鬼滅短編
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首を伝う汗の感触に意識が浮上して、身体にまとわりつく暑さに気づいた。寝る前に窓を閉めたのが良くなかったのか、そんなに暑くないとエアコンを付けなかったのが悪いのか。パジャマ代わりに着ているTシャツの襟周りや脇が汗で濡れている。
「……ぁ……っつ」
寝起きのぼんやりした頭で思わず呟いた俺の声に、腕の中でもぞりと動くのを感じてはっとした。やば、起こしたか?そう思うけれど耳に届くのは規則正しい寝息で、安堵から小さく息を吐いた。腕の中を覗き込めば、俺と同じように少し汗を浮かべた愛しい彼女の寝顔が見える。
暑さの原因に、この体温もあるのかもしれないけれど、離れて眠る気になんてまったくなれない。だって暑いより心地いい方が大きいんだ。ああでも。彼女が暑いなら離してやった方がいいんだろうか。そんなことを思いながら、ナオちゃんの額に張り付いた髪を避けるように撫ぜて汗を拭ってやる。
「……ん、…ぜん、いつ……?」
今度こそ本当に起こしてしまったみたいだ。一度ぎゅうと強く閉じられた瞼が持ち上がるより先に、少し掠れた声が吐息のように漏れる。
「ごめん、起こした?」
「んー……」
薄く開いた目は視線が合わないままぼんやりと俺を見て、そのまま何も言わずに、俺の汗が滲む背中に腕を回し頭を首筋に擦り寄せた。こりゃ寝ぼけてるなぁと思いながらもその後頭部を撫でると、シャンプーと汗の混ざった匂いがする。喉には濡れた額がぺとりとくっついてるし、背中に回る手は熱くてまた汗が流れる。
ああ、暑い。熱い、あつい。でもどれも不快じゃないから困ったもんだ。
ベッドサイドに手を伸ばし目当てのリモコンを探って手に触れた一番大きなボタンを押すと、ピッと電子音が鳴って、続いてモーターの音に水が流れるような音、空気が動く音がする。一気に賑やかになる室内。やっぱエアコンはうるさいなぁとは思うけれど、頼らせてもらおう。
腕の中の熱をしっかりと抱き込む。あつい。ぺたぺたする。汗の匂い。でもどれも、心の中の箱を幸せで溢れさせるくらいに心地いい。起きたら一緒にシャワーを浴びようかな、なんて考えて緩む頬をそのままに、俺は瞼を下ろした。
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