事の始まりは中国　軽慶市。
発行する赤子が生まれたというニュースだった。

以降、各地で「超常」は発見され…
原因も判然としないまま時は流れる。

いつしか「超常」は「日常」に。
「架空（ゆめ）」は「現実」に。

世界人口の約八割が何らかの”特異体質”である超人社会となった現在。
混乱渦巻く世の中で、かつて誰もが空想し憧れた一つの職業が脚光を浴びていた。

＿＿これは、そんな”現実”に生きるヒーローとヒーローを目指す若者の物語である。

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「僕が教師に？」

数年ぶりに呼び出しを受けて何事かと母校へと足を踏み入れてみれば、柳弥に告げられた内容は教師をしてみないかというものだった。
思いもよらない内容に、相手が雄英の校長＿＿根子だというのにも関わらず敬語を忘れてしまうほどだった。

「柳弥くんに是非新入生の副担任を担ってもらいたくってね。」

紅茶を飲み終わると「どうかな？」と言って柳弥を見つめている瞳には期待が滲み出ていた。そんな様子を見て柳弥は口を開いた。

「…構いませんよ、他ならぬ校長の頼みですし。」

そう伝えると、根子は嬉しそうに色々と手続きに必要な書類を柳弥の目の前に差し出した。
そんな様子を眺めながら、カップに残っていた紅茶を飲み干した。
その間にも色々な書類が積み重なって山のようになっていた。
うわあ、といった表情で見ていたら、根子に余り表情が表に出ないのは昔からだね、と言われて苦笑いを浮かべた。

「自分だと出してるつもりなんですけどね。こればっかりは。」

飲み干したカップを邪魔にならない端に置きながらそう話して。
そんな様子を見ていた根子が口を開く。

「…実はね、教師の他に目的があるんだ。」

柳弥が口を開く前に根子は言葉を続ける。

「もう一回学生になってもらおうと思ってたんだ。要するに新入生に紛れてもらおうということさ！
ほら、君が在学中はクラス０人だったでしょ？」

そう言われて柳弥は頷いた。当時の担任＿相澤＿が彼女以外全て除籍処分にされた為か、三年間ずっと一人で過ごしてきた事で他人に対する気持ちや言葉、態度、距離感が柳弥にはわからなかった。要するに、それを直そう、という魂胆らしい。
つくづく彼には頭が上がらない、と柳弥は感じていた。

「それに、他人は怖くないってことを教えてあげたくてね。」

隣にいても柳弥自身が安心できるのは、雄英の一部教師と昔インターンで関わったことのあるヒーローのみ。そうなった要因には彼女の過去が関わってきているのだが。未だに人に対してどこか信用を置けないのを見透かされていたとは思っていなかったのか、柳弥が口を開いた。

「…知ってたんですか、校長。」

伊達に問題児を見てないからね、なんて言うと微笑みを浮かべた。

「……意図は理解しました、ですが。」

「わかってるよ、制服でしょ？今までと同じ…男子制服がここにあるよ」

そう言って新品の制服を差し出されればよくお分かりで、と笑みを浮かべた。彼女の事をよく理解している人物以外には表情が変わっていないように見えるだろう。

「…ちなみに表向きの名目としては？」

これだけでは終わらないだろう、と柳弥が質問をした。

「新入生の”個性”を僕たち教師陣とは違う目線で見るためさ。だから試験にも出てもらうよ。」

その答えを聞くと覚えときます、と言って立ち上がった柳弥が部屋を出ようとすると声がかかった。

「この事は相澤くんも知ってるからね。隠そうとしても無駄さ！」

すっかりいつもの雰囲気に戻った校長にそう言われればバレてた、といった反応を示した柳弥だった。

「…はーい校長。それでは、また今度。」

釣られていつもの調子に戻ったのかそう伝えて書類を片手に部屋を出た。

＿＿＿＿＿これから始まる、二度目のヒーローアカデミア。
否…真のヒーローアカデミアと呼ぶべきか。

そんな期待に胸躍らせながら、帰路につくのだった。