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プロローグ

世界が赤い。
ぱちりと爆ぜた炎が燻っている。
何故自分はこんなところにいるのだろう。
辺りには建物の残骸、飛び散った本のページが散乱している。散らばるページを焼き付くそうとするかのように、炎は次々と燃え移っていく。
赤に燻られる空には、大きな本が浮かび上がっていた。
機械仕掛けの本を動かすかのように、幾つもの歯車が稼働している。大小様々な歯車が稼働し、本は漸くそのページを捲るために動き出した。しかし、軋んだ歯車は、それ以上ページを捲る動力を生み出すことができなかったらしい。やがて、静かにページは閉じられた。
それは、まるで一つの世界の終わりのような。
そうしているうちに、近くに人の気配があることに気づいた。しかし、そちらに視線を向けようにも、身体は鉛のように重く、思考は泥のように停滞している。
自分の近くにいる人はどうやら泣いているらしい。酷く悲愴な声でごめんなさいと謝り続ける彼は、僕にとって大切な人。けれど、どうしても彼が誰か分からない。忘れるはずがないのに。だって、彼は僕の『 』なのだから。
思い出せない空白に砂を噛んだような心地になる。
けれど、彼に泣いて欲しくない。そう思うのは確かだった。指先に力をこめる。涙を拭うことが出来なくても、せめて、僕が
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