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1人




夕暮れ時、ホテルのベッドへ身体を沈ませる。
窓から差し込む赤い光が一日の終わりを知らせていた。


hs『ジフナ、どうしよう』


全ての始まりは、つい数時間前行きたい場所があるといって出ていった相棒からの連絡だった。


wz『何』

hs『電車に乗って帰るところだったんだけど、知らないところに来ちゃって...』

wz『は?』


明日だってスケジュールはあるのに、何をしてるんだ。
とにかく今の場所さえ聞き出せばスタッフさんに頼んで車を出してもらえる、その考えに至って再びトーク画面を開くとそこにはどうしようもない事実が載っていた。


hs『なんか、山道を走ってるんだよ』
hs『おかしくない?さっきまでめちゃくちゃ都会だったのに...』
hs『あと俺以外誰も乗ってない』
hs『さっきまでマネヒョンと一緒にいたんだけどいなくなってるし』
hs『なんで?』


いや、なんでと言われましても。
まず、マネヒョンがスニョンだけを残して電車を降りることも無いだろう。不可解なことが多すぎてなんだか嫌な予感がした。

とにかく明日のことも考えてまずはリーダーに伝えなければ。
俺はスニョンに何があったか事細かく書き込むよう催促のメッセージを送ってヒョンの元へ向かった。


sc「スニョンがいなくなったぁ?」
ww「は?」


ピコピコとゲームの音が響いていた二つ隣の部屋。
明日がオフなのをいいことにゲームをしているらしいウォヌとそこに遊びに来るため丁度廊下で会ったジュン、それからカップラーメンを中途半端に咥えたままモゴモゴ喋るスンチョリヒョンの三人と俺のスマホを囲むように座っていた。


sc「どういうことだよ、迷子ってことか?」
wz「そうだと思ったんですけど...迷子にしては様子がおかしいっていうか、不可解で...」


hs『そもそもは、日本のラーメンを食べに行こうってジスヒョンと約束してたんだ。でもヒョンの撮影が長引きそうだからって俺とマネヒョンで行ったんだよ』

hs『最初はすごく混んでたんだけど、運よく席が空いたからそこに座った。今も座ってるよ、二番目の車両の一番隅っこの席』

hs『先も長くなりそうだなって思ったから、そこから二駅はイヤホンつけて目を瞑った。寝ちゃったらマネヒョンが起こしてくれるって言ってたし、まぁ眠くなかったしいいかなって』

hs『で、目を覚ましたら誰もいなかったってわけ』


スニョンから送られてきた内容は確かにおかしいのだ。一見こいつがポカして駅を乗り過ごしてそのまま山へ、なんて風にも見えるだろうけど...


ww「なんでたった二駅で山まで行けるんだ?」
jn「スニョンがそんなことやらかすようにも思えないし...」


まだイマイチ状況が呑み込めていないのかキョトンとしているスンチョリヒョンに抱き着いたジュンはそのままカップラーメンを一口強請っている。その横で難しい顔をしたウォヌがパチパチとパソコンで何かを調べていた。


wz「とにかく、このままもしスニョンが返ってこられなかった場合を考えると...」
sc「それは困るな」


そこまで言うとやっと理解が追い付いてきたらしいスンチョリヒョンが声を上げた。カップラーメンはすっかりジュンに取られてしまったらしく、いきなりソファからヒョンが立ち上がったのにジュンが驚いて噎せていた。


sc「とりあえず、マネヒョンに確認してくるからちょっと待っててくれ」
jn「いってらっしゃぁい」


バタバタと出て行ったヒョンを見送ってスニョンとのトーク画面をもう一度開く。


wz『今どこか分かる?』

hs『うーん...暗くて外の景色もよく分からない』
hs『あ、いまキサラギエキ?ってアナウンス流れてる』

wz『分かった、調べてその駅まで迎えに行くから電車降りて待ってて』

hs『はぁい』


よかった、これで現在地が分かる。
そう思って深く息を零すとウォヌが視線を上げた。


ww「スニョン、なんて?」
wz「キサラギって駅にいるらしい。外が真っ暗で見えないってさ」
jn「え、日本って時差ないよね?まだ外、見えないほど暗くないけど...」
wz「は?」


確かにうっすら空いたカーテンの隙間からはまだ少し黄みがかった光が差し込んでいた。少しだけ端を捲って外を見ると、もう半刻も経てば沈み始めそうなほど傾いた太陽が見えた。


ww「...まずいことになったかもな」


ぼそ、と呟いたウォヌの言葉に先程感じた嫌な予感を思い出した。深刻な顔をして俺へくっついてきたジュンは視線を泳がせる。


ww「キサラギ駅なんて駅は、どこにも存在しない」
jn「こわい...」


こんなありえない話信じるはずもないのに。ジュンの一言で、急に全てが現実味を帯びてしまったように感じた。通知が鳴る音にすら鼓動が早くなる。


hs『なんか電話もGPSも使えないみたい。なんでだろう?』


メッセージを確認する間に、ドタドタと複数人の足音が廊下から響いてくる。


ww「キサラギ駅は日本では有名な都市伝説、オカルト話なんだよ」


ウォヌの言葉にゾッとした。
ジュンの俺に捕まる力がどんどん強くなる。


sc「た、大変だ...!」




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