鬼滅短編
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蝶屋敷で療養をしている私のところに、善逸が来たという知らせが入る。いつもはいの一番に私のところに来るのに、いつまで経っても姿を見せない彼に不安を覚えて周りに聞くと、どうも血鬼術を受けてしまい療養のために訪れたということがわかった。
「それで、善逸は無事なの!?会えないくらい悪いの!?」
「落ち着いてください、命に別状はありませんし、時間が経てば血鬼術の影響も抜けるはずです。ただ……」
伝えに来てくれたアオイちゃんに詰め寄ってしまった。気を悪くした様子はないものの、彼女は言い淀んで私の目を見てからそっと顔を伏せる。なんだろう、善逸が無事でいるならすぐに会いたいのに。
「あの、気を悪くしないでくださいね?善逸さんは……今はあなたに会いたくない、そうで……」
がつんと頭を殴られたような衝撃を感じた。あの善逸が、私に会いたくない?
私と善逸はお付き合いをしている。善逸からの猛烈な愛の告白に、別にいいかなと思った私が承諾する形で始まったお付き合いだった。だからこそ。
「…………うそでしょ」
ちょっと、いやかなり、動揺してしまった。
今すぐ善逸を探しに行きたいけれど、いかんせん私も療養中で、ついでに言えば足の骨がまだくっついてなくて、探しに行くのもできない。
どうにもできないモヤモヤを抱えたまま、私はベッドに沈みこんだ。
いつの間にか眠ってしまっていたらしい。すっかり暗くなってしまった病室は、私の他に誰もいないはずなのでやはり静かだ。とりあえず水でも飲もうかと、蝶屋敷の子が用意しておいてくれた水差しを取るため体を起こそうとする、が。体の横にしがみつく小さな温もりに気づいてぎょっとする。
いつの間に。療養中とはいえ、私はこれでも剣士なのに、寝ている間に近づかれたことも、起きてから身を起こそうとするまでまったく気づかなかった。
よくよく見ればその小さな温もりは幼い子供で、私の体にぴたりとくっつく頭はざんばらな黒髪で顔が見えない。そして、見慣れた黄色に白い三角が染め抜かれた着物を着ている。
「……ぜんいつ?」
びくりと揺れた小さな体は、そろりと顔を上げて眠そうな目を開いた。髪も、眉も黒いけれどこれは、間違いない。
逃げ出そうとするのを反射的に捕まえてベッドに留めると、折れた足がズキズキと傷んだ。捕まってしまった小さな善逸は私が痛みを堪えたことに気づいたのか大人しくしていた。
「どしたの、その姿……」
「……血鬼術。きみには見せたくなかったのに……」
こんな小さくて痩せっぽちで汚いガキ、と続ける善逸。昔のことはさらっとしか語らない彼は、きっと相当苦労をしてきたのだろう。小さな自分の姿を嫌悪しているのだろうか。
「でも、やっぱナオちゃんに会いたくて。ちょっとだけくっついたらきみの音が心地よくてさぁ」
「それでくっついて寝てたの」
「うん、もう部屋に戻るよ。せっかく寝てたのにごめんねぇ」
そう言ってベッドから降りようとする善逸の手を握ると、その手は小さくて普段に比べたら随分柔らかい。
「いいよ、ここにいて。一緒に寝よう」
「……はァ!?何言ってんの!?ダメでしょ俺こんなナリだけど中身変わってないからね!?」
それは、こうして話していればわかる。私たちは今のところ清いお付き合いで、手を握ったことや抱きしめたことはあっても口付けやその先、まして同衾なんてしたことはない。何気に善逸がさっき布団に潜り込んでいたのが初めての同衾だったのではないだろうか。
善逸が焦って拒否するのもまあわかる。男女が合意の元同衾するなんて、それは。
「うん……でも、だってさぁ」
「……なに?」
小さい子特有の丸みを帯びた顔を赤らめ不貞腐れさせた善逸は、それでもやっぱり善逸なので、こうして会えたのは嬉しい。
「せっかく一緒に居れるのに、離れたくない」
「ん゙っ……なんで普段言わないような可愛いことを……」
「それに、会いたくないって言われたの、寂しかった」
「うわあああごめん!それはほんとごめん!!」
慌てて手を握り返してくれる善逸は、空いた方の手で髪をがしがしとかいて、はーっと長めのため息を吐く。幼い見た目に似合わない男くささにすこしどきりとした。
「きみさ、俺がこの見た目だから言ってんのかもしれないけど……いつ戻るかわかんないからね?何するかわかんないよ。それでもいい?」
「……うん、いいよ」
そう言うとベッドに寝転んで、腕を広げて善逸を呼んだ。不満なのか頬を膨らませながらも腕の中に収まる善逸を抱きしめて目を閉じる。あったかい。
「うう……元に戻ったら俺がナオちゃんを抱いて寝るから……」
それは、楽しみなような、ちょっと緊張するような。まあ今は腕の中の小さな温もりを堪能しよう。
「おやすみ、善逸」
翌朝、私が抱きしめていたか抱きしめられているかは、まだ誰も知らない。
「それで、善逸は無事なの!?会えないくらい悪いの!?」
「落ち着いてください、命に別状はありませんし、時間が経てば血鬼術の影響も抜けるはずです。ただ……」
伝えに来てくれたアオイちゃんに詰め寄ってしまった。気を悪くした様子はないものの、彼女は言い淀んで私の目を見てからそっと顔を伏せる。なんだろう、善逸が無事でいるならすぐに会いたいのに。
「あの、気を悪くしないでくださいね?善逸さんは……今はあなたに会いたくない、そうで……」
がつんと頭を殴られたような衝撃を感じた。あの善逸が、私に会いたくない?
私と善逸はお付き合いをしている。善逸からの猛烈な愛の告白に、別にいいかなと思った私が承諾する形で始まったお付き合いだった。だからこそ。
「…………うそでしょ」
ちょっと、いやかなり、動揺してしまった。
今すぐ善逸を探しに行きたいけれど、いかんせん私も療養中で、ついでに言えば足の骨がまだくっついてなくて、探しに行くのもできない。
どうにもできないモヤモヤを抱えたまま、私はベッドに沈みこんだ。
いつの間にか眠ってしまっていたらしい。すっかり暗くなってしまった病室は、私の他に誰もいないはずなのでやはり静かだ。とりあえず水でも飲もうかと、蝶屋敷の子が用意しておいてくれた水差しを取るため体を起こそうとする、が。体の横にしがみつく小さな温もりに気づいてぎょっとする。
いつの間に。療養中とはいえ、私はこれでも剣士なのに、寝ている間に近づかれたことも、起きてから身を起こそうとするまでまったく気づかなかった。
よくよく見ればその小さな温もりは幼い子供で、私の体にぴたりとくっつく頭はざんばらな黒髪で顔が見えない。そして、見慣れた黄色に白い三角が染め抜かれた着物を着ている。
「……ぜんいつ?」
びくりと揺れた小さな体は、そろりと顔を上げて眠そうな目を開いた。髪も、眉も黒いけれどこれは、間違いない。
逃げ出そうとするのを反射的に捕まえてベッドに留めると、折れた足がズキズキと傷んだ。捕まってしまった小さな善逸は私が痛みを堪えたことに気づいたのか大人しくしていた。
「どしたの、その姿……」
「……血鬼術。きみには見せたくなかったのに……」
こんな小さくて痩せっぽちで汚いガキ、と続ける善逸。昔のことはさらっとしか語らない彼は、きっと相当苦労をしてきたのだろう。小さな自分の姿を嫌悪しているのだろうか。
「でも、やっぱナオちゃんに会いたくて。ちょっとだけくっついたらきみの音が心地よくてさぁ」
「それでくっついて寝てたの」
「うん、もう部屋に戻るよ。せっかく寝てたのにごめんねぇ」
そう言ってベッドから降りようとする善逸の手を握ると、その手は小さくて普段に比べたら随分柔らかい。
「いいよ、ここにいて。一緒に寝よう」
「……はァ!?何言ってんの!?ダメでしょ俺こんなナリだけど中身変わってないからね!?」
それは、こうして話していればわかる。私たちは今のところ清いお付き合いで、手を握ったことや抱きしめたことはあっても口付けやその先、まして同衾なんてしたことはない。何気に善逸がさっき布団に潜り込んでいたのが初めての同衾だったのではないだろうか。
善逸が焦って拒否するのもまあわかる。男女が合意の元同衾するなんて、それは。
「うん……でも、だってさぁ」
「……なに?」
小さい子特有の丸みを帯びた顔を赤らめ不貞腐れさせた善逸は、それでもやっぱり善逸なので、こうして会えたのは嬉しい。
「せっかく一緒に居れるのに、離れたくない」
「ん゙っ……なんで普段言わないような可愛いことを……」
「それに、会いたくないって言われたの、寂しかった」
「うわあああごめん!それはほんとごめん!!」
慌てて手を握り返してくれる善逸は、空いた方の手で髪をがしがしとかいて、はーっと長めのため息を吐く。幼い見た目に似合わない男くささにすこしどきりとした。
「きみさ、俺がこの見た目だから言ってんのかもしれないけど……いつ戻るかわかんないからね?何するかわかんないよ。それでもいい?」
「……うん、いいよ」
そう言うとベッドに寝転んで、腕を広げて善逸を呼んだ。不満なのか頬を膨らませながらも腕の中に収まる善逸を抱きしめて目を閉じる。あったかい。
「うう……元に戻ったら俺がナオちゃんを抱いて寝るから……」
それは、楽しみなような、ちょっと緊張するような。まあ今は腕の中の小さな温もりを堪能しよう。
「おやすみ、善逸」
翌朝、私が抱きしめていたか抱きしめられているかは、まだ誰も知らない。
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