満月の夜に。
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それから2人は、
満月になる度に会うようになった。
初めて会った時から数えて、次で5回目だった。
京楽と出会ってからというものの、
春風はみるみるうちに、元気を取り戻していった。
と、同時に、
京楽と離れている時間が、
徐々に長く感じるようになっていった。
月を見るのも癖になっていた。
新しいことは一つ増えた。
週に2回か3回、
町の花屋さんで働き始めたこと。
春風の好きな植物に囲まれて働ける環境は、
この上ないことであり、
1人の時間を少しでも減らすべく、
一生懸命に働いていた。
次の満月のときは、
なんの話をしようか。
そう思うだけで、明るい気持ちになることができた。
店主「春風ちゃん、
なんか今日嬉しそうじゃない?
なになに?デート??」
花屋さんの店主がおどけた様子で話しかけてくる。
春風「……違いますよ!
友達と会うんです。」
むぅっと頬を膨らませる。
店主「友達か〜!楽しんでおいでね!
今日夕方配達行ってくれる??
配達終わったらそのまま帰っていいから〜!」
普段からも配達をすることがあり、
個人宅も多いが、宴会場、病院等、宅配先は毎回異なっていた。
住んでいる町の近くではあるが、
あまり出歩いたこともない春風は、
配達の道のりは、探検気分になるため、
どちらかというと好きな仕事だった。
夕方
春風「…… 護廷十三隊…十三番隊敷地内?…こんなに近くに敷地があったんだ……」
思わずふと京楽のことを思い浮かべる。
京楽は何番隊なんだろう。
まさか十三番隊じゃないかな…
期待する気持ちと、
心配な気持ちが入り混じる。
(お花屋さんで働いてる話、してないしな…)
もう少し経ってから、
京楽に伝えようとしていた。
〜十三番隊隊舎にて
コンコン
春風「…ごめんくださーい。
花屋の者です。配達に伺いました〜」
隊員「ごくろうさまです。
確認しますので、少々お待ちください。」
門の向こうから声が聞こえる。
しばらくすると、
男が1人出てきた。
隊員「…隊長宛ですね。
ありがとうございます。
この道をまっすぐ行ったところにいる、
男性の隊員に渡していただけますか?」
敷地内の和風の庭を指差す。
春風「…(受け取ってくれないんだ)…」
広い敷地を歩き始めた。
左右を見渡すと、
きちんと手入れされた草木が目に写る。
春風「……この花見たことない」
白くて小さな蕾をつけた植物を見つけた。
まだ咲いてはいない。
しかし存在感があり、
その他の植物と比べても、
より一層手入れが行き届いているように見えた。
(咲いたところが見たいな…)
??「…その花はね、マツユキソウと言ってね。
冬から春にかけて、小さな花が咲くんだ。」
春風の歩く方向から、
1人の男性が歩いてきた。
まっすぐ伸びた長めの白い髪は、
太陽の下でキラキラと輝いている。
春風「あっ、勝手にごめんなさい。
マツユキソウって名前なんですね。
ありがとうございます。」
しゃがみこんで見ていた為、
急いで立ち上がり、男性の方に向き直す。
??「…お花の配達かい?
待っていたんだよ、ありがとう。」
春風の手元の花束を見て、
受け取る仕草をする。
春風「…隊長様宛のようですが、
お渡し頂けますか?」
一瞬迷ったが、
指示された建物まであと50m程度なので、
聞いてみる。
そうすると男性はニコッと笑って、
??「…すまん!名乗ってなかった。
十三番隊隊長の浮竹十四郎だ。」
自身の名前を名乗る。
(この人が…隊長……)
これまで隊長には会ったことがなく、
大男か野武士のようなイメージを持っていたため、
浮竹の容姿に軽い衝撃を受けた。
手を出してくれている浮竹に花束を渡す。
浮竹「いつもの人じゃないようだけど、
君は新人さんなのかな?? 」
春風「…は、はい。先月から働いております。
橘 春風と申します。」
隊長に話す態度の正解が分からず、
少しオドオドしてし、
名乗った後頭を下げる。
浮竹「…よ、よしてくれよ
普通に話してくれ。
君は隊員でもないんだし…」
そんな様子を見て、
浮竹も少し動揺する。
春風「…は、はい。
…あ、じゃあわたしはこれで。」
一礼し、立ち去ろうと背中を向ける。