鬼滅短編
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青く青く澄んだ空には雲ひとつなくて、文字通りの晴天ってやつだった。冬の終わりは空気まで冴え渡り清々しくて、それが理不尽にも憎らしく思えた。
「こんな日くらい、雨が降るとかさぁ、せめてどんより曇るぐらいしろよ空気読めよ……」
そうボヤいた恨み言が溶けていって尚澄んだままの空気を胸いっぱいに吸い込む。暖かい日差しの割にすっきりと冷えた空気が肺を満たして胸のモヤモヤを払う。ほんの少し、だけど。
晴れた空に僅かな風、緩くもぬくい日差し。あの人の好きそうな天気だ。
『小春日和だね!』
嬉しそうにそう言った、あの人の笑顔を鮮明に思い出す。あれも今くらいの季節だった。あの時はなんて答えたんだっけ。……ああそうだ、小春日和は秋から冬に使う言葉だって、俺は得意げに言ったんだった。
『そうなの?春本番の前!って意味かと思ってた。物知りだねぇ善逸は』
子供みたいにマウントを取った俺に、気を悪くするでもなくニコニコと笑って、そして柔らかく紡がれた俺の名前。その声音を思い出して、枯れたかと思ってた涙がまたじわりと滲んだ。いくら耳が良くても、注意深く耳を澄ましてても、もうあの声は聞こえないのだ。
『善逸、また泣いてるの?』
そうだよ。誰のせいだと思ってるの。
『善逸は優しいから、そのぶんすぐ泣いちゃうんだね』
俺が優しいかどうかはよくわかんないけど、そう言ってくれるきみはすごく優しくて、大好きだよ。
『泣いてもいいけど、後でちゃんと笑ってね。私善逸の笑顔好きだよ』
俺が泣くといつもそう言って慰めてくれたっけ。じいちゃんや兄貴には泣くなってよく言われたけれど、泣いてもいいなんて言ってくれるのはきみだけ、ナオちゃんだけだった。それが嬉しくて、すぐへらへら笑ってたな。そんな俺を見たナオちゃんが笑ってくれるのも、嬉しかった。
「でもさ、俺、ナオちゃんがいないのに笑えない」
実際今の俺は酷い顔をしてるだろうと思う。家族も友達も気を使って励ましてくれたけど、ダメなんだ。きみのために生きてきたし、なんなら俺が生まれてきた意味はきみなんだよ。俺の人生はきみのためにあったんだ。
「だからさぁ……会いに行くよ、俺」
きみとこんなに離れてちゃ、俺は笑えもしないから。笑うために、きみと笑い合うために、きみに会いに行く。
会いに来た俺を見たら、ナオちゃんは怒るだろうか。……怒るだろうなぁ。
「……楽しみだねぇ。」
そう呟いて見上げた空は、やっぱり憎らしいくらいの晴天。その青を裂くように、白い煙が細く高く登っている。その煙を掴むように手を伸ばして、ゆっくりと握った。
「こんな日くらい、雨が降るとかさぁ、せめてどんより曇るぐらいしろよ空気読めよ……」
そうボヤいた恨み言が溶けていって尚澄んだままの空気を胸いっぱいに吸い込む。暖かい日差しの割にすっきりと冷えた空気が肺を満たして胸のモヤモヤを払う。ほんの少し、だけど。
晴れた空に僅かな風、緩くもぬくい日差し。あの人の好きそうな天気だ。
『小春日和だね!』
嬉しそうにそう言った、あの人の笑顔を鮮明に思い出す。あれも今くらいの季節だった。あの時はなんて答えたんだっけ。……ああそうだ、小春日和は秋から冬に使う言葉だって、俺は得意げに言ったんだった。
『そうなの?春本番の前!って意味かと思ってた。物知りだねぇ善逸は』
子供みたいにマウントを取った俺に、気を悪くするでもなくニコニコと笑って、そして柔らかく紡がれた俺の名前。その声音を思い出して、枯れたかと思ってた涙がまたじわりと滲んだ。いくら耳が良くても、注意深く耳を澄ましてても、もうあの声は聞こえないのだ。
『善逸、また泣いてるの?』
そうだよ。誰のせいだと思ってるの。
『善逸は優しいから、そのぶんすぐ泣いちゃうんだね』
俺が優しいかどうかはよくわかんないけど、そう言ってくれるきみはすごく優しくて、大好きだよ。
『泣いてもいいけど、後でちゃんと笑ってね。私善逸の笑顔好きだよ』
俺が泣くといつもそう言って慰めてくれたっけ。じいちゃんや兄貴には泣くなってよく言われたけれど、泣いてもいいなんて言ってくれるのはきみだけ、ナオちゃんだけだった。それが嬉しくて、すぐへらへら笑ってたな。そんな俺を見たナオちゃんが笑ってくれるのも、嬉しかった。
「でもさ、俺、ナオちゃんがいないのに笑えない」
実際今の俺は酷い顔をしてるだろうと思う。家族も友達も気を使って励ましてくれたけど、ダメなんだ。きみのために生きてきたし、なんなら俺が生まれてきた意味はきみなんだよ。俺の人生はきみのためにあったんだ。
「だからさぁ……会いに行くよ、俺」
きみとこんなに離れてちゃ、俺は笑えもしないから。笑うために、きみと笑い合うために、きみに会いに行く。
会いに来た俺を見たら、ナオちゃんは怒るだろうか。……怒るだろうなぁ。
「……楽しみだねぇ。」
そう呟いて見上げた空は、やっぱり憎らしいくらいの晴天。その青を裂くように、白い煙が細く高く登っている。その煙を掴むように手を伸ばして、ゆっくりと握った。
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