白月の君といつまでも

-- Spring, about 17 years old
089:ヒロとランチを(おまけ)


▽おまけ。

花梨を見守ったヒロさんの独白……夜と朝。

【夜】

 夜の闇に溶け込み、俺はライフルのスコープを覗き込んでいた。
 円形の世界に映るのは、湯上がりのバスタオル姿で涼む、あまりに無防備な花梨ちゃんの姿。


「……零が見たら、発狂どころじゃ済まないな」


 苦笑した直後、視界に白いマントが舞い込んだ。
 反射的に人差し指に力がこもるが、すぐにその指を緩めた。

 見間違えるはずがない。
 あの日、彼女を襲った三本の矢――。

 俺が二本を撃ち落としたのと同時に、三本目を正確に弾き飛ばしたトランプ銃の主。
 “怪盗キッド”として彼女の部屋を訪れるのは、これが初めてだろう。

 ……けれど、あの日からずっと、俺は君が来るのを待っていたよ。

 レンズ越し、黒羽くんに引き入れられる彼女の顔は、とろけるような安堵に満ちていた。


「……やれやれ。あの日から今日まで、合格点は出したままなんだけどね」


 カーテンの閉まった部屋へ向けて、俺は独りごとのように呟き、引き鉄から指を離した。




【朝】

 翌朝。黒羽くんの隣で、昨日よりずっと満たされた顔で笑う花梨ちゃんを見守る。
 あの日、共に矢を弾いたあの大泥棒なら、彼女の隣に立つ資格はある。  


「……幸せになれよ。黒羽快斗くん」


 零には悪いが、あの笑顔を奪う権利は俺たちにはない。
 秘密を共有する共犯者おにいさんとして、俺はしばらく、この甘い監視を続けることにした。



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