白月の君といつまでも
-- Spring, about 17 years old
100:こっそり拝借したものは……
「……ん、これはなに? しそ? 甘酸っぱいな」
あっという間に弁当の9割を平らげ、最後に快斗が赤紫蘇に包まれた一口大の柔らかい何かを齧ると、甘酸っぱさが口内に広がる。
「ああそれ? それはね、しそ巻きあんずだよ」
「しそ巻きあんず?」
「うん、干したあんずをお砂糖に漬けて、しそで巻いたお菓子なんだって。親戚が送ってくれたの。甘酸っぱくて好きなんだ~。おいしいよね。いっつも蜜が余っちゃうのがもったいないな~って思ってて」
「へ~、これ杏か。初めて食べた。ソーダに入れたらうまそうだな」
――ふーん、親戚から贈られたもん……花梨の好きな味、ね。
初めて食べた味に、快斗は郷土料理か何かかなと思いながら完食した。
あとで検索して今度花梨にプレゼントしてやろうと、頭の中に“しそ巻きあんず”をインプットしておく。
「あ、それいいね! 今度やってみる! 閃いてくれてありがとう♡」
「ははっ、こんなことで礼を言われるとは思わんかった♡」
――あ~も~、こんな些細なことにお礼言っちゃって……カワイイ……♡
嬉しそうに破顔する花梨に、快斗の目は細くなった。
自分の前でだけは、こうしていつも可愛い笑顔を見せてくれるからもう堪らない。
「ふふっ。いいこと聞いちゃった~♪ 今日の帰りに炭酸水買ってこよ~っと♡ メモしとかないと……たん、さん、すい……。あ、ね、快斗、リマインダーの設定ってどうやるか知ってる?」
「ん? 貸してみ? 何時に設定する?」
「んと……、帰りは警察署に寄るから……19時くらいかな」
花梨がスマホを取り出しメモをして尋ねると、快斗が「それ貸して」と手を差し出してくる。
スマホを使い始めたのは中学三年生の秋からで、花梨は未だに上手く操作できない。メッセージアプリと通話、最近メモを覚えたばかりで。
……画面もデフォルトのままだ。
ここは快斗にお任せして……と、スマホを手渡した。
「おっけー、じゃあこうして……こうすれば……、19時に教えてくれるぜ?」
――そうそう、そうやってオレを頼ればいいんだよ……。
ニヤニヤと快斗はカレンダーアプリをタップし、時間を設定してやる。
……花梨はきっと機械音痴ではない。
テレビゲームもするし、家にはパソコンだってあった。恐らくスマホ操作を覚える優先度が低いのだろう。
素直に頼ってくれるから、このままでいてくれればいいと快斗は思った。
「ありがとう! スマホの機能、よくわかんなくて全然使いこなせてなかったの! 快斗のおかげでまた一つ賢くなれたみたい♪ うれしい♡」
「くっ、カワイイ……♡ キュンキュンするっ♡ なあ、花梨……ちゅーしてい?」
「え? ン……、ウゥン……」
――いいって言ってないのに……、あ、焼肉味……。
快斗に愛おしそうな目を向けられ、花梨の唇が塞がれる。
焼肉味のキスはほんのりニンニクの香りがしたが、見つめ合うと甘ったるくてうっとりしてしまった。
「はあ……、早く家に帰りてえ……! 警察行くのだりぃ~」
「もぅ……、快斗って最近そんなことばっかり」
「だってしょうがねーじゃん。好きなんだから」
「もぅ……」
二人きりになる度そういう雰囲気に持ち込まれ、つい流されがちになってしまうのは仕方ないのだろうか……。
けれど学校はまずいのでは?
……なんて思いながらも、結局は快斗のペースに持ち込まれて――。
「……ダメだってば」
「ちょっとだけ♡ ここには誰も来ねーし?」
快斗は立ち上がり、花梨を包むようにぴったりと背後に座り直す。
後ろからハグし、そして腹を優しく撫でた。
「っ、ホントにダメ……。下着汚したくないの」
――まだご飯中なのに……。
花梨の手元にはまだ食べかけの弁当がある。
このままいちゃいちゃし始めてしまうと、空腹で午後の授業に差し障ってしまうのだが……。
「汚したい♡ ぱんつの替えならある……」
「ん? ぱんつの替え? あるの?」
「あ、いや、何でもない。ここ、学校だもんな! ちゅーだけにしとこう。ちゅーだけ!」
――やっべ! 危うく口を滑らせるとこだった……!
口はすでに滑らせ済みであるが、今ならごまかせると踏んで、快斗は身体を捻って花梨の頬にキスをした。
「快斗……? ね、もしかして……」
「あっ、ちょ……、か、花梨ちゃんっ……!? あぁっ♡ そこはダメぇぇっ♡」
快斗の様子に花梨は何かを感じ取ったのだろう、振り返って制服のポケットを全て探る。ズボンだけではなく学ランのボタンを外し、内ポケットまでも。
すると、内ポケットから見たことのある、ピンク色のフリルのショーツが出てきた。
「……これ、私の……?? え、どうして私のパンツが快斗のポケットに入ってるの?」
「こ、これはその~……、盗んだわけではなくて……ですね。花梨嬢が私の家に来た時置いてったやつで、今度女装する時の参考にお借りしてたっつーか、なんといいますか……」
学ランの内ポケットから出てきた自身の下着に、花梨の目がぱちぱちと瞬く。
……混乱しているのだろうか、快斗の口調はキッドと素が入り混じっている。
「え、じゃあそれって、この間脱いだやつだよね? 私、忘れ物ないかって聞いた気がしたんだけど、ないって快斗言ってたような……。あ、もしかして洗って持ってきてくれたの?」
「……」
……花梨の話に快斗は黙り込んだ。
「え?」
「……、もちろん洗ってあるぜ……!」
「ちょ、ちょっと待って。ちょっと待って? なに、今の間……」
――快斗……?
忘れ物をしてしまったのは申し訳ないが、今の間は一体なんなのだろう。
快斗を見ると額に汗が浮かんで、目も泳いでいるような……。
「あー……えっと、昨日夜洗ったから綺麗になってるよ!」
「え、だって、脱いだ……というか、脱がされたのってもう何日も前で……昨日洗ったの……? 臭くなかった?」
「……、へへっ♡ 全然! 最高だった!」
「っ、えぇっ!? さ、最高って……ど、どういうこと……?」
「花梨は知らなくていーの!」
「えぇ……?」
……花梨は知らなくていい。
快斗は花梨からショーツを奪うが床に落としてしまう。
「あ~、汚れちまったな。オレ、責任もってもっかい洗って持ってくっから預かっとくな!」
「えぇっ!? 別にいいよ!?」
「だーめっ! オレが落としたんだからオレが洗っとく!」
落ちたショーツは快斗の手によってすぐに拾われ、サッと内ポケットに仕舞われてしまい、花梨は困惑した……。
※オマケ
昼休みが終わり屋上を後にして階段を下りていく。
花梨に先を歩かせ、後ろに続く快斗は――。
(やっべー……、さっきは危なかった。花梨のぱんつをおかずにしてるなんてドン引かれるとこだったぜ……)
……このまま花梨の下着は貰っておこう。
制服の内ポケット辺りをぽんぽんと撫で、ニッと口角を上げる。
盗んだ宝石は返すキッドだが、彼女の下着は返さないのであった。
……以上、ドラクエⅤ小説でもやったぱんつネタでしたw