてしまうじゃないか。


「っ、セッ〇スしないと出られない部屋というヤツらしいっ!」

「へー、せっ〇……ええっ!? うそっ!?(セッ〇スぅ!?)」


 オレがもう一度大きな声で繰り返すと、花梨は聞き流そうとして目を見開いた。


「……嘘じゃねー。この不完全な記号の羅列にそれぞれ一本ずつ縦横斜めに線を足してやれば文字になって読めるだろ?」


 ヒントを与えてやれば花梨はできる女だ。
 オレはメモの一部を指で押さえ、驚き目を見開く花梨にも解読させる。


「えぇー……本当だ……。やだ……エッチシナイトデラレナイってなに……、薄い本的展開ー」

「出入口を特定するためにもしないとだな……」


 ――花梨と合法的にできる……。


 部屋から出るには致し方ない処方。
 ここは個人の感情を抜きにして……。

 ……オレは頬を赤く染めて、口元に両手を添える花梨に難しい顔で告げた。


「しないとって……。なんで新ちゃんうれしそうなの……」

「え?」


 花梨に言われてオレは口角が上がっていることに気付く。
 ……部屋から出られないのなら、致し方ないじゃないか。


「ねえ、新ちゃん。蘭ちゃんが隣の部屋にいるかもしれないのに私とするつもり?」

「……」


 なんというか、花梨は察しが良いと思う。
 花梨が胸元をぎゅっと握り、じっと窺うようにこちらを見てくる。
 ……危機的状況なら、彼女は最善の行動を取れる人間だ。きっと行為も厭わないだろう。

 宝石の瞳シトリンが輝いて見えて、オレはごくりと唾を呑み込んだ。


「それに新ちゃん、今コナンくんじゃない。物理的に無理なんじゃないの?」

「無理……、じゃない」


 小学一年生の身体では物理的に難しいのは確かだ。
 けれど、それはオレが小一の姿のままであった場合の話――。

 だが、今のオレには最強のアイテムが付いている。


「えっ」


 思わぬオレの一言に花梨の目は丸くなった。


「……実は灰原から解毒剤をもらってある」

「哀ちゃんから?」


 大きな瞳をぱちぱちと瞬かせる花梨に、オレはポケットに手を突っ込み、灰原からもらった解毒剤を取り出した。


「オレがこれを飲めば、オメーとできるってわけだ」


 そう、元の姿に戻ればオレは花梨と……。
 そうすればオレはもう花梨と黒羽を想像し、悶々としなくて済む。

 否、この閉鎖空間から脱出できるってわけだ!


「できるって……っ……新ちゃん、顔がニヤついてるよ?」

「そっ、そんなわけあるかよっ!!」

「いや、すっごい嬉しそうなんだけど……」

「るせー! すんのかしねーのかどっちだ!?」

「ちょっ……!」


 なんで私が脅されてるの……?
 ……花梨の目が狼狽えるように泳いで、戸惑いを見せた。

 花梨……こいつは押しに弱い。
 今は黒羽を好きなようだが、あいつと付き合い始めたのも黒羽に押し負けたからに違いない。
 だからちょっと押してやれば……。


「オメーは経験者だろっ! オレ初めてなんだからなっ! 手取り足取り教えてくれねーとできねーだろーが!」

「ヤダーっ! する方向に話が進んでる~!(しかも私がリードとか……!
)」


 オレが花梨の手首を掴むと、彼女は肩を震わせた。


「あっちだってしてるかも知れねーだろうが!」

「あっちって……、あっ、快斗と蘭ちゃん!? あの二人もしちゃってるってこと!?」

「……ここから脱出するためには致し方ねーだろ……」


 蘭が黒羽と……は、正直想像できない。
 というか多分ない。
 いや、絶対ない。

 ……これはオレの勘だが、蘭も黒羽も同じ状況になっていたとしても触れ合わないと思う。


「やだぁ……。快斗と蘭ちゃんがしちゃうのやだあ……っ! ぅぅ……」


 蘭と黒羽がそうならない自信を持つオレとは対照的に、花梨は違うようで……瞳に涙を湛え始めた。
 ぽろっと一筋零れてオレはぎょっとする。


「な、泣くなよ……。オレたちが先に脱出して助けに行ってやればいいじゃねーか! まだ向こうはしてないはずだって!」


 ただオレは花梨と繋がりたいだけで、泣かせるつもりはなかったんだ。
 ……いや、早く部屋から脱出したいだけで!


「どうしてそんなことわかるのよぅ……」

「蘭は身持ちが硬い! オメーみたいにふわふわしてねえからな!」

「ひどーい! 私が緩いみたいな言い方しないでよぉ……! ただでさえいつも浮気疑われてるのに……うぅ……」


 オレの一言に花梨の瞳からボロボロと涙が溢れ出してしまった。
 ……ああ、泣かせるつもりじゃなかったのに、ごめん。


「そ、そうじゃなくて……、黒羽もオメー一筋だしなんか考えるだろ? けど、時間の問題だから早めに脱出した方が……」


 早いとこ脱出――というより、既にオレの中では早いとこ花梨と……の方が目的になっている。
 こんな機会でもなければ、花梨に触れられないのだから。
 せっかくの機会、無駄にしたくない。

 ……オレは涙を拭う花梨を宥めるように頭を撫でてやった。


「っ……、私、するの? 新ちゃんと?」

「……嫌か?」

「初めてじゃないし、イヤ……ってわけじゃないけど……。でもこれって裏切り行為になっちゃうんじゃ……」


 ……なに?
 オレとするの、嫌じゃないのか……。

 花梨の答えにオレの心臓がドクンと跳ねた。

 裏切り行為になるから躊躇しているだけとは……。
 それが倫理観に基づくものならそれを取っ払ってしまえば――。


「緊急避難だから黒羽もわかってくれるだろ? それにオレも黙っておくから花梨も黙ってればバレねーよ」

「うっ……、私そういうの苦手なのに……、後々のことを考えて行動しないと後悔するよっていう話でね……」

「……やったところですぐ出られるわけじゃねーし、出られる頃にはオレはまたこの姿に戻ってる。バレるわけねえ」


 ……そう。元の姿に戻って致したところで、出られるのは最短で四十八時間後。
 どのみち丸二日はここに居なければ外には出られない。
 花梨は気付いていないようだったが、メモにはそう書かれていたのだ。

 その頃には薬の効果が切れてコナンに逆戻り。
 黒羽は勘が鋭いから何か勘づくかもしれないが、さすがにそれ以上はわからないだろう。


「新ちゃん、悪い顔になってるよ?」

「……、悪いな花梨。脱出するために協力してくれ」


 覚悟を決めたオレは服を脱ぎ始めた。


「な、なんで脱ぐの」

「元の姿に戻ったら破れるだろ?」

「そうだけどっ! パンツまで!」

「恥ずかしいなら後ろ向いてろ」

「もぉっ!」


 恥ずかしいのだろう、顔を真っ赤にして背を向ける花梨が可愛い。耳まで真っ赤だ。
 オレはコナンの服を脱ぎ捨てゴックン。
 ……灰原の作った解毒剤を呑み込んだ。


「うっ……! あぁああ……あ、ぅあ……!!」


 すぐに解毒作用が働き、身体の熱が異常な程に上がる。
 身体が熱くて熱くて、膨張していくようなこの感じ。
 何度か使用しているが、熱くて苦しくて堪らない。


「あ、発作始まった……!?」

「か、花梨……っ……! はあっ、はあっ……」

「っ……、苦しいの?」

「く、苦しい……、手握って」

「……」


 オレが縋るように花梨のスカートを掴むと、彼女が手を握ってくれる。
 なんだかんだと花梨は優しくしてくれるからつい甘えてしまう。

 骨という骨、筋肉という筋肉、臓器までもが一気に成長していく過程に成長痛に似たものを感じつつ、オレはその熱さと痛みに耐えた。


「……はあっ、はあっ……ふう……。ガウン羽織ったからもうこっち向いていいぞ」

「すごい汗……。大きな新ちゃん、久しぶり」


 オレの指示で花梨が振り向くと、心配そうに覗き込んでくる。

 ……花梨の瞳は本当に綺麗だ。
 こうして見下ろすと吸い込まれそうになる。

 早く、花梨と――。


「おう、久しぶり。……なあ花梨、シャワー浴びよーぜ」

「えっ、あっ、ちょ、ちょっと新ちゃん!? きゃあっ!?」


 慌てる花梨を両腕で抱え上げオレはシャワールームへ。
 小さい時は重いと思っていた花梨だが、高校生の姿に戻れば軽いのなんのって。
 今は互いの想い人のことなんか置いておいてさ。


「ん……ふ……はっ……ぁ」

「んん……」


 シャワールームに入ったオレは、花梨の服を脱がせて下着も取っ払い、柔らかく丸い果肉にそっと触れた。

 花梨のおっぱいやわらけぇ……。
 唇も……、ずっとこうして味わいたかった……。

 ザーッとシャワーの流れる音を聞きながら、花梨の唇を自分の唇で塞ぐ。
 こうしてキスをするのはもう何度目だっけ……。

 事故もあるが、花梨が知らないうちに勝手に何度かしていることは秘密だ。


「っ……かぃ……ごめ……」

「泣くな、花梨……。集中しろ、な?」

「集中って……ンン……(快斗ごめんね……)」


 これも早く脱出するためだから……と、花梨の目尻から涙が溢れていたが、オレは無視して口付けを続ける。
 今は黒羽のことなんて思い出させてやらないし、オレも蘭を思い出したりしない。


「はあ……、かり……キスってこんなに……」

「ン……きもちい?」

「っ、ああ……、きもちぃー……」


 彼女の虚ろな瞳にオレの下半身が強く反応を示す。
 さっきから沸々と昂ってはいるのだが、それよりも気持ちがいて堪らない。

 花梨のヤツ、黒羽としている時こんな顔をするのか……なんて。
 こんな時じゃなきゃ絶対見られない幼なじみの女の顔に、オレは強い渇望を覚えた。


「う、ん……、キスきもちいよね……ンン……」


 ちゅっ、ちゅっという啄みから始まったキスは次第に舌を絡ませ合い、歯列をなぞる。
 いつもするキスは軽く触れ合うだけだったから、こんなキスは初めてだ。
 花梨の舌の動きに合わせるように、オレも真似ていった。
 酸素を欲しがり唇が僅かに離れる度に、銀の糸が互いを離さないように伸びて、また唇が重なり雫が顎へと落ちる。

 それを打ち消すようにシャワーが流れてるから音はザーッという音だけ。

 口内で花梨の舌がうねってオレの舌を絡めてくる。
 舌にも性感帯なんてあるのかは知らないが、背中がぞくぞくした。


「ンぅ……、新ちゃ……っ、上手……はあ……」

「ン……ンぅ……はぁっ……、これ好きだ……」

「ふ……んっ……どうせだから、練習台になってあげるね?」

「え」


 一頻りキスを繰り返したあとで顔を離し、花梨が赤い顔で優しく微笑む。
 オレの目は点になった。


「新ちゃんがいつか蘭ちゃんとする時、ちゃんと気持ち良くしてあげて? 私のこと蘭ちゃんだと思ってくれていいから。私も新ちゃんのこと快斗だと思っ――ン」

「はあ……、……今は蘭のことなんて考えなくていいよ」


 オレは眉を寄せ、蘭と黒羽を気にする花梨の唇を塞いだ――。




おしまい。


※次ページはあとがき。

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