呪術短編
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気づいたら恋に落ちていて、それは最初から無謀な恋だと分かっていた。だから私は、可哀想な恋心を丁寧にていねいに祓った。その代償とばかりに痛いと泣き叫ぶ心を慰め宥め、少しずつかさぶたが重なり剥がれて傷が薄く跡を残すばかりになった頃。
「きみが、好きだ」
目の前ではにかむ男は、特大の核爆弾を叩きつけてきたのだ。
「え……えーーーーと、乙骨憂太くん……?」
「なに?ていうかなんでフルネームなの」
へにゃりと柔らかく垂れた眉、笑みの形の口元。ほんのり頬を染めた顔は見間違いようもない。だって恋した相手だ、忘れられるわけが無い。正真正銘乙骨憂太その人だ。紛うことなきそれを思わず確認してしまう程には、彼から今発せられた言葉は衝撃的だった。
「聞き間違いじゃなければ、こくはく、されたような気がするんだけど……」
「あれ?精一杯告白したつもりなんだけど」
少しだけ首を傾げた乙骨くんが、私からの返事を待っていることは明白で。塞がったと思った傷口が痛くて、心が軋む。
「……だっ、て。乙骨くんにはリカちゃんがいるでしょ?」
「ちゃんと話し合ったよ。納得してくれるまでに時間はかかったけど、僕の恋を応援してくれるって」
怨霊とも話し合いができるんだなぁ、なんて場違いなことを考える。
あの頃、乙骨くんに恋をしたあの頃、リカちゃんは最大にして最強のライバルだった。もちろんの不戦敗である。そのリカちゃんが、乙骨くんの恋を応援すると言ったなんて。
本当だろうか。納得したと思ってるのは乙骨くんだけで、私が付き合うと言ったら普通に呪われるんじゃないかな。
「あ、信じてないでしょ。大丈夫、リカちゃんは僕が幸せであれば良いって言ってくれたから」
「……そ、れは、えらいね……?」
怨霊に対してえらいと言っていいのか、よく分からないけれど。小さな子供の怨霊だというから間違ってはいないのかもしれない。
乙骨くんが幸せであればいい、それは私にも分かる。好きになった人には幸せでいてほしい。だから、リカちゃんが願う「乙骨くんの幸せ」というのが、私にとってとんでもなく危険なものだということも、わかる。
ひとつ、もし断ったら殺される。告白してフラれるなんて、幸せの対極みたいなものだから。ふたつ、付き合ったとしても、何かあって喧嘩でもしようもんなら殺される。お互い好きでも、喧嘩をする状況が幸せだとは思えない。うん、付き合っても付き合わなくてもなかなかにデンジャラスだ。
「……ナオちゃんが、いろいろと気にしてるのはわかるよ。怖いと思うのも、わかる。だから告白なんてしても迷惑かなってずっと悩んでたけど、」
一切目を逸らさずに言い募る乙骨くんから、私も目を逸らせなかった。その瞳の奥に、甘くて暗い感情が見えてしまったから。
「どうしようもなく、きみが好きなんだ」
告白の言葉を繰り返して、そろりと伸びた手が柔らかく私の手を包む。大きな手だった。重なった手から微かに、でもしっかりと伝わる振動は、乙骨くんの鼓動だろうか。熱くて、速い。
祓ったはずの恋心が、息を吹き返した気配がした。
「きみが、好きだ」
目の前ではにかむ男は、特大の核爆弾を叩きつけてきたのだ。
「え……えーーーーと、乙骨憂太くん……?」
「なに?ていうかなんでフルネームなの」
へにゃりと柔らかく垂れた眉、笑みの形の口元。ほんのり頬を染めた顔は見間違いようもない。だって恋した相手だ、忘れられるわけが無い。正真正銘乙骨憂太その人だ。紛うことなきそれを思わず確認してしまう程には、彼から今発せられた言葉は衝撃的だった。
「聞き間違いじゃなければ、こくはく、されたような気がするんだけど……」
「あれ?精一杯告白したつもりなんだけど」
少しだけ首を傾げた乙骨くんが、私からの返事を待っていることは明白で。塞がったと思った傷口が痛くて、心が軋む。
「……だっ、て。乙骨くんにはリカちゃんがいるでしょ?」
「ちゃんと話し合ったよ。納得してくれるまでに時間はかかったけど、僕の恋を応援してくれるって」
怨霊とも話し合いができるんだなぁ、なんて場違いなことを考える。
あの頃、乙骨くんに恋をしたあの頃、リカちゃんは最大にして最強のライバルだった。もちろんの不戦敗である。そのリカちゃんが、乙骨くんの恋を応援すると言ったなんて。
本当だろうか。納得したと思ってるのは乙骨くんだけで、私が付き合うと言ったら普通に呪われるんじゃないかな。
「あ、信じてないでしょ。大丈夫、リカちゃんは僕が幸せであれば良いって言ってくれたから」
「……そ、れは、えらいね……?」
怨霊に対してえらいと言っていいのか、よく分からないけれど。小さな子供の怨霊だというから間違ってはいないのかもしれない。
乙骨くんが幸せであればいい、それは私にも分かる。好きになった人には幸せでいてほしい。だから、リカちゃんが願う「乙骨くんの幸せ」というのが、私にとってとんでもなく危険なものだということも、わかる。
ひとつ、もし断ったら殺される。告白してフラれるなんて、幸せの対極みたいなものだから。ふたつ、付き合ったとしても、何かあって喧嘩でもしようもんなら殺される。お互い好きでも、喧嘩をする状況が幸せだとは思えない。うん、付き合っても付き合わなくてもなかなかにデンジャラスだ。
「……ナオちゃんが、いろいろと気にしてるのはわかるよ。怖いと思うのも、わかる。だから告白なんてしても迷惑かなってずっと悩んでたけど、」
一切目を逸らさずに言い募る乙骨くんから、私も目を逸らせなかった。その瞳の奥に、甘くて暗い感情が見えてしまったから。
「どうしようもなく、きみが好きなんだ」
告白の言葉を繰り返して、そろりと伸びた手が柔らかく私の手を包む。大きな手だった。重なった手から微かに、でもしっかりと伝わる振動は、乙骨くんの鼓動だろうか。熱くて、速い。
祓ったはずの恋心が、息を吹き返した気配がした。