鬼滅短編
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青く青く澄んだ空には雲ひとつなくて、文字通りの晴天ってやつだった。冬の終わりは空気まで冴え渡り清々しくて、それが理不尽にも憎らしく思えた。
「これじゃ、感傷に浸ることもできないじゃない……」
雨とか、せめて季節が逆戻りして雪でも降ってくれれば遠慮なく悲しみに浸れたものを、この天気ではすっきり爽やか晴れやか、どうしたって気持ちいい。周りの人もしんみりとはしきらない、どこか和やかな雰囲気だった。
青空の下、黒を纏った私たちは今日、ひとりの男に別れを告げる。
まさか置いていかれるとは思わなかった。そんな日がくるなんて想像したくもなかったし、あったとしてももっと先だと思っていた。
「でもまぁ、善逸だしなぁ……」
いつも騒がしかった私の恋人。寝てる時ですら寝言や、いびきやら歯ぎしりやらで本当にほんとうにうるさかった。こんなに静かなのは、出会ってから初めてだ。
何時だったか「話がある」って言っただけで大騒ぎだった。
『なんで!?俺なにかした!?う、あ、ごっごごごめんナオちゃん嫌なとこあったら直すから捨てないでぇええ!!』
違う、違うんだよ善逸……先走りすぎだよ。あの時は脱いだ靴下は伸ばしてから洗濯に出してと言いたかっただけだった。結局泣きついてきた善逸の剣幕に押され、宥めているうちに言いそびれてしまった。脱いだ靴下はその後も丸まったままだった。
色々と気に触ることもあったけど、私は善逸の世話を焼くのが好きだった。全部私がやってあげたくて、してあげていたことだった。ご飯を作ったり、お風呂上がりに髪を乾かしたり、朝起こしたり。その度に幸せそうにふにゃふにゃ笑って、甘えるように擦り寄ってきて、ありがとねぇと言う善逸が好きだった。
「……私がいなくて、平気かなぁ」
死後の世界を信じてる訳じゃない。けれど、あまりにも実感が湧かなさすぎる。一生の別れというより、どこか遠くの知らない土地へ引っ越してしまうような感覚だ。
「なんか、子供が独り立ちした気分。落ち着いたら連絡よこしなさいよー!なんて」
自分で言ったことにくすくすと笑っていると、視界がじわりと滲んでいくのがわかった。これは、あれだ。悲しいんじゃなくて、寂しいんだ。
もう会えない。どこにもいない。連絡なんてこない。それがわからない訳じゃない、わかってる、わかってるけど。
「……あいたいなぁ」
溜まった涙が零れそうになって、それを堪えたくて上を向いた。私の視界いっぱいに広がる空の青、その中に細く緩やかに登っていく白を見て、涙はやっぱり零れてしまった。
「これじゃ、感傷に浸ることもできないじゃない……」
雨とか、せめて季節が逆戻りして雪でも降ってくれれば遠慮なく悲しみに浸れたものを、この天気ではすっきり爽やか晴れやか、どうしたって気持ちいい。周りの人もしんみりとはしきらない、どこか和やかな雰囲気だった。
青空の下、黒を纏った私たちは今日、ひとりの男に別れを告げる。
まさか置いていかれるとは思わなかった。そんな日がくるなんて想像したくもなかったし、あったとしてももっと先だと思っていた。
「でもまぁ、善逸だしなぁ……」
いつも騒がしかった私の恋人。寝てる時ですら寝言や、いびきやら歯ぎしりやらで本当にほんとうにうるさかった。こんなに静かなのは、出会ってから初めてだ。
何時だったか「話がある」って言っただけで大騒ぎだった。
『なんで!?俺なにかした!?う、あ、ごっごごごめんナオちゃん嫌なとこあったら直すから捨てないでぇええ!!』
違う、違うんだよ善逸……先走りすぎだよ。あの時は脱いだ靴下は伸ばしてから洗濯に出してと言いたかっただけだった。結局泣きついてきた善逸の剣幕に押され、宥めているうちに言いそびれてしまった。脱いだ靴下はその後も丸まったままだった。
色々と気に触ることもあったけど、私は善逸の世話を焼くのが好きだった。全部私がやってあげたくて、してあげていたことだった。ご飯を作ったり、お風呂上がりに髪を乾かしたり、朝起こしたり。その度に幸せそうにふにゃふにゃ笑って、甘えるように擦り寄ってきて、ありがとねぇと言う善逸が好きだった。
「……私がいなくて、平気かなぁ」
死後の世界を信じてる訳じゃない。けれど、あまりにも実感が湧かなさすぎる。一生の別れというより、どこか遠くの知らない土地へ引っ越してしまうような感覚だ。
「なんか、子供が独り立ちした気分。落ち着いたら連絡よこしなさいよー!なんて」
自分で言ったことにくすくすと笑っていると、視界がじわりと滲んでいくのがわかった。これは、あれだ。悲しいんじゃなくて、寂しいんだ。
もう会えない。どこにもいない。連絡なんてこない。それがわからない訳じゃない、わかってる、わかってるけど。
「……あいたいなぁ」
溜まった涙が零れそうになって、それを堪えたくて上を向いた。私の視界いっぱいに広がる空の青、その中に細く緩やかに登っていく白を見て、涙はやっぱり零れてしまった。
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