鬼滅短編
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昨日一緒に飯を食ったやつが、今日はもういないかもしれない。
今日笑って挨拶をしたひとが、明日はもう目を開けないかもしれない。
鬼殺隊はそういう仕事だってわかってるし、いなくなるのも目を開けなくなるのも俺かもしれない。覚悟が出来てるわけじゃないけどわかってはいる。
「我妻くん、今夜は晴れるかな」
それは彼女、ナオちゃんだって例外ではなくて、今夜の星空を楽しみに目を輝かせるその顔が、いつか、もしかしたら今日。一切の表情を失うかもしれない。身体が綺麗に残る保証もない。鬼殺隊は、そういう所だ。
「さあねえ。夜はわかんないけど、遠くに雨雲の音がするから雨は降るよ」
「えー!?夜までに上がって欲しいなぁ」
そういうナオちゃんの手には、明るい色した短冊。楽しげに筆を走らせるそれには、彼女の願い事が書かれているんだろう。
「何て書いてるの?」
「ふふ、秘密!」
「いいじゃん教えてよ」
「んー、じゃあ後で。今はまだだめ」
一緒に天の川が見れたら、教えてあげようかな。
悪戯っぽく笑って、笹にその短冊を括り付ける。高い位置の葉を引っ張って括られたそれは、手を離したらびょんと跳ね上がりてっぺんで揺れた。
「……晴れるといいねぇ」
「ね!織姫と彦星、会えるといいね」
「恋人がいるならそれでいいじゃねえか俺だって恋人が欲しい結婚したい」
「あはは!短冊書いとく?」
そう言って渡された短冊に、俺は実際なんて書いていいかわからなくて懐にしまい込む。これから偵察任務だという彼女は夜までには戻ると言って駆け出していく。残されたのは俺と、揺れる短冊を下げた笹。覗こうと思えば見えるその短冊を、俺はその時は見る気にならず、彼女と一緒に見る今夜の星空を願ったんだ。
ナオちゃんは、戻ってこなかった。
連絡も報告もない、カラスも戻らなかった。
偵察任務とはなんだったんだろう。危険なものだったんだろうか。本当は無事に戻ってきていて、俺を驚かそうと隠れ鬼のようにどこかに隠れているのかもしれない。きっとそうだ。
雨に濡れた笹の横でぼんやり考える俺の頭上には、皮肉にも彼女が望んでいた星空が見えていた。
「……晴れたよ」
誰もいない雨上がりの澄んだ空気は俺の呟きを吸収して、暗く静かだ。
「ねえ、まだかな。天の川も見えるし、あとは一緒に見るだけなんだけど」
今も高い位置で揺れる、あの短冊に書いた願いを教えてくれる条件はほぼ整ってる。あとは、ナオちゃんだけ。
「ねえ……もういいかい」
決まり文句の問いかけが星空に溶ける。『まぁだだよ』も『もういいよ』も、俺の耳でだって、もう聞こえない。
今日笑って挨拶をしたひとが、明日はもう目を開けないかもしれない。
鬼殺隊はそういう仕事だってわかってるし、いなくなるのも目を開けなくなるのも俺かもしれない。覚悟が出来てるわけじゃないけどわかってはいる。
「我妻くん、今夜は晴れるかな」
それは彼女、ナオちゃんだって例外ではなくて、今夜の星空を楽しみに目を輝かせるその顔が、いつか、もしかしたら今日。一切の表情を失うかもしれない。身体が綺麗に残る保証もない。鬼殺隊は、そういう所だ。
「さあねえ。夜はわかんないけど、遠くに雨雲の音がするから雨は降るよ」
「えー!?夜までに上がって欲しいなぁ」
そういうナオちゃんの手には、明るい色した短冊。楽しげに筆を走らせるそれには、彼女の願い事が書かれているんだろう。
「何て書いてるの?」
「ふふ、秘密!」
「いいじゃん教えてよ」
「んー、じゃあ後で。今はまだだめ」
一緒に天の川が見れたら、教えてあげようかな。
悪戯っぽく笑って、笹にその短冊を括り付ける。高い位置の葉を引っ張って括られたそれは、手を離したらびょんと跳ね上がりてっぺんで揺れた。
「……晴れるといいねぇ」
「ね!織姫と彦星、会えるといいね」
「恋人がいるならそれでいいじゃねえか俺だって恋人が欲しい結婚したい」
「あはは!短冊書いとく?」
そう言って渡された短冊に、俺は実際なんて書いていいかわからなくて懐にしまい込む。これから偵察任務だという彼女は夜までには戻ると言って駆け出していく。残されたのは俺と、揺れる短冊を下げた笹。覗こうと思えば見えるその短冊を、俺はその時は見る気にならず、彼女と一緒に見る今夜の星空を願ったんだ。
ナオちゃんは、戻ってこなかった。
連絡も報告もない、カラスも戻らなかった。
偵察任務とはなんだったんだろう。危険なものだったんだろうか。本当は無事に戻ってきていて、俺を驚かそうと隠れ鬼のようにどこかに隠れているのかもしれない。きっとそうだ。
雨に濡れた笹の横でぼんやり考える俺の頭上には、皮肉にも彼女が望んでいた星空が見えていた。
「……晴れたよ」
誰もいない雨上がりの澄んだ空気は俺の呟きを吸収して、暗く静かだ。
「ねえ、まだかな。天の川も見えるし、あとは一緒に見るだけなんだけど」
今も高い位置で揺れる、あの短冊に書いた願いを教えてくれる条件はほぼ整ってる。あとは、ナオちゃんだけ。
「ねえ……もういいかい」
決まり文句の問いかけが星空に溶ける。『まぁだだよ』も『もういいよ』も、俺の耳でだって、もう聞こえない。
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