閑話「あなたは神を信じますか?」
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神というのは、いや神に限らず悪魔や妖怪など実在の体を持たないものは、その存在がとても曖昧だ。俺だって一応神格持ちだけどね?神様なんて呼ばれてるけどね?信じる者、祈る者がいなければ、その存在は消えていくだけだ。お参りしに来る人もいない寂れた神社で、せっかく手に入れた神格を活かすこともなく、誰かの役に立つことも無く、俺はひとり寂しく消えていくんだろうなあ。
「はあ……俺の神生さみしすぎない……?」
できることならいろんな人の願いを叶えて、慕われ、祀られ、そんで可愛い奥さんをもらって……だめだ虚しい。やめよう。
そんなことを考えていたから、声が聞こえた時すぐに反応できなかった。
『……たすけてっ……、』
それは、久しく聞いていなかった人の子の声。自分以外の、声。同時に向けられる強い願いの力に神気が満ちていくのがわかる。バサバサだった尻尾もふわっと膨らんで艶が出る。ぱちぱち電気までまとい始めちゃってまあ、我ながら神なんてのは単純なものだ。
死にたくないなんて、生物としていちばん強いかもしれない願いを向けられて、そんなのもう叶えてあげるしかないじゃないか。だから早く、俺を呼んで。
そんな俺の声が聞こえたかのように、化け物に追い詰められ社殿の前にへたり込む人の子が空気を震わす。小さく微かに、でも強い願いを込めて。
『かみさま、……ったすけて!』
自分の神気だというのに、体を包む小さな雷光が弾ける度にぞくぞくする。気持ちいい。いいよ、と告げて化け物をなぎ払い、俺を望んだ人の子の前に降り立つ。
俺を見上げる濡れた瞳に、助けられた感謝からか向けられる祈りの力。鼓動が跳ねる。キュン、なんて可愛いもんじゃない。心臓を鷲掴みにされたみたいだった。
この子が、欲しい。
久しぶりに人の子を見たからか、枯れかけてた神気が溢れるほどの祈りを捧げてくれたからか。なにより可愛い女の子だったからかもしれない。そんな理由付けを全部ぶっ飛ばして運命だと叫びたいくらい、俺は一瞬にして恋に落ちていた。
「そのかわり、俺と結婚して?」
「……えぇ?」
気の抜けた声を出して、肩から力が抜ける女の子。怪訝そうな顔をしていても可愛い。恋は盲目ってこういうことかな、好きすぎて目を逸らせない。女の子も俺をずっと見てるから、これはもう俺の事好きでしょ好きに決まってる。
空気の読めない化け物がまた襲いかかって来たけれど、俺たちは今いい所なんだから邪魔しないで欲しい。ぞんざいに腕を振るうと、バチン!と思ったより大きな音がした。
女の子の手を握ると、俺の思いが乗った放電がパチパチと彼女を包んでいく。そのままその手に縋るように畳み掛けた。
「ねぇ頼む!頼むよぉ!!俺と結婚してくれよぉぉぉ!!」
神気に満ちた今なら、彼女が肯定するだけでいい。神前での契約を結んでしまえば、もう俺から逃げられない。まあ神って俺自身だけど。
「え……うん?なにこれ……」
「あっ!うんって言った!言ったね!?俺は聞きましたー絶対言いましたー!!はい結婚しましょうそうしましょう!!」
困惑しているのは音でわかる、でも今はこれでもいい。ささやかな契約を無理やり結びつけて、彼女との縁を繋いだ。俺は縁結びは専門外だけれど、神気の量で押し切った。
ひょいと抱き上げると、びっくりしたのか俺の首に腕を回して抱きついてくる。可愛い。緩む頬をそのままに、腕に力を込めて手に入れた温もりを抱きしめた。
「よろしく!俺の花嫁!」