タナトス


(もう、誰も何も信じられない)


ビジネススーツに鞄を持って、急ぎ足で歩く自分を人は仕事中だと思うのだろう。
でも違う。これしか持っていないのだ。
真っ直ぐ歩いて歩いて、いつの間にか知らない場所まで来ていた。そびえ立つビルも、脇の定食屋も、パチンコ屋も薬局もコンビニも、知っている店名なのに場所が違うだけで全く知らない店に思える。
人の流れの邪魔にならない様に端に寄り、ガードレールに腰を下ろした。突発的に出てきてしまったので、立派な鞄の中には財布と手帳しか入っていない。携帯は昨夜、衝動に任せて捨ててしまった。手帳も一緒に捨ててしまえばよかった。


(というか俺がもう俺を捨てたい)


自暴自棄とはこういう事を言うのだろう。でもそうなってもいいぐらいの仕打ちを自分は受けたと思う。しょうはそう思い、ここ数日間を振り返った。
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