呪術短編
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週末の今日は学校が休みだ。同級生たちはそれぞれ別の用事があるとかで出かけているし、私は私で特に用事がない。けれど寮に引きこもっているのもなんだかなぁ。幸いなことに今日は天気が良くて、外も気持ちがいい。というわけで、私はひとり散歩でもしようかと高専の敷地内を歩いていた。
「はい」
急に短い言葉と共に半ば放られるように渡されたそれを、ついつい反射で受け取ってしまった。手のひらの上でかさりと乾いた音を立てたそれは、小さめの紙袋。遅れて視線を巡らせ声の主を確認すると、担任の五条先生がいつのまにか傍にいた。
「わ、先生!これなんですか?」
「お・み・や・げ!」
「おみやげ?」
「そ!仙台名物喜久福だよー僕のオススメはずんだ生クリーム」
おみやげ。そういえば五条先生、昨日は出張だとかでずっと不在だった。先生がいないからといって授業が遅れるなんてことは無く、むしろ平和にしっかりと実習ができた。たいへん有意義な一日だった。
「僕の留守中寂しかったでしょ?」
「いえ全然」
「寂しい思いをした可愛い生徒に、優しーい先生がおみやげ買ってきてあげたよっ」
さあ喜んで!と言わんばかりの態度で感謝待ちをしている先生。いったい何歳児なの。少し呆れながらも、いつも忙しくしている先生がわざわざ生徒のためにおみやげを買ってきてくれたのはちょっと嬉しい。きくふく。名前だけだとよくわからないが、どうやら甘いものみたいだ。みんなで分けて食べられる物ならいいけど。
「ありがとうございます、後でみんなで食べますね」
「え、それナオの分しかないよ?」
「えっ」
そう言われてみればたしかに、いくら少人数の同級生とはいえみんなで食べる数が入っているようには思えない。手のひらに乗る小さな紙袋は少しひんやりとして軽い。
「なんで私の分だけなんですか……?」
「んー、なんでだと思う?」
ずい、と顔を寄せられて、思わず少し身を引いた。だって仕方ない。隠された目元は見えないけれど、鼻筋や口元から察するに先生は、顔がいい。背も高ければスタイルもいいし、声もいい。なにより呪術師として最強だ。ハイスペックだ。彼氏すらいない私には、この距離はちょっと刺激が強すぎる。
先生は、彼女とかいるのかな。ふとそんなことを考えてしまう。だって、わざわざ私一人におみやげを買って、授業もないこんな休日に、出張から帰ってきたばかりなのに会いに来るなんて。勘違いしてしまう。
もしかして私の事好きなんですかー?なんて冗談めかして聞ければいいのかもしれないけれど、生憎私はそんな性格じゃなくて。口から出たのは出来の悪い生徒そのもののセリフだった。
「……わかりません」
「あれ、結構わかりやすく教えてあげたと思ったけど。僕も教師としてはまだまだかなぁ」
口元で笑みの形を作ったままの先生は、近かった顔の距離を更に詰めて。
鼻先が、触れた。
「……っ、先生!?」
私は反射的に飛び退った。一瞬にしてぐんと開いた距離の向こうで、先生は態とらしく驚いた表情を作って小さく拍手している。完全におちょくられてる。苛立って睨むけれど、きっと今の私の顔は赤くなってる。常人離れした跳躍で離れた距離は、日頃鍛えた成果だ。でもこんな私の全力だって、先生なら逃げる前に捕まえることも出来たはず。だって先生は五条悟だ。
「うん、いいね。その様子だとなんでかわかったでしょ」
私の勘違いを、勘違いではないと言外に告げてくる。そんな、まさか。間違いじゃないのか。先生が、あの五条悟が、私みたいな子供を。
「それ間違ってないから」
だから覚悟してて。僕、全力でオトすよ。
至極楽しそうに言いながら、一歩一歩とゆっくり距離を縮めてくる。言われた私はきっとさっきよりも顔は真っ赤で、心臓もうるさくて、全身が熱を持ったように熱い。
「ま、あんまりいじめちゃ可哀想だしこの位にしとこっか。今日はね」
「……からかわないでください……!」
「からかってない」
また一歩。ゆっくりと、でも長い足のせいで大きな一歩だ。そうやって近づいてくる先生に耐えきれなくて、私は踵を返した。あとは脱兎である。
「あぁ喜久福、冷たいうちに食べなよ」
先生の言葉を背中で受ける。その声の遠さから察するに、この位にしておくとの言葉通りに追いかけては来ないみたいだ。正直たすかる。先生に追いかけられたら、私なんてコンマ数秒も経たずに捕まってしまう。追いかけてきていないとわかっても、私は寮の自室に着くまで全速力をやめることが出来ず、部屋に着いた時には息も絶え絶えになっていたのだった。
「はい」
急に短い言葉と共に半ば放られるように渡されたそれを、ついつい反射で受け取ってしまった。手のひらの上でかさりと乾いた音を立てたそれは、小さめの紙袋。遅れて視線を巡らせ声の主を確認すると、担任の五条先生がいつのまにか傍にいた。
「わ、先生!これなんですか?」
「お・み・や・げ!」
「おみやげ?」
「そ!仙台名物喜久福だよー僕のオススメはずんだ生クリーム」
おみやげ。そういえば五条先生、昨日は出張だとかでずっと不在だった。先生がいないからといって授業が遅れるなんてことは無く、むしろ平和にしっかりと実習ができた。たいへん有意義な一日だった。
「僕の留守中寂しかったでしょ?」
「いえ全然」
「寂しい思いをした可愛い生徒に、優しーい先生がおみやげ買ってきてあげたよっ」
さあ喜んで!と言わんばかりの態度で感謝待ちをしている先生。いったい何歳児なの。少し呆れながらも、いつも忙しくしている先生がわざわざ生徒のためにおみやげを買ってきてくれたのはちょっと嬉しい。きくふく。名前だけだとよくわからないが、どうやら甘いものみたいだ。みんなで分けて食べられる物ならいいけど。
「ありがとうございます、後でみんなで食べますね」
「え、それナオの分しかないよ?」
「えっ」
そう言われてみればたしかに、いくら少人数の同級生とはいえみんなで食べる数が入っているようには思えない。手のひらに乗る小さな紙袋は少しひんやりとして軽い。
「なんで私の分だけなんですか……?」
「んー、なんでだと思う?」
ずい、と顔を寄せられて、思わず少し身を引いた。だって仕方ない。隠された目元は見えないけれど、鼻筋や口元から察するに先生は、顔がいい。背も高ければスタイルもいいし、声もいい。なにより呪術師として最強だ。ハイスペックだ。彼氏すらいない私には、この距離はちょっと刺激が強すぎる。
先生は、彼女とかいるのかな。ふとそんなことを考えてしまう。だって、わざわざ私一人におみやげを買って、授業もないこんな休日に、出張から帰ってきたばかりなのに会いに来るなんて。勘違いしてしまう。
もしかして私の事好きなんですかー?なんて冗談めかして聞ければいいのかもしれないけれど、生憎私はそんな性格じゃなくて。口から出たのは出来の悪い生徒そのもののセリフだった。
「……わかりません」
「あれ、結構わかりやすく教えてあげたと思ったけど。僕も教師としてはまだまだかなぁ」
口元で笑みの形を作ったままの先生は、近かった顔の距離を更に詰めて。
鼻先が、触れた。
「……っ、先生!?」
私は反射的に飛び退った。一瞬にしてぐんと開いた距離の向こうで、先生は態とらしく驚いた表情を作って小さく拍手している。完全におちょくられてる。苛立って睨むけれど、きっと今の私の顔は赤くなってる。常人離れした跳躍で離れた距離は、日頃鍛えた成果だ。でもこんな私の全力だって、先生なら逃げる前に捕まえることも出来たはず。だって先生は五条悟だ。
「うん、いいね。その様子だとなんでかわかったでしょ」
私の勘違いを、勘違いではないと言外に告げてくる。そんな、まさか。間違いじゃないのか。先生が、あの五条悟が、私みたいな子供を。
「それ間違ってないから」
だから覚悟してて。僕、全力でオトすよ。
至極楽しそうに言いながら、一歩一歩とゆっくり距離を縮めてくる。言われた私はきっとさっきよりも顔は真っ赤で、心臓もうるさくて、全身が熱を持ったように熱い。
「ま、あんまりいじめちゃ可哀想だしこの位にしとこっか。今日はね」
「……からかわないでください……!」
「からかってない」
また一歩。ゆっくりと、でも長い足のせいで大きな一歩だ。そうやって近づいてくる先生に耐えきれなくて、私は踵を返した。あとは脱兎である。
「あぁ喜久福、冷たいうちに食べなよ」
先生の言葉を背中で受ける。その声の遠さから察するに、この位にしておくとの言葉通りに追いかけては来ないみたいだ。正直たすかる。先生に追いかけられたら、私なんてコンマ数秒も経たずに捕まってしまう。追いかけてきていないとわかっても、私は寮の自室に着くまで全速力をやめることが出来ず、部屋に着いた時には息も絶え絶えになっていたのだった。
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