満月の夜に。
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それから2週間が過ぎた。
春風は、穏やかな日々を送っていた。
1人になってからの数日間は、
ふとした時に父を想い、沈んだ気持ちになる時間が多々あり、
1日家に閉じこもることも少なくなかった。
それから徐々に遺品の整理や、
写真等を整理に時間を使い、気持ちを整理し、紛らわすことができた。
写真や書物等を整理していると、
父の意思や心をすぐ近くに感じ、嬉しかった。
その後は1人の生活に慣れていき、
趣味であった読書をすることもできるようになっていた。
ケホッケホケホ
古いものをたくさん出したからか、
そこら中の部屋が埃っぽい。
春風は幼い頃から喘息を患っており、
最近まで落ち着いていたが、やはり冬が近くなると体調に変化が出てき始めていた。
春風「またこの季節か…」
自分の体に嫌気がさす。
窓を開けて新鮮な空気を取り入れ、
深呼吸をする。
春風(あ、イチョウの木が)
以前、京楽と会ったことを思い出す。
京楽とあの木の前で別れた時は、
まだ葉が完全に黄色にはなっていなかったが、
今日見ると殆どが黄色になっていた。
春風(あの人、何してるのかな)
優しい雰囲気、残り香を思い出し、
どこかにいる彼に想いを馳せた。
庭の落ち葉の掃除をしながら、決心する。
春風(あの神社へ、今日行ってみよう。)
夕方になり、辺りは日が暮れて真っ暗になった。
生憎、今日は月が分厚い雲に隠れている。
春風 (あの人、またいるかな)
暗い道を進み、
突き当たりにお堂が見えた。
そのまま進み、
お堂の上を見上げたが、
彼はいないようだった。
そりゃ、そうだよね。
偶然って言ってたしね。
会えるとどこかで期待していた自分に、
諦めの言葉を言い聞かせる。
それからしばらくの間、
お堂の脇にある階段に座り、
1人で考え方をしていた。
この2週間、
本当は父のことで頭がいっぱいで、
落ち込んでばかりで、
前を向くには時間が足りなかったはずなのに、
あの人に会って、
優しい言葉をかけてもらって、
悲しむ時間が減ったんじゃないか。
知らず知らずのうちに、
落ち込んだ私を慰めてくれていたのかもしれない。
そうすると、
彼にお礼を伝えたくなった。
会いたい気持ちが、
どんどん膨れ上がっていく。
でも彼は現れない。
春風「………会いたかったなあ〜!
お礼を伝えたかっただけなのに。」
少し大きめの声で、
不満を溢す。
またしばらく経って、
びゅうっと夜風に吹かれた。
夜空から薄い刃物のように欠けた月が現れた。
明るさはさほどない。
京楽「あれー?君は、確か…春風ちゃん?
この前はありがとうね。
今日もお散歩に来たの?」
彼だった。
どこからか彼が現れて、
春風の前に立っていた。