朝に弱い柳弥は毎度起こされている。今日も今日とて起きない彼女から布団をはぎ取った男…相澤消太。柳弥の彼氏にして憧れのヒーロー。何故憧れているのか、というのはまた別の機会に。

彼女がまだ雄英に通っていた頃に惚れて卒業と同時に同棲を始めて、数年。彼の同期のプレゼントマイクにはいつ結婚するんだ、なんて言われている。

「いい加減に起きろ。」

そう言いながらベットに寝ている柳弥を揺さぶる。一見乱暴に見えるが案外そうでもなかった。
ん、と小さく声を発しながらもぞもぞと起き上がる彼女の頭を軽くはたいた。

「飯出来てるぞ。」

そう言って布団を畳んで部屋を出て行った相澤の背中を眺めると机に目をやった。

「あー…そういや、今日だったか…」

卓上に置かれているカレンダーをみて呟いた。そこには赤く丸が付けられていた。
丸が意味するのは、今日が雄英教師としての初めての仕事…及び、二度目の学生生活の始まりをあらわしている。

もぐもぐと朝食のパンを食べながら時間を確認する。
まだ家を出るには早い時間だった。もう少し寝ていたかったという気持ちもあるが、彼は雄英教師で柳弥は表向きは”生徒”なのだ。ましてや入学式当日。一緒に登校なんてできるはずもなく。

だからこそ相澤が出る時間に起こされたのだが。
…本当なら一緒にいきたかった、という言葉は口が裂けても言わないだろう。

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「これで大丈夫かな……」

普段から来ている私服に身を包み、鏡の前で一人考え事をしていた。それもそのはず、流石に中学の制服まで用意はされていない為、私服で今日の入学式を受ける事になっていたのだ。

本日の格好は黒のパーカーに白のワイシャツ（ちょっとしたライン入り）、黒のズボンと割と動きやすいラフな格好だ。捕縛布が無いと寂しいのでマフラーを代わりに巻いて。ついでに手袋（指ぬき）も。

「…まあ校長が何とかしてくれてると思うから…いいか」

扉に立て掛けてあった鞄を手に持ち、そう呟くといってきます。と誰もいない家に声を掛けて扉を開ける。

まだ、少し肌寒い。そう感じながら雄英高校へと足を運んだ。