幼い頃の水運びから月日が経ち、居酒屋の酒樽運びをする仕事に変わる。

慣れというものは恐ろしいもので村の同年代の女の子の中でも1番の力持ちになった。裏で樽を転がして運ぶ度に通りすがりの友人達に茶化される。何かあった時、重いものを運ぶのは任せろ。などと笑って返す。のんびりと過ぎる時間が心地よい。

15になって仕事を身に付けた今、家族や友人と過ごす時間が貴重になってきている。

店の中に入り店長の後ろでビールやワイン等を整えているとちらほらと常連客が入ってきた。

「紗英理ちゃん！ビールちょーだい！」
「紗英理ちゃんおつまみのお豆もよろしくね！」
「はぁい〜。ちょっと待っててね〜」

少しずつ賑わってきた店内を小走りに駆け回る。一通り運び終わると呼ばれた席に向かい、ご好意でご飯を奢って貰った。賄いがあるからと断るのは2日前に諦めた。

有難くご飯を頂いていると見かけない影が窓の向こう側に映った。たまたま窓が見える角度に座っていたのもありなんとなく気になってよく見てみる。

帽子の男が3人と白熊が1匹歩いてる…。

かなり遠くの方なので顔まではよく見えないがこんな村の一端に知らない人が来るなんて珍しい。窓の枠から姿が見えなくなる。

お店を閉める頃には頭の中から彼らの記憶は無くなっていた。