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小噺やネタもどき

貴方と私と彼の物語

2018/06/14 00:09
「かえしてください」
最早、何度目か分からない台詞を吐く。
床に落ちた台詞を見ながら、真っ黒な聖職者は笑った。
「もう充分返してやっただろ? 可愛い彼女さんに、ありふれた日常、ありふれた幸せ。なぁ、これ以上何を返してほしいんだ?」
「あの子を、かえしてください」
聖職者は優しく笑っている。笑いながら、あの子の腕を掴んでいる。優しく優しく、間違えても傷付けないようにその腕を掴んでいる。
「俺から全部奪ったのはアンタだろ。でも、いいぜ、全部やるよ。全部必要ない。だからな、神父さん」
秘め事を口にするように唇に指を触れさせて、聖職者は笑顔を消した。
そこにあるのは、狂気ですらない。ただの虚無。
「こいつだけは俺が貰っていいだろ?」

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