鬼滅短編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
それはそれは可愛らしいサンダルを買ってしまった。華奢なヒールのオープントゥ。白地にオレンジや黄色のビジューが輝く、夏らしく綺麗で可愛いデザインだ。だからこそ、なんの手入れもしていない足で履いてしまうのはサンダルに申し訳ない。
「うーん……ペディキュア塗ろっかな」
「ペディキュア?」
独り言のつもりで小さく零した言葉に、同じ空間にいた善逸は耳ざとく反応した。ほんとに耳がいいんだから。
「うん、明日出かける時あのサンダル履こうと思って」
「今日買ったやつ?あれ可愛いよねぇ」
「でしょ」
会話をしながら手持ちのマニキュアを物色していると、横から金色の髪が視界に入ってくる。頬を寄せるようにして私の手元を覗き込む善逸に、体重をかけて寄りかかった。
「いろんな色の持ってるんだねぇ」
「服に合わせたりするからねー」
ぎゅうぎゅうに身を寄せあって、善逸もマニキュアに手を伸ばす。持ち上げては眺めて、戻して。あまり縁のない物だから興味深いのかもしれない。
「ねぇナオちゃん、俺に塗らせてよ」
「ええ……?まぁいいけど」
特にこだわりがある訳じゃないし、そんなに塗るのが上手い訳でもない。爪はもう切って油分も落としてあるし、善逸に任せちゃってもいいかな。なにより私は善逸のお願いに弱い。好きになった弱みというものだ。
すこしごつごつした手がひょいひょいと数本のマニキュアを掴みあげ、私の前に回った善逸が足をすくい上げる。バランスを崩しそうになって後ろ手をつくと、からかうように足を引かれて結局後ろに倒れてしまった。
「ちょ、っと!もう、善逸!」
「うぃひひ、俺に任せてゆっくり休んでな」
座っていたのが人をダメにすると噂の大きなビーズクッションだったから、倒れたところで痛くも痒くもないけれど。休んでなと言われても、自分の爪の命運は見ておきたい。肘をついて身を起こすと、私の足を手ににこにこと上機嫌な善逸と目が合う。
「俺の手で、可愛くしたげるねぇ」
「……ふふ、よろしくね」
鼻歌でも歌い出しそうなその様子に力が抜けて、結局クッションに背を預けて沈みこんだ。善逸が楽しいなら、もうそれでいいや。
どうにでもなれと思って任せたけれど、善逸が塗ってくれた爪は自分で塗るより遥かに綺麗に、そしてちゃっかりと善逸の色に仕上げられていた。
6/36ページ