満月の夜に。
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?
「誰?」
振り向いてみたが、誰もいない。
「コッチコッチ〜」
上から声がしたような気がして、
彼女は思わず、ハッと月を見上げた。
「流石にお月様じゃあ、ないよ。
きみ、面白いね?」
その男は神社のお堂の屋根の上にいた。
逆光で、顔はよく見えない。
「…こんばんは…?」
「こんばんは。独り?
女の子は夜道歩いちゃダメじゃないか。」
低くて男らしい声が彼女を咎めた。
「………子供じゃないので。
それにもう帰るところです。」
むぅと膨れ、背中を見せ、歩き始める。
?「ねえ、危ないってば。
ボクが送ってってあげるよ。
おウチどこかな〜?」
気づくと男はすぐ近くまできており、
彼女は驚き、振り返る。
「…!(いつのまに)
本当に近いので、大丈夫です。
お気遣いありがとうございます。」
そしてまた背を向けて歩き出した。
?「いいじゃないの〜。
女の子は男に甘えときなさいよ。
こっちでいいのかな?」
そう言って彼女の前を先導するように歩き出す。
月明かりに照らされて、
漸く男の姿が目に入る。
桃色の派手な羽織に、
中に死覇装を着ており、腰には帯刀している。
笠で隠れていた部分は、
長髪を一つに纏め、髭が蓄えられていた。
「……(派手な人)……」
それが彼女の率直な第一印象だった。
?「ねえ、ここで何してたのー?
ボク?ボクはね、月を見ながら呑みたくなって散歩してたんだよ。
そしたら、女神に出逢っちゃった。」
いたずらな笑みを浮かべる。
「(聞いてないし、何女神って…)
わたしも散歩のようなものをしていて、
ここに辿り着きました。
確かに、今日は満月で美しいですね。」
歩みを止めて夜空を見上げる。
大きな満月が2人を見下ろしていた。
(月なんて、ゆっくり見るのいつぶりだろう)
過去に父と団子を食べて、月を見た記憶が蘇る。
病気ばかりして、
外で遊べなかった私は、
満月の中のうさぎを探して大騒ぎしたり、
走り回ったり、
とても楽しかった思い出がある。
?「ボクは京楽春水って言うんだけど、
きみの名前は? 」
「春風です。橘 春風」
赤の他人なのに、
教える必要なんてないって思ったのに、
何故か伝えてしまった。
京楽「春風ちゃんかあ。
君らしい美しい素敵な名前だね。」
そう言ってニコッと笑い、また歩き始めた。
美しい、か。
父と近所の人以外と話す機会が少なかったこともあり、
なんて返すか迷ってしまった。
「………ありがとうございます。」////
照れ臭くなって下を向いて、男の後ろを歩く
沈黙の中、10分程度経過した頃、
京楽が口を開いた。
京楽「……ねえ君、お酒飲める?
ボク君と月を見て呑みたいんだ。
少し腰を下ろして話さないかい?」
そう言って少し歩いたところにある、
小さい川にある橋を指さす。
春風(お酒かあ、飲んだことないなあ)
でも
春風「…少しだけなら。」
誰かと話したかったのかもしれない。
まだ帰りたくなかった。