休日の過ごし方
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私には推しがいる。
音楽番組からバラエティ、ニュース番組のゲストなど、今やテレビで見かけない日はないくらいの有名アイドルグループのひとり。イメージカラーは黄色、決めゼリフが先かトレードマークが先かは分からないが、カミナリがモチーフのグッズが多いそのアイドル。そう、私は我妻善逸くん担である。
今まではライブの時くらいしかまとわなかった推し色を、最近は普段も身につけている。今日はスマホケースと髪留め、それにバッグに付けたライブグッズの黄色いスカーフ。見る人が見ればわかるかもしれないけれど、まあちょっと黄色が好きな人、くらいに収まってるはず。
私が日常でも推し色を身につけるようになったのは、先日出勤時にライブ外で推しに会うという事件があったからだ。しかもその時に「今日は黄色じゃないの?」なんて言われたらもう、毎日黄色を身に纏うしかない。電車内でゼロに近い距離に立ち、直接言葉を交わし、一対一でコールアンドレスポンスまで貰ってしまった。神対応すぎる。大変な供給過多だった。
今日は仕事が休みで、善逸くんに会った電車に乗ることはないのだけれど。それでも推し色を身に纏うと気分が上がる。せっかくの休日だから家に閉じこもるのも勿体ないし、買ったまま放置していた小説を持ち込んでカフェでお茶をしていた。
「あ、俺の嫁だ」
そんな声が聞こえて、飲んでいたアイスティーを吹き出しそうになる。この聞き覚えのある声、馴染みのあるその呼び方。
「ぜっ……!」
善逸くん、私の最推しの名前を叫びそうになって声の方を見た時に、視界に映る彼の口元に立てられた一本の指になんとか口を閉じる。偉いねぇ、そう言いながら細められた、はちみつ色の瞳。
「……ぜんいつくん……?」
「そ!俺だよぉ」
目深に被った帽子の影でも輝く笑顔はまさにアイドル。私の席の向かいに当然のように座り、にこにことこちらを見ている。唐突な供給にぽかんとしている間に、善逸くんはベルを鳴らして店員を呼びコーヒーを注文した。
いや善逸くん??今をときめくアイドルが、私の最推しが目の前にいる?嘘でしょ?ドッキリ?それとも好きすぎるあまりに白昼夢でも見てる?
「……ゆめ……?」
「夢じゃないよ!霹靂一閃する?」
「ヒェッ……むり……」
すい、と私を指さすピストルを象られた手。形だけで射抜かれる。急なファンサを浴びて語彙力は消失するし顔は人権を失いそうだし心臓は鼓動を全速前進させだした。今なら新幹線より早く走れる気がする。
ひひ、とイタズラっぽく笑う善逸くんの所にコーヒーが運ばれてくる。あぶない、あんまりに眩しい笑顔を浴びて溶けるところだった。周りの人はなぜ気づかないんだろう、超人気アイドルがここにいるのに。私の推しがいるんだぞ。カフェの中の空間が輝いて見えてなきゃおかしくない?コーヒーを飲む姿も最高にかっこいい。明日もきっとかっこいいぞ。
「ナオちゃんはお休み?いつもお仕事偉いねぇ。今日はちょっと俺色なんだ!」
「しゃ、喋ってる……すごい……」
「やっぱ黄色だと俺の嫁感強くていいね!かぁわいい!」
「ピャッ」
死ぬ、しんだ。供給過多がすぎて私の心臓が爆発四散する。やっぱり夢じゃないかなこれ。多分真っ赤な顔をしてまともに会話もできない私の目の前で、推しのアイドルが帽子のつばを少し上げて完璧なアイドルスマイルでニッコリ笑い、首をふわりと傾ける。はいむり。
「ね、今日は俺とデートしよ?」
そう言ってテーブルの上にあった私の手を握るから、やっぱり私は今日いまこの瞬間に死ぬ死んでしまう。手があったかい。推しが生きてる。私手汗かいてない?万死。ひええ。
「めいにち……っ」
「ええー?死んじゃやだなぁ」
善逸くんの手から伝わる体温にトドメを刺された私に、今度はあまりアイドルっぽくない眉を下げた柔らかい顔で、私の推しが笑った。
音楽番組からバラエティ、ニュース番組のゲストなど、今やテレビで見かけない日はないくらいの有名アイドルグループのひとり。イメージカラーは黄色、決めゼリフが先かトレードマークが先かは分からないが、カミナリがモチーフのグッズが多いそのアイドル。そう、私は我妻善逸くん担である。
今まではライブの時くらいしかまとわなかった推し色を、最近は普段も身につけている。今日はスマホケースと髪留め、それにバッグに付けたライブグッズの黄色いスカーフ。見る人が見ればわかるかもしれないけれど、まあちょっと黄色が好きな人、くらいに収まってるはず。
私が日常でも推し色を身につけるようになったのは、先日出勤時にライブ外で推しに会うという事件があったからだ。しかもその時に「今日は黄色じゃないの?」なんて言われたらもう、毎日黄色を身に纏うしかない。電車内でゼロに近い距離に立ち、直接言葉を交わし、一対一でコールアンドレスポンスまで貰ってしまった。神対応すぎる。大変な供給過多だった。
今日は仕事が休みで、善逸くんに会った電車に乗ることはないのだけれど。それでも推し色を身に纏うと気分が上がる。せっかくの休日だから家に閉じこもるのも勿体ないし、買ったまま放置していた小説を持ち込んでカフェでお茶をしていた。
「あ、俺の嫁だ」
そんな声が聞こえて、飲んでいたアイスティーを吹き出しそうになる。この聞き覚えのある声、馴染みのあるその呼び方。
「ぜっ……!」
善逸くん、私の最推しの名前を叫びそうになって声の方を見た時に、視界に映る彼の口元に立てられた一本の指になんとか口を閉じる。偉いねぇ、そう言いながら細められた、はちみつ色の瞳。
「……ぜんいつくん……?」
「そ!俺だよぉ」
目深に被った帽子の影でも輝く笑顔はまさにアイドル。私の席の向かいに当然のように座り、にこにことこちらを見ている。唐突な供給にぽかんとしている間に、善逸くんはベルを鳴らして店員を呼びコーヒーを注文した。
いや善逸くん??今をときめくアイドルが、私の最推しが目の前にいる?嘘でしょ?ドッキリ?それとも好きすぎるあまりに白昼夢でも見てる?
「……ゆめ……?」
「夢じゃないよ!霹靂一閃する?」
「ヒェッ……むり……」
すい、と私を指さすピストルを象られた手。形だけで射抜かれる。急なファンサを浴びて語彙力は消失するし顔は人権を失いそうだし心臓は鼓動を全速前進させだした。今なら新幹線より早く走れる気がする。
ひひ、とイタズラっぽく笑う善逸くんの所にコーヒーが運ばれてくる。あぶない、あんまりに眩しい笑顔を浴びて溶けるところだった。周りの人はなぜ気づかないんだろう、超人気アイドルがここにいるのに。私の推しがいるんだぞ。カフェの中の空間が輝いて見えてなきゃおかしくない?コーヒーを飲む姿も最高にかっこいい。明日もきっとかっこいいぞ。
「ナオちゃんはお休み?いつもお仕事偉いねぇ。今日はちょっと俺色なんだ!」
「しゃ、喋ってる……すごい……」
「やっぱ黄色だと俺の嫁感強くていいね!かぁわいい!」
「ピャッ」
死ぬ、しんだ。供給過多がすぎて私の心臓が爆発四散する。やっぱり夢じゃないかなこれ。多分真っ赤な顔をしてまともに会話もできない私の目の前で、推しのアイドルが帽子のつばを少し上げて完璧なアイドルスマイルでニッコリ笑い、首をふわりと傾ける。はいむり。
「ね、今日は俺とデートしよ?」
そう言ってテーブルの上にあった私の手を握るから、やっぱり私は今日いまこの瞬間に死ぬ死んでしまう。手があったかい。推しが生きてる。私手汗かいてない?万死。ひええ。
「めいにち……っ」
「ええー?死んじゃやだなぁ」
善逸くんの手から伝わる体温にトドメを刺された私に、今度はあまりアイドルっぽくない眉を下げた柔らかい顔で、私の推しが笑った。