鬼滅短編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
彼女は、運命なんて生易しいものじゃない。もっと確かな、暴力的なまでの衝撃を持って俺の全てを奪っていった。それは正しく天災だった。
月どころか星すら隠す厚い雲に覆われた夜、任務で相対した鬼は気味の悪い厄介な鬼だった。苦戦する俺のところに憂鬱な空から舞い降りたのが、彼女だ。闇に溶ける隊服は俺と同じもので、夜を集めた髪は美しく流れ、鬼を裂いた刀身ばかりが鮮烈に浮かび上がるその後ろ姿。遅れてふわりと漂ったのは、優しく甘い、落ち着いた匂い。
「大丈夫?」
そう振り返った彼女の、夜を照らす月のように白く目を引く顔。
欲しい、と思った。
全身の熱が顔に集まったように熱い。早く手に入れなければ。消えてしまうかもしれない。月に帰ってしまうかもしれない。俺は急いで彼女との距離を詰めると、逃がさないように捕まえる。驚いたのかまあるく見開いた、少し緑がかって見える瞳に赫いギラギラとした光が映った。
「俺と夫婦になってくれ!!!!」
「はぁ!?」
それが、俺と彼女の出会いだった。
自分が往来で女の子に抱きついたり結婚を迫るなんてことになるとはまさか思わなかったが、彼女限定なので許して欲しい。俺は相手が誰でもいい訳じゃない、ただ一人、ナオだけが欲しいのだ。
ある日の任務で、現地で他の隊士と合流するようにとカラスに告げられ、現地に近づいていくと間違えようもない彼女の匂いに頬が緩む。集合場所に居たのは果たして彼女であった。後ろからそうっと近づいて抱きしめる。
「……待たせてすまない、俺のかわいいひと」
「ひぁっ……お前か変態ーーー!!」
一瞬驚いたナオは肩を跳ねさせるが、直ぐに俺だと気づいたようで腕と胸倉を掴んで背負い投げられる。空中で体勢を整え着地すると、白い顔に少し朱が差した彼女との距離を詰めぴたりと寄り添った。
「一緒に任務をする相手は君だったんだな!」
「うわあ最悪。私急に体調が悪くなったんで任務出来ません帰りますね」
「それはいけない、俺が看病するから宿を取ろう!看病は慣れてるから安心して任せてくれ!」
「あ、やっぱ元気なのでちゃっちゃと鬼を狩りましょう行きましょう離れましょう」
腰に腕を回して体を密着させていたのを、俺の胸を押して離れようとする。彼女も鍛えているだろうが、俺だって鍛えているし男女差もある。離すものか。
やがて諦めたのか腕から力を抜いたナオは、はぁとため息をついた。全身甘く香る彼女の吐息は、きっと甘いだろう。
「そのため息も全て吸いたい」
「えっ気持ち悪」
しまった声に出ていた。けれど本音だから仕方ない。
「とりあえず、このままでは歩きにくいので離してくれませんか?」
「いやだ」
「はぁ……それなら手を繋ぎましょう」
「いいのか!?」
ナオの方から触れていいと言われたことは今まで無く、手を繋ぐ、なんて提案してくれるとは思わなかった。
はい、と差し出された手に俺の手を重ねて、ナオの細い指の間に俺のゴツゴツした指を滑り込ませて絡める。……なんかこう、体を抱きしめるより、照れてしまう。こんなにお互いが絡み合うなんて、これは実質まぐわいではないか……!?
「なに照れてるんですか……」
呆れたような声と顔で言う彼女からは、羞恥が混ざった甘い匂いがして、俺はたまらず強く抱きしめた。
「一生幸せにする……!!」
「結婚はしませんからね!?」
そんなことを言いながらも、ナオからは拒否の匂いがしないのだ。この甘い態度と常に纏う甘い匂いに、俺はもうすっかり彼女を手放せない。こんなに心奪われることがあるなんて初めて知った。彼女は正しく、俺にとっての天災だ。
月どころか星すら隠す厚い雲に覆われた夜、任務で相対した鬼は気味の悪い厄介な鬼だった。苦戦する俺のところに憂鬱な空から舞い降りたのが、彼女だ。闇に溶ける隊服は俺と同じもので、夜を集めた髪は美しく流れ、鬼を裂いた刀身ばかりが鮮烈に浮かび上がるその後ろ姿。遅れてふわりと漂ったのは、優しく甘い、落ち着いた匂い。
「大丈夫?」
そう振り返った彼女の、夜を照らす月のように白く目を引く顔。
欲しい、と思った。
全身の熱が顔に集まったように熱い。早く手に入れなければ。消えてしまうかもしれない。月に帰ってしまうかもしれない。俺は急いで彼女との距離を詰めると、逃がさないように捕まえる。驚いたのかまあるく見開いた、少し緑がかって見える瞳に赫いギラギラとした光が映った。
「俺と夫婦になってくれ!!!!」
「はぁ!?」
それが、俺と彼女の出会いだった。
自分が往来で女の子に抱きついたり結婚を迫るなんてことになるとはまさか思わなかったが、彼女限定なので許して欲しい。俺は相手が誰でもいい訳じゃない、ただ一人、ナオだけが欲しいのだ。
ある日の任務で、現地で他の隊士と合流するようにとカラスに告げられ、現地に近づいていくと間違えようもない彼女の匂いに頬が緩む。集合場所に居たのは果たして彼女であった。後ろからそうっと近づいて抱きしめる。
「……待たせてすまない、俺のかわいいひと」
「ひぁっ……お前か変態ーーー!!」
一瞬驚いたナオは肩を跳ねさせるが、直ぐに俺だと気づいたようで腕と胸倉を掴んで背負い投げられる。空中で体勢を整え着地すると、白い顔に少し朱が差した彼女との距離を詰めぴたりと寄り添った。
「一緒に任務をする相手は君だったんだな!」
「うわあ最悪。私急に体調が悪くなったんで任務出来ません帰りますね」
「それはいけない、俺が看病するから宿を取ろう!看病は慣れてるから安心して任せてくれ!」
「あ、やっぱ元気なのでちゃっちゃと鬼を狩りましょう行きましょう離れましょう」
腰に腕を回して体を密着させていたのを、俺の胸を押して離れようとする。彼女も鍛えているだろうが、俺だって鍛えているし男女差もある。離すものか。
やがて諦めたのか腕から力を抜いたナオは、はぁとため息をついた。全身甘く香る彼女の吐息は、きっと甘いだろう。
「そのため息も全て吸いたい」
「えっ気持ち悪」
しまった声に出ていた。けれど本音だから仕方ない。
「とりあえず、このままでは歩きにくいので離してくれませんか?」
「いやだ」
「はぁ……それなら手を繋ぎましょう」
「いいのか!?」
ナオの方から触れていいと言われたことは今まで無く、手を繋ぐ、なんて提案してくれるとは思わなかった。
はい、と差し出された手に俺の手を重ねて、ナオの細い指の間に俺のゴツゴツした指を滑り込ませて絡める。……なんかこう、体を抱きしめるより、照れてしまう。こんなにお互いが絡み合うなんて、これは実質まぐわいではないか……!?
「なに照れてるんですか……」
呆れたような声と顔で言う彼女からは、羞恥が混ざった甘い匂いがして、俺はたまらず強く抱きしめた。
「一生幸せにする……!!」
「結婚はしませんからね!?」
そんなことを言いながらも、ナオからは拒否の匂いがしないのだ。この甘い態度と常に纏う甘い匂いに、俺はもうすっかり彼女を手放せない。こんなに心奪われることがあるなんて初めて知った。彼女は正しく、俺にとっての天災だ。
28/36ページ