鶯丸
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「鶯丸は、掴みどころがないよね」
いつか本刀に向かってそう言った時、鶯丸は「そうか」とだけ答えた。興味が無かったのか、自分でもそうだと思っているのか。否定も肯定も含まれずに返った返事は、それ以上でもそれ以下でもなかった。
掴みどころがない、それは空に浮かぶ雲のようだと思う。鳥の名をその名に負うのに、彼は鳥というよりはやはり雲だ。ふわふわしていて、すっきりそこに見えるのに、気づけば姿を変えている。こちらの意図には沿わない。まるでふわりと空に浮かぶ雲、それはピッタリだと思う。
「主は」
過去の記憶に飛ばしていた意識が、その声に引き寄せられて現実へと帰る。執務室。近侍とふたり。手元には審神者の印章が必要な書類がどっさり……単純な作業を延々としていたから、ぼーっとしていたようだ。
「なぁに?鶯丸」
「うん。主は、海月のようだな」
突然の例えに、なんと返していいかわからず鶯丸を見た。しかし鶯丸はこちらを見ていない。その片方だけ覗いている目は、手元の湯呑みを見つめているようだ。
「……おかわりいかが?」
「いただこう」
返事の代わりに二煎目を勧めれば間髪入れずにせびられる。おかわりが欲しければそう言うか、自分で淹れればいいのに。急須からとくとくと注ぐと、さっきより色の濃いお茶が出た。茶葉が開いたのだろう。
「ええと、くらげ。だっけ?」
「ああ」
短く答えたきり、鶯丸はお茶を啜る。品が悪くならない程度の音をたてて、香りにうっとりと目を細める。お気に召したらしい。けれど海月についてはそれ以上語らない。私が海月のようだと、何故そう思ったのか聞いてみたいと思ったのだけれど。この調子では無理そうだ。ふぅ、ため息をついて縁側へと目を向ける。空には、浮かぶ雲というよりは湧き上がるような雲が居た。あれは、積乱雲なのだろうか。
「もうそろそろ夏だねぇ」
「新茶が飲めるな」
「ふふ」
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