鬼滅短編
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凛とした構え。目は閉じられていないが伏せられている。余分な力が入っていない体は風にふらりと倒れそうでもあり、しなやかな竹のように決して倒れなさそうでもある。
いつ動くのか、予備動作もなく始まりその瞬間に終わってしまうから、瞬きすらできない。そう思うと息すら止めてしまう。苦しさを感じるのは、息よりも心臓。期待と緊張で心臓が苦しい。
――――キン、そんな、細く弾けるような音がした。
次の瞬間にはそこに立っていたはずの、藁を束ねた打ち込み用の巻藁がゆっくりと二つに別れていった。きっと、切られたことにも気づいていないだろう。
音を発した張本人は、伏せていた目こそ上げられ前を見据えているが、音がなる前と寸分違わぬ構えのように見える。けれど飾り紐だけが大きく揺れて、動いたことを声高に伝えている。
私は詰めていた息を、ふっと吐いた。
「……ねぇ、息止めんのやめてくんない?俺の心臓に悪いでしょ!?」
くるりとこちらを振り返り複雑な顔をするのは、鍛錬中の善逸だ。私はその鍛錬を特等席で見せてもらっていた。
鍛錬の内容は、剣術。善逸が使う居合術、抜刀術ともいうのか、その剣術はあまりに鮮やかでかっこいい。
「ごめ……なんか勝手に止まる……心臓も止まるかと思った……」
「止まんないでねぇ!?」
どきどきとうるさいのは、息を止めていたせいではない。見せてもらった剣技がかっこよすぎて、心臓が痛い。もう巻藁と一緒に私も切られてしまったかのようだ。
「お前ほんとにこれ好きね……そんなに面白い?」
「うん……面白いっていうか、かっこいい……」
「…………ほぉぉーーん?」
居合を見た余韻が抜けなくてぽろりと零れてしまった言葉は、いつもあまり言わない本音だ。はっとして善逸を見ると、にやにやとこちらを見ている。急に恥ずかしくなって顔を逸らす。
「俺がかっこいいってぇ?なんだよ俺の剣を見るのが好きなんじゃなくて俺が好きなのね?うふふ俺もナオが好きだよ!」
こうなるから、言いたくない。
私は確かに善逸が好きで、恋仲でもある。優しいところも本当は強いところも好きだし、私を見る時の優しい顔も、鍛錬の時に見せる凪いだ顔も好き。けれど。
「あ、ナオ今俺の事考えてたでしょ。好きって音が溢れてる……かぁわいい」
にんまりと笑うその顔は、好きじゃな……いや、やっぱり好きだ。悔しい。結局好きになった人ならどんな所だって好きなんだ。そのにんまり顔のまま両手を広げる善逸に、私は想いを込めて、勢いをつけて飛び込んだ。
いつ動くのか、予備動作もなく始まりその瞬間に終わってしまうから、瞬きすらできない。そう思うと息すら止めてしまう。苦しさを感じるのは、息よりも心臓。期待と緊張で心臓が苦しい。
――――キン、そんな、細く弾けるような音がした。
次の瞬間にはそこに立っていたはずの、藁を束ねた打ち込み用の巻藁がゆっくりと二つに別れていった。きっと、切られたことにも気づいていないだろう。
音を発した張本人は、伏せていた目こそ上げられ前を見据えているが、音がなる前と寸分違わぬ構えのように見える。けれど飾り紐だけが大きく揺れて、動いたことを声高に伝えている。
私は詰めていた息を、ふっと吐いた。
「……ねぇ、息止めんのやめてくんない?俺の心臓に悪いでしょ!?」
くるりとこちらを振り返り複雑な顔をするのは、鍛錬中の善逸だ。私はその鍛錬を特等席で見せてもらっていた。
鍛錬の内容は、剣術。善逸が使う居合術、抜刀術ともいうのか、その剣術はあまりに鮮やかでかっこいい。
「ごめ……なんか勝手に止まる……心臓も止まるかと思った……」
「止まんないでねぇ!?」
どきどきとうるさいのは、息を止めていたせいではない。見せてもらった剣技がかっこよすぎて、心臓が痛い。もう巻藁と一緒に私も切られてしまったかのようだ。
「お前ほんとにこれ好きね……そんなに面白い?」
「うん……面白いっていうか、かっこいい……」
「…………ほぉぉーーん?」
居合を見た余韻が抜けなくてぽろりと零れてしまった言葉は、いつもあまり言わない本音だ。はっとして善逸を見ると、にやにやとこちらを見ている。急に恥ずかしくなって顔を逸らす。
「俺がかっこいいってぇ?なんだよ俺の剣を見るのが好きなんじゃなくて俺が好きなのね?うふふ俺もナオが好きだよ!」
こうなるから、言いたくない。
私は確かに善逸が好きで、恋仲でもある。優しいところも本当は強いところも好きだし、私を見る時の優しい顔も、鍛錬の時に見せる凪いだ顔も好き。けれど。
「あ、ナオ今俺の事考えてたでしょ。好きって音が溢れてる……かぁわいい」
にんまりと笑うその顔は、好きじゃな……いや、やっぱり好きだ。悔しい。結局好きになった人ならどんな所だって好きなんだ。そのにんまり顔のまま両手を広げる善逸に、私は想いを込めて、勢いをつけて飛び込んだ。
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