君の歌が好きです。
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「海ー!!!」
『怪我しないでよー?』
海沿いの土手に登り、人気のない海岸を見下ろす。
嬉しそうに叫んだスングァンはパタパタと水際へと走っていって、危なっかしい足取りに遠ざかっていくそう声をかける。
「大丈夫大じ...おっ…とっと...」
『ほら、言わんこっちゃない』
天気も良く穏やかな潮風が吹いている。
目を細めて水平線を見るとはるか遠くへ船が消えていくのが見えた。
果ての見えない海と名前しか知らない相手、現実から逃げ出して非日常に取り囲まれた私はこのままどこへいけばいいのだろう。
いつか戻らなければいけない現実に息苦しさを感じる。
『...夢なら醒めてよ』
この瞬間が現実だと錯覚してしまう前に。
打ち寄せる波の音に掻き消される私の声は風に攫われて消えてしまう。
そのまま想いまで持ち去ってくれればいいのに__
「ヌナ!!!」
ぼんやり水平線を眺めていると自分を呼ぶ大きな声に宙を浮いていたのが呼び戻された。
「ヌナ、カニ捕まえたからコロッケにしよ!」
振り返るとさっきまで波打ち際にいたはずのスングァンが小さなカニ片手に立っていた。
真剣な顔でカニを見せてくれるスングァンを見ていると少し心の苦しさが緩くなったように感じた。
『食べるには少し小さすぎない?』
ここにも私の非日常。
君の笑顔の陰りには、見ないフリをした。
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