小学生に上がり幼稚園ではさほど感じなかった人の目が気になり始めた。

誰が誰にどんな目を向けているのか。それを観察するのが暇潰しになっていた。

「村山、日誌やっといて」

クラスの人気者の男子生徒はそう言うと黒板を消しに向かった。言われて投げ渡された日誌を仕方なく開き鉛筆でダラダラと書き始めるとひそひそと喋り声が聞こえてくる。

「ねー今の見た？無反応だったよ」

「折角、俊哉くん話しかけてくれたのに！感じ悪いよね」

「私達が日直だったら良かったのにね」

人気者のファンに目をつけられてしまったようだ。こちらも相手もいつも通りのことをしているだけなので一部の変なファン以外はそれぞれの話で盛り上がっている。

悪口なら本人の耳に届かないところで勝手に言ってくれればいいものをわざわざ同じ教室でひそひそ話すのはどんな意図でしているのか。

午前の授業が終わり昼食の時間に入る。給食制度の学校の為、各々が担当の仕事に取り掛かる。今日の担当は特に無いので自分の分を貰いに早まって出来た列に続いて友人と雑談しながら並ぶ。

食事を終えて全員で手を合し「ごちそうさまでした」と声を揃え片付けると食後の昼休みの時間に入った。決められた時間の中で最も長く自由にできる紗英理にとって学校にいる時の1番の楽しみだ。

図書室に行って本を借りるか、パソコン室に行って遊ぶか、罫線入りのノートに絵を描くか、選り取りみどりで何をしようか食事中考えていた。絵でも描いていようかと思っていたが友人に声を掛けられ外で遊ぶことになった。

午後に入り授業を受け合間に日誌を進め授業中に手紙やら消しカスやらを投げ合っているクラスメイトを眺め一日が終わった。