昨日緑谷と会話した内容を思い返す。
柳弥が保健室に立ち寄ると、緑谷は丁度治療を終えたところだった。

「あ、柳弥くん！」

「どうもリカバリーガール。…緑谷くんは指大丈夫だった？」

リカバリーガールに一礼し、緑谷に声を掛ける。
緑谷はリカバリーガールの個性の治癒で疲れているように思える。

「ああ、うん。でもすごい…疲れた…」

「あんまりケガしないようにすることだね」

リカバリーガールの言葉を聞いて確かにそれが一番いいと感じる。が、緑谷の現状だとこれからもお世話になりそうだな、なんて。

「それがいい。んじゃ、行こうか？緑谷くん」

柳弥がそう声をかけると緑谷は急いで立ち上がった。リカバリーガールに一言お礼を言うと柳弥の背中を追いかけるように保健室を後にした。

「そういえば、柳弥くん。着替えてなかったの？」

教室へと向かう途中に緑谷から声を掛けられて振り向く。緑谷は制服に着替えているのに対して柳弥は体操着のままだった。

「ん、あー…職員室寄っててね」

柳弥がそう言うと成程、といって緑谷は頷いた。事情を知っている分柳弥は話しても問題ないだろうと判断していた。

「合理的虚偽に疑問抱かなかった？」

ふ、と笑みを浮かべながら柳弥が話すと緑谷はきょとんとした表情を浮かべていた。

「途中までは本気だったよ、最下位の話」

「えっ」

柳弥がそう言うと緑谷の表情がみるみる青ざめていった。ちょっと悪いことをしたかな、と柳弥は感じつつも言葉を続ける。

「…ま、あの人（先生）なりの優しさだよ。そのうちわかるだろうね」

教室の傍まで来ると柳弥は着替えてくる、といって呆然とする緑谷を置いて更衣室へと行ってしまった。

「え…えええええええ！！！？？？」

廊下には緑谷の悲鳴が虚しく響くだけだった。