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小噺やネタもどき

極彩色の地獄

2018/03/10 00:41
ホウプとアダム

あの子が手入れする庭はとても綺麗です。寸分の狂いなく咲く花々を見て、真っ黒な悪魔は狂気じみていると言いましたが、僕はあの子が優しく慈しんでいる花が大好きでした。
ある日、庭の手入れをしていると、薔薇のなかに小さな小さな花が咲いていました。どうやら雑草らしいそれは、もう随分と弱りきっていました。
『お前みたい』だと、あの子は優しい目で言いました。そんな優しい顔をされたら、僕はこの世のなにもかもが美しいと思ってしまいます。だから僕も『この花、好きになりそうです』と笑いました。あの子は、優しい目をして呟きました。『そうか』


翌朝、庭は色鮮やかな地獄になっていました。昨日まで綺麗に咲いていた花は全て落ち、地面を染めていました。
そんな庭に佇んでいたあの子は、優しい目をして言いました。『どうかしたか?』
そんなあの子の足下には、小さな小さな花が一輪だけ昨日と変わらず咲いています。あの子の庭は、まるでそこだけで完結してしまっているようでした。
昨日まで咲き乱れていた花が此方を見上げています。まるで、鋏を取りに戻る暇さえ惜しかったというように、何かで切り裂かれたかのような花々が。
『今までは義務感でやってたが、これからは楽しく花の手入れが出来そうだ』
『ありがとう、とうさん』
優しい目で、優しい顔で笑うあの子は、それはそれは優しい子なのです。


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