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2人




sc『あ、もうすぐ着きそうだから降りるな』


電車の外へ足を踏み出すとヒュウヒュウと微かな風が吹き抜け、金属の擦れる音、木の軋むような音、暗闇の中で足が竦んでしまうような音が俺を取り囲むように鳴っていた。


sc「凄く古い...のかな...」


空を見上げるとスニョンの言っていた空模様とは正反対で、月明かりは分厚く黒い雲に遮られていて辺りは真っ暗だった。足が震えて思うように動けない。
そもそもメンバーの中でかなり怖がりの俺がここに来ている時点で分かり切っていたけれど、俺のリーダーとしての、ヒョンとしての責任感が擦り切れながらも俺の足を無理やり動かした。


sc「そうだ、ライト...!!」


不審がられつつも道中からしっかり両手で握りしめて持ってきたライトをつけると思いのほか明るく周囲が照らされたことに少し安心感を覚えた。
気が付けば背後に停車しているはずの電車は音もなく消えていてドクドクと鼓動が身体に響いた。


sc「スニョンを探さないと」


何もないことが逆に恐怖を煽ってくる。
意を決して線路から駅構内へ視線を戻すとカタカナの上に小さくキサラギとローマ字で書かれていた。誰かが落書きしたような崩れた字体が気になるが他に何が見つかるわけでもなくその場を離れる。

ともかく何か手掛かりを、そう思って壁沿いに視線を走らせると時刻表らしきものが掛けられているのが見えた。近付いてみるとボロボロになった紙は白紙で、日に焼けた様に黄色くなっていた。横に張られた数枚も同じように白紙だ。

このまま見ていても何も見つからないとその場を離れようとしたとき、ジャリと何かを踏んだ音がした。見たくない、見たくないと思って瞑っていた目を開けるとそれは割れたガラスの破片だった。


sc「こんなの、どこから...」


破片の続く方へライトを向けると...


sc「ヒッ...ぁ、ぁ...血、ぃ...ッあ"」


先程まで自分が立っていた場所、あの紙の貼ってあった壁の真下に、大きな血だまりがあった。

上手く呼吸ができない。

助けて、そう言っても返事は帰ってくるはずもない。

逃げ出そうにも動かない足が縺れるだけで腰が抜けて座り込んでしまった。ズルズルと這うように、それから目を離せないまま後ろへ後ろへと下がる。


sc「そ、だ...めーる」


震える手でキーを押していると、その自分の手に血が滴り落ちてきてスマホを投げだしてしまう。

怖い、怖い、怖い怖い怖い、

その思いで必死に手を擦ると、ベタリと濡れていたはずの血は見えなくなっていた。どうして、自分の手を裏返してみたその時。

ぞくり、血だまりの方から何かに見られるような視線を感じる。
自分の手から視線を上げるなんてできやしなかった。
少しでも離れたい一心で震える足で地面を蹴るとぬるりと何かで滑って進めない。

見ちゃいけない、これは見たらいけない、

自分の足元にはまた、血だまりがあった。


sc「ひ、ひぁ、ああああああ」


余りの恐怖に叫びをあげたその時、俺の手はホームと空の境を超える。
傾いた視界に見えた厚い雲の間から差し込む赤い光を最後に俺は意識を失った。




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