鬼滅短編
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人を好きになるということ、愛するということ。
少女漫画やドラマで見ては憧れた恋愛は、キラキラと輝いて甘酸っぱくて胸がときめいて……素敵なもの、素晴らしいもの、幸せなものだと思っていた。いつか私にも好きな人が出来て好きになってもらえて、愛し合うことが出来たなら。とても幸せだろうと思っていたのに。
「……どうしたの?なんか辛そうな音してる」
そう心底心配そうに私を覗き込むのは、お互いに気持ちを伝え合い両想いになり、疑う余地もないくらい私を好きでいてくれる恋人。
「……ぜんいつ」
「ん、おいで」
おいでと言いながらも、自ら私を抱きしめてくれる善逸の背に腕を回してきつく抱きしめた。服が邪魔で体温が遠くて、もっと近づきたくて腕に力が入る。渾身とも言っていい力を込めてしまって苦しいかもしれない、そう思ったけれど、私の腕はもっともっとと力を入れて、空気の入る隙間もないくらいに全身を押し付けた。応えるように強く、でも私を気遣った力加減で抱きしめ返され、柔らかく後頭部を撫でる手のひらの感触にほうと息を吐く。私の身体が震えているのか、それとも心か。吐き出された息は情けないくらいに震えていた。
優しくてあったかくて愛しい恋人。確かにここにいるのに、私は常に彼の喪失に怯えている。
「また不安なの?」
付き合いが長くなってきて最近吐露したこの不安を、善逸は笑い飛ばすこともなく真剣に、でもどこか嬉しそうに聞いてくれた。
好きで、好きすぎて、もしいつか善逸がいなくなったらを考えすぎて。自分の悪い想像に涙が溢れる。私だって元からこんなに悲観的だったわけじゃなくて、全ては善逸のせい、善逸が好きすぎるからこうなってしまったんだ。
「俺をそんなに好きでいてくれるのは嬉しいけどさ、……ね、ナオちゃんこっち見て?」
頭を撫でていた手がするりと滑って頬に添えられ、僅かに力をかけ促されて善逸と目を合わせた。さっき溢れた涙は善逸の服に染み込ませてしまったけれど、止まることなく零れ続ける涙は私の視界を歪ませている。柔らかく輝く金色、私を射貫く琥珀色。大好きな色がぼんやりとした輪郭の中でも鮮明に見えた。
「不安と同じくらいか、それよりもっと。幸せになってほしいなぁ」
「幸せ、だけどっ……不安なんだもん」
善逸がくれるたくさんの好意は確かに私を幸せにしてくれる、けれど。やっぱり幸せになればなるほど、どんどん不安にもなる。これは比例してる。私の心の天秤は、常に不安に傾きがちなまま均衡を保ってる。
「いつか、一生かけてでもナオちゃんを幸せでいっぱいにしたげるから」
柔らかい声をかけられ、頬を伝う涙が指で拭われる。新しく溢れた涙、その寄せても返さない波のような小さな海を口付けて吸い上げられて。くすぐったさと、柔らかくあたたかい唇の感触に少しだけ心がほぐれたような気がする。それが伝わったのか、善逸が吐息だけで笑う。
「きみが受け取りきれないくらいの愛をあげるから」
「……うん」
「覚悟しててよねぇ?」
「うん……、ふふ」
冗談めかして言われた宣戦布告と、服越しにもじんわり伝わってきた体温がどんどん心をほぐしていく。私の心を不安でガチガチにするのが善逸なら、それをほぐしてあやして幸せにするのも彼なんだ。
辛くて苦しくて、不安で泣きそうになるくらい、泣いてしまうくらいに好きで好きで、好きすぎて。もう私は善逸無しではきっと生きられない。生きていけない。
「ねぇ、ずっと一緒にいてね」
「……今更、離してなんてやれないから」
そっと瞼をおろすと、せっかく拭われた涙がまた溜まっていたみたいでほろりと零れ落ちる。今度はそれを吸い取らなかった善逸の唇が、私と重なった。
少女漫画やドラマで見ては憧れた恋愛は、キラキラと輝いて甘酸っぱくて胸がときめいて……素敵なもの、素晴らしいもの、幸せなものだと思っていた。いつか私にも好きな人が出来て好きになってもらえて、愛し合うことが出来たなら。とても幸せだろうと思っていたのに。
「……どうしたの?なんか辛そうな音してる」
そう心底心配そうに私を覗き込むのは、お互いに気持ちを伝え合い両想いになり、疑う余地もないくらい私を好きでいてくれる恋人。
「……ぜんいつ」
「ん、おいで」
おいでと言いながらも、自ら私を抱きしめてくれる善逸の背に腕を回してきつく抱きしめた。服が邪魔で体温が遠くて、もっと近づきたくて腕に力が入る。渾身とも言っていい力を込めてしまって苦しいかもしれない、そう思ったけれど、私の腕はもっともっとと力を入れて、空気の入る隙間もないくらいに全身を押し付けた。応えるように強く、でも私を気遣った力加減で抱きしめ返され、柔らかく後頭部を撫でる手のひらの感触にほうと息を吐く。私の身体が震えているのか、それとも心か。吐き出された息は情けないくらいに震えていた。
優しくてあったかくて愛しい恋人。確かにここにいるのに、私は常に彼の喪失に怯えている。
「また不安なの?」
付き合いが長くなってきて最近吐露したこの不安を、善逸は笑い飛ばすこともなく真剣に、でもどこか嬉しそうに聞いてくれた。
好きで、好きすぎて、もしいつか善逸がいなくなったらを考えすぎて。自分の悪い想像に涙が溢れる。私だって元からこんなに悲観的だったわけじゃなくて、全ては善逸のせい、善逸が好きすぎるからこうなってしまったんだ。
「俺をそんなに好きでいてくれるのは嬉しいけどさ、……ね、ナオちゃんこっち見て?」
頭を撫でていた手がするりと滑って頬に添えられ、僅かに力をかけ促されて善逸と目を合わせた。さっき溢れた涙は善逸の服に染み込ませてしまったけれど、止まることなく零れ続ける涙は私の視界を歪ませている。柔らかく輝く金色、私を射貫く琥珀色。大好きな色がぼんやりとした輪郭の中でも鮮明に見えた。
「不安と同じくらいか、それよりもっと。幸せになってほしいなぁ」
「幸せ、だけどっ……不安なんだもん」
善逸がくれるたくさんの好意は確かに私を幸せにしてくれる、けれど。やっぱり幸せになればなるほど、どんどん不安にもなる。これは比例してる。私の心の天秤は、常に不安に傾きがちなまま均衡を保ってる。
「いつか、一生かけてでもナオちゃんを幸せでいっぱいにしたげるから」
柔らかい声をかけられ、頬を伝う涙が指で拭われる。新しく溢れた涙、その寄せても返さない波のような小さな海を口付けて吸い上げられて。くすぐったさと、柔らかくあたたかい唇の感触に少しだけ心がほぐれたような気がする。それが伝わったのか、善逸が吐息だけで笑う。
「きみが受け取りきれないくらいの愛をあげるから」
「……うん」
「覚悟しててよねぇ?」
「うん……、ふふ」
冗談めかして言われた宣戦布告と、服越しにもじんわり伝わってきた体温がどんどん心をほぐしていく。私の心を不安でガチガチにするのが善逸なら、それをほぐしてあやして幸せにするのも彼なんだ。
辛くて苦しくて、不安で泣きそうになるくらい、泣いてしまうくらいに好きで好きで、好きすぎて。もう私は善逸無しではきっと生きられない。生きていけない。
「ねぇ、ずっと一緒にいてね」
「……今更、離してなんてやれないから」
そっと瞼をおろすと、せっかく拭われた涙がまた溜まっていたみたいでほろりと零れ落ちる。今度はそれを吸い取らなかった善逸の唇が、私と重なった。
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