呪術短編
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桜が咲いている。それだけで、深夜であろうと外に出るには十分な理由だ。
高専の敷地内にある桜は今が満開で、明るく照らすには足りないくらいの外灯が、はらはらと舞い落ちる花びらを浮かび上がらせている。
白いから、光を映して夜に浮かぶんだ。桜なのだから薄桃色なのだろうけれど、闇の中では圧倒的に白かった。
ひらり、ひらり。小さな花びら達の間を、真っ直ぐにこちらへ向かってくる白い塊……あれは人影だ。近づいてきたその姿は見慣れたもので、意識せずとも顔が緩んでしまったのが分かる。
「こんばんは、乙骨くん」
「こんばんはナオちゃん……って、こんな時間になにしてるの?」
「んー?お花見?」
私がそう言うと、乙骨くんは頭上を仰ぎ見る。満開の桜は応えるように枝を揺らし、スコールのように花びらを降らせた。溺れるかと錯覚するような桜の嵐。圧巻だ。
「これは確かに、すごいね」
「でしょ」
「でもこんな夜遅くに出歩いちゃだめだよ?」
「乙骨くんはいいの?」
「僕は任務の帰りで……じゃなくて!きみは女の子なんだし、良くないよ」
女の子なんだし。普段ならば、女だからって見くびるなと食ってかかるところだったかもしれない。だって私は呪術師だ。男も女も関係ない、戦って祓うのが全てだから。
けれど今は、桜が満開だし。言われた相手が、乙骨くんだし。好きな相手からであれば女の子扱いも悪くないと思うなんて、私の頭もだいぶ恋愛の呪いがかかってる。
「こんな遅くまでお疲れ様」
「うん、ありがとう。送っていくから帰ろう?」
自然と差し出された手は、エスコートしてくれるとでも言うのか。ただ暗くて視界が不明瞭だからかもしれない。でも、こんな都合のいいことがあるんだ。
押し隠した緊張と、ほんの少しの期待を乙骨くんの手に重ねる。それを緩く握られて、跳ねる心臓の音はさすがに隠せない。聞こえてませんようにとこっそり祈る私に、乙骨くんはふにゃりと笑った。
「……もう少し、お花見してから行こっか」
帰ろうって言ったの、乙骨くんなのに?そうは思ったけれど、嬉しい気持ちの方が強くてそんなことは言えない。だからといって咄嗟に気の利いた言葉もでないくて、返事の代わりに、私の手を包む大きな手を握り返した。
高専の敷地内にある桜は今が満開で、明るく照らすには足りないくらいの外灯が、はらはらと舞い落ちる花びらを浮かび上がらせている。
白いから、光を映して夜に浮かぶんだ。桜なのだから薄桃色なのだろうけれど、闇の中では圧倒的に白かった。
ひらり、ひらり。小さな花びら達の間を、真っ直ぐにこちらへ向かってくる白い塊……あれは人影だ。近づいてきたその姿は見慣れたもので、意識せずとも顔が緩んでしまったのが分かる。
「こんばんは、乙骨くん」
「こんばんはナオちゃん……って、こんな時間になにしてるの?」
「んー?お花見?」
私がそう言うと、乙骨くんは頭上を仰ぎ見る。満開の桜は応えるように枝を揺らし、スコールのように花びらを降らせた。溺れるかと錯覚するような桜の嵐。圧巻だ。
「これは確かに、すごいね」
「でしょ」
「でもこんな夜遅くに出歩いちゃだめだよ?」
「乙骨くんはいいの?」
「僕は任務の帰りで……じゃなくて!きみは女の子なんだし、良くないよ」
女の子なんだし。普段ならば、女だからって見くびるなと食ってかかるところだったかもしれない。だって私は呪術師だ。男も女も関係ない、戦って祓うのが全てだから。
けれど今は、桜が満開だし。言われた相手が、乙骨くんだし。好きな相手からであれば女の子扱いも悪くないと思うなんて、私の頭もだいぶ恋愛の呪いがかかってる。
「こんな遅くまでお疲れ様」
「うん、ありがとう。送っていくから帰ろう?」
自然と差し出された手は、エスコートしてくれるとでも言うのか。ただ暗くて視界が不明瞭だからかもしれない。でも、こんな都合のいいことがあるんだ。
押し隠した緊張と、ほんの少しの期待を乙骨くんの手に重ねる。それを緩く握られて、跳ねる心臓の音はさすがに隠せない。聞こえてませんようにとこっそり祈る私に、乙骨くんはふにゃりと笑った。
「……もう少し、お花見してから行こっか」
帰ろうって言ったの、乙骨くんなのに?そうは思ったけれど、嬉しい気持ちの方が強くてそんなことは言えない。だからといって咄嗟に気の利いた言葉もでないくて、返事の代わりに、私の手を包む大きな手を握り返した。