呪術短編
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「加茂くん、好きな人いるらしいよ」
最初にその噂を耳にしたのはいつだったろう。呪術師なんて殺伐とした業界にいても、高専に通う私たちはまだまだ学生。同級生と噂話をしたりするのは普通の学生と変わらない。まして私たちは女子、恋愛話なんてのは大好物である。それが同級生の、お堅い家柄のお堅い男子であるなら尚更興味はある。
「えー!相手誰だろう、知ってる?」
なんて無邪気に噂話に花を咲かせていたあの頃の私を殴りたい。あの時気づいていれば、今こんなことになってないかも……いや、手遅れだったかな?でももう少し上手く回避出来たんじゃないかな、とか。思ったり。
私の目の前には、加茂憲紀。言わずと知れた呪術界御三家の加茂家嫡男。中の下程度の家柄出身である私から見たら、同級生とはいえ雲の上の存在だ。本当なら気安く声をかけるのも躊躇われるような人。
その加茂くんが、私の手を握っている。恭しく、という形容がばっちし似合うような綺麗で流れるような所作だった。やっぱり育ちが良いんだなぁとどこか他人事のように思いながら見つめるその顔は、いつもと変わらない。
「え、と……加茂くん?この手は何かなー、なんて……」
茶化すように言ってしまったのは、この状況に耐えられない私のせめてもの現実逃避だ。だってあの加茂憲紀が私の手を握ってる。加茂くんがふざけてこんなことする人じゃないのは重々承知してる。だから、きっとこれは真剣。
「噂になっているようだから知っていると思ったが」
「なにを、でしょうか……」
思わず敬語になってしまった私に、加茂くんはふっと口元を緩めた。うわ笑った。
「西宮たちと話しているのを聞いた。気になるんだろう?私の好きな相手が」
あれを聞かれていたのか。確かにそんな噂話をしたけれど、それがどう今の状況に繋がるのかさっぱりわからない。わかりたくない。握られた手が熱くて、こわい。
「教えようか」
「いえ結構です聞きませんていうか言わないで」
「いや聞いてくれ、私が好きなのは」
手が引かれて距離が縮まる。至近距離で覗き込まれるから至近距離で見つめ返すしかない加茂くんの顔は、なんだか楽しそうだ。
「春野、君だ」
思った通りだけれど認めたくなかった言葉だ。さっきからそんな気はしてたけど、実際に言われてしまうと心臓に悪い。機嫌がいいのか加茂くんはにこにこの笑顔で、うわなにその顔初めて見るんだけど。ちょっと可愛い。
「えー……人違いじゃないでしょうか」
「違くないよ」
「気の迷いでは」
「ない」
「からかってるわけでは」
「……ない!」
私をなんだと思ってるんだ、と怒ったような口調で言うけど顔は変わらず笑顔のままで、今この状況が楽しくて仕方ないみたいだ。手は離してくれないし、距離もはちゃめちゃに近いこの状況が。どうしよう、ガチっぽい。逃げられない。
「では、君の気持ちを聞かせてもらおう」
最初にその噂を耳にしたのはいつだったろう。呪術師なんて殺伐とした業界にいても、高専に通う私たちはまだまだ学生。同級生と噂話をしたりするのは普通の学生と変わらない。まして私たちは女子、恋愛話なんてのは大好物である。それが同級生の、お堅い家柄のお堅い男子であるなら尚更興味はある。
「えー!相手誰だろう、知ってる?」
なんて無邪気に噂話に花を咲かせていたあの頃の私を殴りたい。あの時気づいていれば、今こんなことになってないかも……いや、手遅れだったかな?でももう少し上手く回避出来たんじゃないかな、とか。思ったり。
私の目の前には、加茂憲紀。言わずと知れた呪術界御三家の加茂家嫡男。中の下程度の家柄出身である私から見たら、同級生とはいえ雲の上の存在だ。本当なら気安く声をかけるのも躊躇われるような人。
その加茂くんが、私の手を握っている。恭しく、という形容がばっちし似合うような綺麗で流れるような所作だった。やっぱり育ちが良いんだなぁとどこか他人事のように思いながら見つめるその顔は、いつもと変わらない。
「え、と……加茂くん?この手は何かなー、なんて……」
茶化すように言ってしまったのは、この状況に耐えられない私のせめてもの現実逃避だ。だってあの加茂憲紀が私の手を握ってる。加茂くんがふざけてこんなことする人じゃないのは重々承知してる。だから、きっとこれは真剣。
「噂になっているようだから知っていると思ったが」
「なにを、でしょうか……」
思わず敬語になってしまった私に、加茂くんはふっと口元を緩めた。うわ笑った。
「西宮たちと話しているのを聞いた。気になるんだろう?私の好きな相手が」
あれを聞かれていたのか。確かにそんな噂話をしたけれど、それがどう今の状況に繋がるのかさっぱりわからない。わかりたくない。握られた手が熱くて、こわい。
「教えようか」
「いえ結構です聞きませんていうか言わないで」
「いや聞いてくれ、私が好きなのは」
手が引かれて距離が縮まる。至近距離で覗き込まれるから至近距離で見つめ返すしかない加茂くんの顔は、なんだか楽しそうだ。
「春野、君だ」
思った通りだけれど認めたくなかった言葉だ。さっきからそんな気はしてたけど、実際に言われてしまうと心臓に悪い。機嫌がいいのか加茂くんはにこにこの笑顔で、うわなにその顔初めて見るんだけど。ちょっと可愛い。
「えー……人違いじゃないでしょうか」
「違くないよ」
「気の迷いでは」
「ない」
「からかってるわけでは」
「……ない!」
私をなんだと思ってるんだ、と怒ったような口調で言うけど顔は変わらず笑顔のままで、今この状況が楽しくて仕方ないみたいだ。手は離してくれないし、距離もはちゃめちゃに近いこの状況が。どうしよう、ガチっぽい。逃げられない。
「では、君の気持ちを聞かせてもらおう」