白月の君といつまでも

-- Spring, about 17 years old
073:クラスメイトたちの反応②


「……それは……んー……多分誤解だと思う」


 ――うーん……確かに不気味なとこもちょーっとあったかもな……!


 花梨を擁護中の快斗ではあるが、想像すると一理ある。
 そういうところもひっくるめて快斗は花梨が好きだから問題ないが、気まずさをごまかすように頬を掻いた。


「誤解……?」

「まあ、確かに目が前髪に隠れて見えなかったから不気味だとか思っちゃったかもしれねーけど……、話してみると面白い子だよ?」


 ――結構はっきりもの言うしな。


 花梨は、みんなが思ってるほど大人しい子ではないし、根暗でもない。
 どちらかと言うと物怖じせず、自分の思ったことをはっきり言えちゃう子。
 そしてとにかくマイペースだ。


「……っ、なんであんな可愛いのよ……ずるい」


 青子たちと楽しそうに話す花梨を眺め、深沢は唇を尖らせる。
 おしゃれ好きな彼女も花梨のような綺麗な子に興味があるのだろう。

 いつもファッション雑誌でファッションの研究をしているようだから。確か、将来服飾関係の仕事に就きたいとも言っていた気がする。

 ……花梨を見る深沢の目が、連休前と明らかに変わったのがわかった。
 不気味だと思っていた白い髪が、今はどんな服も引き立てる最高のキャンバスに見えているらしい。


「うん、かーいーだろ? オレの彼女♪」

「快斗君、葵のあの姿、知ってたの?」

「んにゃ? 最近知ったばっかだよ?」

「え。けど、前から構ってたよね?」

「構ってたな」

「どういうこと?」

「ん~、それはまあ、いいからいいから」


 花梨に構っていた理由を話せば長くなる。
 それに――。


 ――オレと花梨の馴れ初めは、オレだけの想い出だから教えられねえな。


 初恋の花梨も、一目惚れした花梨も、どちらのファーストインプレッションも過程も、快斗にとっては自分だけの大切な想い出だ。誰かに話したりはしない。

 そんな快斗の態度に深沢は特にツッコむことはなく――「今度中森さんと一緒に服のモデルやってくんないかな……」なんて、ファッション雑誌を広げて、そこに目を落としながらも、彼女の視線は花梨の白い髪に釘付けだ。


(……あの髪、原色でもパステルでも映えるわよね。モデルとしては最高じゃない……ずるい)


 深沢の中の嫉妬が、いつの間にか“クリエイターとしての興味”に塗り替えられようとしていた。

 ……快斗が深沢と話している間に、内田と山田が花梨のそばへと寄っていく。


「っ、葵さんっ! あっ、あのっ……! 今まで悪く言って、す、すみませんでした……!」

「すみませんでした!!」


 青子たちと楽しい会話中、急にやって来た内田と山田に、頭を下げられた花梨は目を瞬かせた。


「あ……」


 青子と恵子は会話を遮られ、「トロッピーのスタンプの話してたのに!!」と頬を膨らませている。


「「よ、よかったら友達になってもらえませ……」」

「……私のことは気にしないで?」


 内山田コンビの声がハモる中、花梨は首を左右に振ってにっこり。


「「あ、ありが……」」


 “許された……!”そう思った内山田コンビは顔を上げ、ほっとした顔をしたものの――。


「言いたいことは言ってもらって全然構わないから。だから謝罪も要らないよ。お互い関わらないのが一番だと思うの」

「「えっ」」

「ふふっ♪ ホント、気にしてないから大丈夫だよ! 内田くんも山田くんも私のことはいない者として扱ってね。私もそうするから!」

「「そ、そんなぁ……葵さぁん……!」」


 花梨からはっきりと拒絶され、内山田コンビはその場で泣き崩れた。


「ブフッ!!(花梨ちゃんキッツー……けどそういうとこもすきっ!)」


 快斗は思わず噴き出してしまう。

 ……そもそも花梨は同年代の男子が苦手だ。
 中学時代にいじめられていたのだから、同年代男子が苦手になるのも無理はない。
 内田と山田も陰口を言っていたのだ。そりゃそうなるだろう。謝罪したところで……というやつだ。

 だからこうなることは予想していたけれど、ここまではっきり拒絶してくれると気持ちがいい。


「花梨ちゃんてはっきり言うよね~!」

「そういうのいいと思うよー!」

「え~? ありがとう~」


 青子と恵子に頭を撫でられた花梨はにこにこと嬉しそうに微笑んだ。


「花梨、おはよ」


 ……快斗も花梨の元へ向かい、挨拶をする。


「あ、快斗! おはよう!」

「ん、がんばったな」


 ――ああ、今日もカ・ワ・イ・イ……♡♡


 弾けるような笑顔で挨拶し返してくれる花梨に、快斗の目はとろけるように細くなった。


「ん……ふふっ。思ったより平気だった」

「だろっ? だから言ったじゃん!」

「うん……! 快斗の言う通りだった。快斗はすごいね、どうしてわかったのー?」

「わかるに決まってんだろ! オレは花梨の彼氏だぜ?」

「彼氏ってそういうの、わかるものなの?」

「うんうん」

「ふーん?」


 快斗が席に着きながら花梨に話し掛け、合間に花梨の頭に手を伸ばし撫でる。
 青子と恵子がじっと二人を見ていた。


「あ、そういや花梨」

「ん?」

「部屋に靴下忘れてったから持って来た」

「へ? あ、ごめん」

「洗っといたから」

「ありがとう!」

「どーいたしまして♡」


 鞄の中から洗った靴下を取り出し、快斗は花梨に手渡す。
 連休中、互いの家を行ったり来たりしていれば、忘れ物をすることだってあるのだ。


「そういえば快斗もインナーシャツ、うちに置きっぱなしだったよ?」

「あ、わりぃ」

「洗ってあるから明日持ってくるね」

「いいよいいよ、今日帰りに寄ってく」

「あっ、今日は青子ちゃんたちと帰るから」

「えー……」


 快斗と花梨は、何気ない会話を繰り返していたのであるが……。


「わっ……これは……。呼び捨てし合ってるから何となく気付いてはいたけど……事後だな」


 二人の会話を聞いていた恵子の頬がほんのり赤い。


「靴下にインナーって……お互いの私物が家に残ってる時点で言い逃れできないわよね」

「はぇ? なにが事故?」

「事故じゃないわよ……お子ちゃまな青子にはわかんないと思うわ、おほほほほっ!」

「ふぇっ!?」


 聡い恵子に青子は首を傾げ目を瞬かせた。
 そんな恵子の発言で他のクラスメイトの何人かも気付いたらしく――。


「「「事後……」」」

「「「事後だ……」」」」


 ……頬を赤く染めた者が多くいたという。


「「?」」


 教室内の空気がなんだかおかしい気がした快斗と花梨は、互いに目を合わせ首を傾げた。



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