呪術短編
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「直哉さん、ビニ傘似合いませんね」
「自分喧嘩売っとるん?」
急にバタバタと降り出した雨に舌打ちをひとつ、迷うことなくコンビニに入っていった直哉さんをぼけっと見送ると、数分も経たないうちに店から出てくる。その手には、安っぽい白。ビニール傘だ。かちりと軽い音をたてて開かれたそれは私と直哉さんの頭上を頼りなくガードしている。
「さっさと行くで」
癖で少し後ろに居た私を、半歩ほど先で直也さんが呼ぶ。その横に、一人分の空間。傘は直哉さんでも私でもなく、私たちの間の空間を雨から守っていた。慌てて並ぶようにすると、透明度の低いビニールも雨を受けつつ移動する。
「直哉さん、私が持ちましょうか?」
「お前に持たしたら俺が濡れるやろ」
「気をつけますよ」
「阿呆か。身長差どんだけあると思っとんの」
有無を言わさず足を進める直哉さんに、遅れないように並ぶ。その大きな手から傘を奪い取れるほど、私は強くない。
「……ありがとうございます」
「おー。黙って俺の横におったらええねん」
あの直哉さんに、隣にいることを許されてしまった。その事にドキドキと鳴る胸は、雨音にかき消されてきっと聞こえないだろう。
いつもよりゆったりと歩く直哉さんの横で、空を見あげる。陽射しすら感じる明るい空、きっとこの雨はすぐ止むのだろう。それが少しさみしい。ちょっとでも長くこの雨が続けばいい、そう思った。