君とごはん
「小腹が空いた、かも」
「ボクもおやつ食べたいんだモーン」
「頭を使うとね」
「カロリー消費するよね」
真吾、百目、ピクシーが二世を見て口々に呟いた。
「オレだって頭使ってんだけど?」
不満気に言ってみるも、
「ずいぶんと考えこんだのである」
「わしも昼が軽かったからのう」
「出されれば食べる」
「あっしもご相伴に」
と、ヨナルデに妖虎とユルグ、こうもり猫が追撃して、
「うち、お菓子とか買い置きはないんだよね……みんな、ごめんね」
と、真吾が頭をさげるものだから立ち上がざるを得ない訳で。
「今日はまだ買い物いってねぇから、ありものだぞ!」
憤懣やる方なく言ってみるも、
「やったー!」
と、喜んでいる他の衆の耳には届かず、諦めて台所へと向かった。
「さて、本当に何もねぇな」
ここのところ使徒の任務で出ずっぱりだった二世が覗いた冷蔵庫には卵二個と調味料ぐらいしか見当たらず、常備品も心許ない。
あるのは、春で安かったから任務の帰りについ買ってしまったキャベツくらいで。
「キャベツねぇ……!」
まな板を出すとキャベツを二つに割って全て千切りにしていく。
ざっくりと洗ってから、一番大きなボウルに残っていた小麦粉、卵、水をだまになるのも気にせずにざぐざくっと混ぜてゆく。
「これで、文句言ったら許さねえからな」
◆◇◆
「テーブル開けろ!」
言われて書類だの本だのを退かすと、そこにホットプレートを置く。
「真吾、電源」
「わかった」
コードを受け取って、コンセントを差し込む。
大きなボウルを持って戻ると、
「ここからは自分たちでやれよ」
と、どっかりと腰を下ろした。
「うん、これって」
「懐かしいんだモン」
中を見た真吾と百目が手を合わせる。
「キャベツ焼きだ!」
台所から真吾が油を持ってきてプレートに引くと、百目がお玉をつかってキャベツと生地の混ざったものを広げて大きな円を描いた。
「久しぶりなんだモン」
「よく、おやつに食べたよね」
「ほう」
「キャベツだけなの?」
「シンプルー」
蓋をして蒸し焼きにしている間に割り箸やら取皿、ソースにマヨネーズとポン酢などありったけの調味料をテーブルに並べた。
「そろそろ、いいんじゃないすか?」
こうもり猫に言われて蓋を開けると、片面がこんがりと焼けているのを確認して百目がフライ返しを差し込むも、
「大き過ぎて崩れそうなんだモン、悪魔く〜ん」
「え、僕?苦手なんだけど、やってみ……っ」
真吾の手にフライ返しが渡る前にさっと二世が取り上げた。
「できねえ癖にでかいの焼くなよ」
ぽかりと百目の頭を叩いて、蓋を使って器用に裏返した。
「小麦粉は生だと腹下すから、しっかり焼けよ」
そう言って真吾にフライ返しを握らせると、また座り込む。
どうしていいのか、頭を押さえる百目を見てプレートを見てからまだ機嫌の悪そうな二世を見て少し笑ってしまう。
出来上がったキャベツ焼きを切り分けて、渡す。
「はい、二世の分」
「……おう」
「ありがとうね」
「ふん」
まんざらでもない顔にかわったのに、また笑みが溢れた。
各々が好きな調味料で舌づつみを打つ中、
「悪魔くん、タバスコが欲しいだわさ」
と、ヨナルデに言われて真吾が腰をうかせた。
「確か、あったよね?」
「冷蔵庫にある」
「わかった」
パタパタとキッチンへ向かった真吾に、
「オレのあれ、ついでに持ってきてくれ」
「えー、あれは合うのかなぁ?」
持ってきたタバスコと背脂にんにくの瓶を並べて置いた。
「これ、何にでも合うだろ?」
「君だけじゃないの?」
「試してみるか」
二世から受け取って試した妖虎が噎せる。
「におい、すごいねー」
「脂もすごいねー」
瓶を覗いたピクシーたちが鼻を摘む。
「ボクはマヨソースがいちばんなんだモン」
「勧めてねえから、オレの好きに食わせろ」
わいわいと騒ぐのを横目に、こうもり猫が食べながら言う。
「ねぇ、ユルグの旦那」
「なんだ?」
「あっしらのおやつなんて、買いに出たほうがよっぽど楽なんじゃないすか?」
「……そうだな」
「なんで怒りながら作るんでやんしょ?」
「それは」
「悪魔くんに食べさせたいからに決まってるでしょ?」
いつの間にか現れたサシペレレが割って入る。
「いつ来たんでやんすか?」
「百目がおやつだよってメールしてきたから、たった今」
そう言ってこうもり猫の皿から一切れ取って口に入れると、
「二世、悪魔くん!今来たからおかわり焼いてよ!」
と、声を掛けた。
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