先輩の私と後輩の君
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「…名前ちゃんなら、俺が居なくても平気でしょ」
「えっ…?」
「俺たち、別れよう」
「……………分かった」
しん、と静まり返った真夜中の公園で彼に告げられた別れ。
拒絶の言葉ももちろん浮かんだ。
それ以上にごちゃごちゃした感情に掻き消され、なんとか口を突いて出た言葉がそれだった。
我ながら可愛げがないと思う。
それでも無様に縋り付いて別れたくないと彼を困らせるくらいなら、私は身を引く事を選ぶ。
ただそれだけ。
一人取り残された公園のベンチに座り直し、ポケットから煙草を取り出す。
「…ふぅ…」
溜め息混じりに煙を吐き出せばザワザワした胸の奥がぼんやりと靄がかかったようになり、それから段々とどうでも良くなるのを感じていく。
自分でも他人に対して興味の薄い人間だと思う。
深い付き合いになったとしても心の一番奥底には踏み込ませない。常に心の深い所に壁を張っている。自分は冷めた人間なのだ。
それでも、こんな私でも好きだ好きだと犬の様に懐く彼と一緒に居るのが心地良かった。
自分なりに彼を好きだったし大切に想っていたと思う。
けれど彼からしたら不安や寂しさの連続のような苦しい日々だったのかも知れない。
「……まぁもう忘れよ」
自分に対し興味を失った彼の、その時考えていた事など思案するだけ無駄だ。
ちょうど吸い終わる頃の煙草を踏み消し腰を上げる。
家に向かい歩き始めた刹那、背後から声を掛けられる。
「せーんぱい」
「………レノ」
振り返るとそこにはニヤッと悪戯な笑みを浮かべる後輩が居た。
私がタークスに配属されてから1年後に配属されたこの男はいつも妙に私に馴れ馴れしいが憎めない後輩である。
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