呪術短編
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「眠れないの?」
夜らしく抑えた声に振り返れば、見慣れぬラフな格好の乙骨くんがいた。それもそうか、夜中まで制服を着ているわけがない。それでも着るものは、制服じゃなくても白いらしい。
「眠れないわけじゃないよ」
「じゃあ、どうして?」
こんな夜中に出歩いているのか。その疑問は口にこそはっきりとは出されなかったけれど、私をじっと見つめる瞳はそう問うているし答えを待っていた。なぜ。そう言われても、明確な答えはないのかもしれない。ただ、寝たくないと思ったのだ。
「寝たら、朝がくるじゃん」
なんて頭の悪い回答。言ってから自分で笑ってしまう。寝ても寝なくても、朝はくるのに。
静かな部屋は、早く寝ろと急かしてくる。寝て、明日へ行けと追いやるのだ。私はまだ今日に居たいのに。だから逃げるように外へ出て、そして乙骨くんに見つかったのだ。
「乙骨くんは?」
「僕は目が冴えちゃって、少し散歩」
「そっか、不良だね」
「ええ?」
「深夜徘徊」
きみも同じじゃない、そう言って表情を緩めた乙骨くんに、私はくすくすと静かに笑った。大きな声を出さないのは、夜だから。みんな寝ているから。夜明けに見つかるから。同じく声を抑えて笑う乙骨くんに、ひとつ提案をする。
「ねぇ、不良ついでにさ。一緒に朝から逃げようよ」
変なことを言ってる、自覚はある。けれど乙骨くんは柔らかく笑ったまま。うん。ひとつ頷いた。
「つきあうよ」
「ありがと」
道連れを得た逃避行。夜はまだ深く、相棒は心強い。もしかしたら。夜明けから逃げられるかもしれない、なんて。