満月の夜に。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
昨夜、父が死んだ。
これで私は独りになった。
思い出の詰まったあの家には、もうたった1人。
幼い頃から2人きりだったこともあり、
父との思い出は、
本当に数え切れないほどあって、
目を閉じれば、そこに鮮明に繰り広がる。
優しくて温かくて、
強くて責任感の強い父と、
これまで支え合って生きてきた。
決して贅沢な暮らしではないけれど、
二人三脚で、いつも笑っていた。
今思えば父は、
ちゃんと幸せだったんだろうか。
弱音や泣き言、愚痴の一つも溢さずに、
私のことを支えてくれた。
最近は働き詰めで、
中々顔を合わせることも少なかったけれど、
会うたびにいつもの笑顔で声をかけてくれた。
「困っていることはないか」
「ご飯をしっかり食べなさい」
「お父さんが味方だぞ」
いつもありがとう。
ちゃんと届いてたよ。
もう、いないんだね。
町医者だった父は、
安請け合いやツケばかりのお人好しで、
とにかく人の為に動く人だった。
父は往診の帰りに、
町の外れにある神社で、
虚から子供を庇って、犠牲になったと聞いた。
最期まで、父らしいな。
生まれて初めての父のいない世界は、
暗くて長いトンネルのようで、
冷たく深い穴の底のようで、
私は一瞬で堕ちていくようだった。
天涯孤独
悲しい気持ちを通り越して、
呆然としてしまった。
葬儀が終わると、
現実味のなかったものが、
徐々に真実めいていく。
ひとりぼっちが嫌だけど、
知らない誰かに頼る方法も知らなくて、
私はそのままアテもなく、歩き始めた。
気がつくとそこは、
父が亡くなった小さな神社だった。
「無意識に会いたくなったのかな」
ぽつりと独り言を落とした。
涙はまだ出ない。
これからどうしようか。
病気がちだった私は友達もおらず、
父と2人支え合って生きてきた。
"普通"の生き方がわからない。
その夜は満月だった。
ずっと曇っていたけど、
びゅうっと風で雲が流されて、
月が私を照らしてくれた。
ザワザワ
風が強く吹き、
腰まである黒い髪が靡いた。
その時だった。
「やあ。きみどこの子?
こんな遅い時間に出歩いてちゃ、危ないよ?」
これで私は独りになった。
思い出の詰まったあの家には、もうたった1人。
幼い頃から2人きりだったこともあり、
父との思い出は、
本当に数え切れないほどあって、
目を閉じれば、そこに鮮明に繰り広がる。
優しくて温かくて、
強くて責任感の強い父と、
これまで支え合って生きてきた。
決して贅沢な暮らしではないけれど、
二人三脚で、いつも笑っていた。
今思えば父は、
ちゃんと幸せだったんだろうか。
弱音や泣き言、愚痴の一つも溢さずに、
私のことを支えてくれた。
最近は働き詰めで、
中々顔を合わせることも少なかったけれど、
会うたびにいつもの笑顔で声をかけてくれた。
「困っていることはないか」
「ご飯をしっかり食べなさい」
「お父さんが味方だぞ」
いつもありがとう。
ちゃんと届いてたよ。
もう、いないんだね。
町医者だった父は、
安請け合いやツケばかりのお人好しで、
とにかく人の為に動く人だった。
父は往診の帰りに、
町の外れにある神社で、
虚から子供を庇って、犠牲になったと聞いた。
最期まで、父らしいな。
生まれて初めての父のいない世界は、
暗くて長いトンネルのようで、
冷たく深い穴の底のようで、
私は一瞬で堕ちていくようだった。
天涯孤独
悲しい気持ちを通り越して、
呆然としてしまった。
葬儀が終わると、
現実味のなかったものが、
徐々に真実めいていく。
ひとりぼっちが嫌だけど、
知らない誰かに頼る方法も知らなくて、
私はそのままアテもなく、歩き始めた。
気がつくとそこは、
父が亡くなった小さな神社だった。
「無意識に会いたくなったのかな」
ぽつりと独り言を落とした。
涙はまだ出ない。
これからどうしようか。
病気がちだった私は友達もおらず、
父と2人支え合って生きてきた。
"普通"の生き方がわからない。
その夜は満月だった。
ずっと曇っていたけど、
びゅうっと風で雲が流されて、
月が私を照らしてくれた。
ザワザワ
風が強く吹き、
腰まである黒い髪が靡いた。
その時だった。
「やあ。きみどこの子?
こんな遅い時間に出歩いてちゃ、危ないよ?」
1/13ページ