鬼滅短編
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鬼の音、複数の人の声、女の子の悲鳴。なんて、なんて恐ろしい音なんだ。身体が本能的に拒否してる、膝がガクガク震えてる。恐怖ってやつはなんだって率先して足にくるんだよ、逃げるのに支障が出るだろそこんとこ忖度なさいよ。
俺は弱いから、剣の腕だけじゃなくて心も弱いから、あんな怖い音がしてるところなんて近づかなければいい。きっとそのためのよく聞こえる耳だ。野生の兎が音に敏感に跳ねて逃げるように、今すぐあの音から遠ざかるべきだと思うんだよね俺は。
「……なんだって、俺は向かって行ってるんだよぉおおおおああ!!!!」
べそべそと涙やら鼻水やらを垂らしながら、それでも俺は駆けていた。音の聞こえる方へ。
鬼さんこちら、ならぬ、鬼さんがこちらだよと呼んでる。なんつって。
ひとり頭の中で上手いことを言ったうもりでつっこみを入れる。恐怖がぎりぎり限界、こんな事でも考えてないと意識がぶっ飛びそうだ。
やがて見えてきたのは、大人が何人か、その向こうに、化け物に髪を掴まれた女の子。
「ほらほらほらほらぁ!!やだよやーだーよ!!絶体絶命じゃねえかふっざけんな怖いわボケぇえええぇ!!!!」
刀の鞘を握る。けれど手が震えて柄を握れない。駆け込んできて叫んだ俺にもちろん気づいた鬼は、女の子の髪を掴んだまま顔を上げて俺を、見た。
目が合った、その後の記憶はない。
気づけば街道の脇に倒れ込んで寝ていて、辺りを見回すけれど女の子も他の人も、鬼の姿もない。
「えっ夢?夢かぁなーんだ良かった……」
はははとひとり明るく笑い飛ばして忘れようと思ったのに、俺のすぐ横に落ちていた何かがキラリと光って存在を主張してくる。拾い上げてみると、それは家紋が施された立派な髪飾りだった。
「もしかして、これ……さっきの子の?」
さっきの女の子のだとすると、夢だと笑い飛ばすことは出来なくなる。けれど、夢じゃないとしたら。
「これを届けたらあの女の子とお近づきになれるんじゃね?」
俺が鬼から助けたわけじゃないけれど、こんな立派な髪飾り、しかも家紋入り。きっと大切なものだろう。それを届けられたなら、あの子が俺を見てくれるかも。あわよくばお付き合い、そんで結婚だってできちゃうんじゃない?
そんな未来があるなら、さっきの怖い思いも夢じゃなくていい。いや鬼はもう見たくも聞きたくも会いたくもねえけど。
立派な家紋、きっとこれを頼りに探せばあの子の家が見つかるだろう。俺はなんだか高価そうなその髪飾りを大事に懐にしまうと、ちょっと浮かれた軽い足取りで街へと歩き出した。
俺は弱いから、剣の腕だけじゃなくて心も弱いから、あんな怖い音がしてるところなんて近づかなければいい。きっとそのためのよく聞こえる耳だ。野生の兎が音に敏感に跳ねて逃げるように、今すぐあの音から遠ざかるべきだと思うんだよね俺は。
「……なんだって、俺は向かって行ってるんだよぉおおおおああ!!!!」
べそべそと涙やら鼻水やらを垂らしながら、それでも俺は駆けていた。音の聞こえる方へ。
鬼さんこちら、ならぬ、鬼さんがこちらだよと呼んでる。なんつって。
ひとり頭の中で上手いことを言ったうもりでつっこみを入れる。恐怖がぎりぎり限界、こんな事でも考えてないと意識がぶっ飛びそうだ。
やがて見えてきたのは、大人が何人か、その向こうに、化け物に髪を掴まれた女の子。
「ほらほらほらほらぁ!!やだよやーだーよ!!絶体絶命じゃねえかふっざけんな怖いわボケぇえええぇ!!!!」
刀の鞘を握る。けれど手が震えて柄を握れない。駆け込んできて叫んだ俺にもちろん気づいた鬼は、女の子の髪を掴んだまま顔を上げて俺を、見た。
目が合った、その後の記憶はない。
気づけば街道の脇に倒れ込んで寝ていて、辺りを見回すけれど女の子も他の人も、鬼の姿もない。
「えっ夢?夢かぁなーんだ良かった……」
はははとひとり明るく笑い飛ばして忘れようと思ったのに、俺のすぐ横に落ちていた何かがキラリと光って存在を主張してくる。拾い上げてみると、それは家紋が施された立派な髪飾りだった。
「もしかして、これ……さっきの子の?」
さっきの女の子のだとすると、夢だと笑い飛ばすことは出来なくなる。けれど、夢じゃないとしたら。
「これを届けたらあの女の子とお近づきになれるんじゃね?」
俺が鬼から助けたわけじゃないけれど、こんな立派な髪飾り、しかも家紋入り。きっと大切なものだろう。それを届けられたなら、あの子が俺を見てくれるかも。あわよくばお付き合い、そんで結婚だってできちゃうんじゃない?
そんな未来があるなら、さっきの怖い思いも夢じゃなくていい。いや鬼はもう見たくも聞きたくも会いたくもねえけど。
立派な家紋、きっとこれを頼りに探せばあの子の家が見つかるだろう。俺はなんだか高価そうなその髪飾りを大事に懐にしまうと、ちょっと浮かれた軽い足取りで街へと歩き出した。
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