「んじゃ、パパっと結果発表。
トータルは単純に全種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので一斉開示する。」

そう言って順位皆に見えるように映し出す、その時に相澤は悪い笑みを浮かべながら言葉をつけ足した。

「ちなみに除籍はウソな。」

その言葉に多くは目を丸くしただろう。柳弥はその言葉にふ、と笑みを零すだけだった。

「君らの最大限を引き出す合理的虚偽。」

そう言い終わると悲鳴にも似た何かが聞こえてきた。
合理的虚偽、ねえ。なんて思いながらその様子を眺めている。

見込みナシじゃなかった、だからこその撤回だったんだろうと柳弥は考えていた。相澤消太という人物は、半端に夢を追わせない。半端な気持ちで続けることほど、残酷なことはない。そういう人物だと知っていたからだ。

不器用で、合理的な優しさ。

「これにて終わりだ。教室にカリキュラム等の書類あるから目ぇ通しとけ」

そう言い終わると緑谷に保健室利用のための紙を渡していた。

まずは、最初の壁クリアかな。なんて思いつつ柳弥は一人も欠けなかったクラスを見ていた。

「…さて、どうなる事か」

柳弥は皆が教室へと向かう中、一人職員室へと足を運んでいた。

「合理的虚偽って初めて聞いた」

職員室に着くや否や先に座っていた相澤に声を掛けると柳弥も隣に腰かける。

「お前、教室行ってないだろ」

あからさまに相澤に話を逸らされてつい笑みが零れた柳弥は言葉を続ける。

「今は人が多いから後で行く…珍しくイレイザーが嘘をついたなと思って」

そう言って柳弥は自身の机を片付け始める。教師用に作られたカリキュラムのプリントやその他必要書類が散乱していたからだ。まだ職員室には人がおらず、入学式長引いてるなあ、なんて柳弥は感じていた。

「……見込みゼロじゃなかった、それだけだよ。ほら、煩いのが戻ってくる前に戻っとけ」

ため息交じりにそう答えれば相澤は柳弥の頭の上に手を置いた。軽く撫でるとそのまま職員室の外へと連れていく。

「今日は先に帰っとけ、いいな？」

「ん…わかった、また後で。」

簡単な受け答え、けれどどこか楽しそうに柳弥が返事をすると教室の方へと足を向かわせる。その前に着替えたほうがいいか、とか色々考えつつ。

そういえば緑谷は大丈夫なんだろうか、と教室ではなく保健室の方へと足を運ぶことにした。