派手な泥棒、来たる
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風邪をひいた。それはもう強力なやつを。
一人暮らしをしていて困ることのひとつに、病気をした時に頼れる人がいない、というのがある。今まさにそんな状況で、家に帰るなりぶっ倒れた私を心配してくれる人もベッドまで運んでくれる人もいない。家に着いたことで安心したのかもしれないし、張っていた気が緩んだのかもしれない。硬い床に寝そべった体は力が入らなくて、もう起き上がれない。朝からずっと頭は痛かったし、熱が上がっていってるみたいで、ぞくぞくと寒さが身体を舐め回している。それから逃れるように、冷たい床の上でぎゅうと身を縮こませる。最後の気力で必要そうな物を買ってきたコンビニの袋がくしゃりと音を立てた。
寝てしまおう。もう動くのは諦めて少し寝て、それで起きた時にちょっと良くなってたらいいなぁ。朦朧とする意識がぐらぐらと揺らいで薄れていく中、私の耳に物音がした。いや、物音なんて可愛いものじゃなくて、文字にするならドンガラガッシャーン!みたいな爆音。痛む頭に響く。
「いっ……てええぇぇぇ!?!?えっ何ここ!?なんなのもおおおぉぉ!!!!」
……素直に、うるさい。爆音の直後に叫び声がして、その煩さが頭をガンと殴り飛ばす。
私は一人暮らし、彼氏もいなければ家族が急に尋ねてくることも無い。とすれば、この爆音の主として考えられるのは、泥棒強盗変質者……どれも良いものでは無い。
ああ、ただでさえ具合が最悪で死にそうなのに、こんなことになるなんて。
「どっどどど、どこだよここ!?家!?なに!?こんなことある!?!?」
こんなことある、は私のセリフだ。とにもかくにも煩い、頭が痛い。無理やり顔を上げて声の方を見ると、カーテンが開けっ放しだった窓から差し込む街灯の明かりに照らされた人影。髪も来ている物も明るい色だった。
「…………派手な、どろぼう……」
「っっぎゃーーーー!?!?人!人がいる!?誰だれ何なんなのぉお!?」
「……うる、さ」
頭の中がぐるぐる回ってる気がする。自分の声すら響いて気持ち悪いのに、具合が悪すぎて小さく呻いた。
「え……あ、ごめんなさいね……?」
急にぐっとボリュームを落とした派手な泥棒が、そろりとこちらに近寄ってきた。家に入り込んでいる知らない人間、声からすると相手は男。まずいと思うのに身体は動かない。
「だ、大丈夫?具合悪いの?あっ女の子だ……!」
何故か声を弾ませてきゅっと手を握られ、こんな状況なのに自分以外の体温に安心してしまった。元々限界を通り越していた意識は、触れた手の温もりに引っ張られてすとんと闇に落ちていった。
◆◇
揺らいでいる意識が像を結ぶように、だんだんと意識がハッキリしてくる。この感覚は目覚めだ、私は寝ていたらしい。床とは違う柔らかな感触は、ベッドに寝ているのだろう。ゆっくりと目を開けると、部屋の中は薄暗い。真っ暗でもないし、光の感じから夜明けくらいかなぁとぼんやり思ったところで、気配を感じて横を見た。
「あっ、お、起きた!?おはよう!」
視界いっぱいに金髪の男。誰だこれ。あ、派手な泥棒か。って、そうだそうだった!
「っだ、れ……!?」
乾いた喉から声を絞り出すと、いつの間にか握られていた手を引っ込めようとする。けれどぎゅうと掴まれていて、痛くはないけれど抜けない。少しでも距離を取ろうと体を起こそうとしたら、肩を押されてまたベッドに戻された。ご丁寧に布団までかけ直してくる。
「きみすごい熱だよ?寝てなきゃ駄目だって!」
「……っ、どろ、ぼう……!」
「えー!?そんなの来ても俺が何とかするから!寝てて!」
いやおめーだよ、とは思ったけれど、私を寝かしつけようとしているのか肩のあたりをぽんぽんと叩く手は優しくて、なんだか落ち着くそのリズムはたしかに眠気を誘う。それに何が嬉しいのか楽しいのか、締りのない顔でふにゃふにゃと笑っているのは気が抜ける。つられて緊張が緩んだせいなのか、私の意識はまた眠りに落ちていった。
願わくば、起きたら綺麗さっぱり何事もなく、熱に浮かされた頭が見せた夢か幻でありますように。
一人暮らしをしていて困ることのひとつに、病気をした時に頼れる人がいない、というのがある。今まさにそんな状況で、家に帰るなりぶっ倒れた私を心配してくれる人もベッドまで運んでくれる人もいない。家に着いたことで安心したのかもしれないし、張っていた気が緩んだのかもしれない。硬い床に寝そべった体は力が入らなくて、もう起き上がれない。朝からずっと頭は痛かったし、熱が上がっていってるみたいで、ぞくぞくと寒さが身体を舐め回している。それから逃れるように、冷たい床の上でぎゅうと身を縮こませる。最後の気力で必要そうな物を買ってきたコンビニの袋がくしゃりと音を立てた。
寝てしまおう。もう動くのは諦めて少し寝て、それで起きた時にちょっと良くなってたらいいなぁ。朦朧とする意識がぐらぐらと揺らいで薄れていく中、私の耳に物音がした。いや、物音なんて可愛いものじゃなくて、文字にするならドンガラガッシャーン!みたいな爆音。痛む頭に響く。
「いっ……てええぇぇぇ!?!?えっ何ここ!?なんなのもおおおぉぉ!!!!」
……素直に、うるさい。爆音の直後に叫び声がして、その煩さが頭をガンと殴り飛ばす。
私は一人暮らし、彼氏もいなければ家族が急に尋ねてくることも無い。とすれば、この爆音の主として考えられるのは、泥棒強盗変質者……どれも良いものでは無い。
ああ、ただでさえ具合が最悪で死にそうなのに、こんなことになるなんて。
「どっどどど、どこだよここ!?家!?なに!?こんなことある!?!?」
こんなことある、は私のセリフだ。とにもかくにも煩い、頭が痛い。無理やり顔を上げて声の方を見ると、カーテンが開けっ放しだった窓から差し込む街灯の明かりに照らされた人影。髪も来ている物も明るい色だった。
「…………派手な、どろぼう……」
「っっぎゃーーーー!?!?人!人がいる!?誰だれ何なんなのぉお!?」
「……うる、さ」
頭の中がぐるぐる回ってる気がする。自分の声すら響いて気持ち悪いのに、具合が悪すぎて小さく呻いた。
「え……あ、ごめんなさいね……?」
急にぐっとボリュームを落とした派手な泥棒が、そろりとこちらに近寄ってきた。家に入り込んでいる知らない人間、声からすると相手は男。まずいと思うのに身体は動かない。
「だ、大丈夫?具合悪いの?あっ女の子だ……!」
何故か声を弾ませてきゅっと手を握られ、こんな状況なのに自分以外の体温に安心してしまった。元々限界を通り越していた意識は、触れた手の温もりに引っ張られてすとんと闇に落ちていった。
◆◇
揺らいでいる意識が像を結ぶように、だんだんと意識がハッキリしてくる。この感覚は目覚めだ、私は寝ていたらしい。床とは違う柔らかな感触は、ベッドに寝ているのだろう。ゆっくりと目を開けると、部屋の中は薄暗い。真っ暗でもないし、光の感じから夜明けくらいかなぁとぼんやり思ったところで、気配を感じて横を見た。
「あっ、お、起きた!?おはよう!」
視界いっぱいに金髪の男。誰だこれ。あ、派手な泥棒か。って、そうだそうだった!
「っだ、れ……!?」
乾いた喉から声を絞り出すと、いつの間にか握られていた手を引っ込めようとする。けれどぎゅうと掴まれていて、痛くはないけれど抜けない。少しでも距離を取ろうと体を起こそうとしたら、肩を押されてまたベッドに戻された。ご丁寧に布団までかけ直してくる。
「きみすごい熱だよ?寝てなきゃ駄目だって!」
「……っ、どろ、ぼう……!」
「えー!?そんなの来ても俺が何とかするから!寝てて!」
いやおめーだよ、とは思ったけれど、私を寝かしつけようとしているのか肩のあたりをぽんぽんと叩く手は優しくて、なんだか落ち着くそのリズムはたしかに眠気を誘う。それに何が嬉しいのか楽しいのか、締りのない顔でふにゃふにゃと笑っているのは気が抜ける。つられて緊張が緩んだせいなのか、私の意識はまた眠りに落ちていった。
願わくば、起きたら綺麗さっぱり何事もなく、熱に浮かされた頭が見せた夢か幻でありますように。
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