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小噺やネタもどき

俺の場合は、数年と少し※R-15G程度の表現有

2018/03/24 23:53
アダム

俺が産声を上げたのは、スラム街にある路地裏の一画。饐えた酷い臭いと夥しい血の中産み落とされた俺は、窶れた女に抱かれ、母乳と精液で育てられた。
女が俺に与えたのは、青の色彩と金の稼ぎ方、暴力と罵声。そんなものだった。
この世界の造りは到ってシンプル。
多大な魔力を有する者が栄え、微弱な魔力しか持たない者は爪弾きにされる。魔術の才能とは、魔力の許容量とイコールだ。その才能のチケットを渡されるのは優れた人間だけ。つまり、魔力の許容量が多い遺伝子からは、魔力の許容量が多い子供が生まれる。だから、スラム街の売女は子供に全てを託した。どこぞのお偉いさんから貰った遺伝子を育んだのだ。
この国では、幾ばくか親の願望通りの子供が産まれるように操作が出来る。稼いだ金を全て使って、その技術に女は願った。自らの不運を払拭できる機会。神様に愛され、魔術と相性がいいなんて御伽噺のように語られる、奇跡が起きなければ生まれない青の色彩を。
斯くして奇跡により産まれた子供は、魔力を一切有していなかった。多少なりとも魔力を有す人間の中、ただ一人俺は空っぽだった。
発狂した女は髪を振り乱して暴れた。愛を信じていた子供は、女から受ける暴力に泣いた。暴力と暴言に晒される中、そういえばこの女は一度も俺の名前を呼ばなかったと気づく。その程度だった。結局俺はこの女にとって、その程度の存在。愛されていたと錯覚していただけだった。
哀れだと思った。
自分も女も。なんて無様で哀れなんだろう。憎しみなんてない。ただ、諦念と憐憫で女を見つめた。
金切り声を止めてくれ、頭に響く。殴るのを止めてくれ、服が汚れる。
嗚呼、吐きそうだ。
そうして息がしにくい世界で、呼吸が上手く出来なかった俺は、ただ溺れないように足掻いた。気を抜けば飲み込まれそうな水の中を、意味もなく跳ねるだけの無為な日々は、俺の中のいろんなものを殺していった。
ある日、街に火が放たれた。
火を放ったのは自国の軍人だった。不利益しか生み出さない街を、国は見離したのだ。元々、国境沿いにあった街は敵国の攻撃に頻繁に晒されていた為、都合が良かったのだろう。敵国が攻め込めてきたタイミングと合わせて、街に火を放ち、敵国の人間も魔力のない人間も纏めて焼き払った。生き残りが外へ逃げないように、街を包囲すれば真実を知る者は誰もいない。敵国の手によって滅ぼされた悲しいスラム街。それが国が描いたシナリオだった。
火から逃れ、外への道も塞がれた人間達が争い始めた原因は水や食糧だった。そうして殺し合い、やがて食べるものがなくなれば、人間を殺して食べた。俺も屍肉に齧り付き、血を啜った。そうしなければ生き残れなかったから。何度死のうとしたか分からない。けれど、どうしても死ねなかった。人間の生存本能はそう簡単に命を手放すことを許さない。その度に絶望し、目の前に広がるくすんだ地獄を歩いた。
歩いて歩いて、そうして倒れた先で、
「記録の綻び。まだ、生きている」
霞んだ世界に落とされた色彩は鮮烈だった。
金色の髪に、青色の瞳。
真っ白な男は、なんの感慨もなさそうな目で俺を見下ろす。
それが、俺の神様。俺に全てを与え、代わりに全てを失った人。
綺麗だと、女に疎まれた青を褒めるから、俺はそんなに自分の色が嫌いじゃなくなった。
可愛いと、周りに居た客とは違う声色で頬を撫でるから、俺は自分がそんなに嫌いじゃなくなった。
生きて欲しいと、自分勝手な我儘で引き留めるから、俺は生きる意義を見出だした。
だから、どうしても自分の足で、自分の言葉で、俺の神様に追い付きたかった。それなのに、手にいれる物全てが鋭利なナイフに変わり果て、抱き締めようと伸ばした手はアイツの首を締めてしまう。
俺が追い付こうと足掻くほど、アイツは俺を愛してしまう。人間を、愛してしまう。
その度に人間と関わって、傷ついて。それなのに、人間を愛していると笑う。世界を愛して、人間を愛する度に突きつけられる、自分の異質さに涙するくせに愛するのを止めようとしない。馬鹿な神様。
ただ、抱き締めたくて努力した全てがアイツを刺し殺す。それなのに、それさえ厭わずアイツは俺を抱き締めるから俺はどうしてもこの温もりから離れられない。
互いに傷だらけで、そのくせ互いがいなければ幸せになんてなれない。世界にたった二人だけなら、俺達は痛みなく抱き合えるのに。

「痛みすら愛しいと思えるようになるまで、どれだけかかるか知ってるか?」

コメント

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  • fvlzokzf (非ログイン)2021/04/20 11:31

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