緑がユラユラと風に揺れ、追い風で流れる髪を抑え高校へと向かう。朝から部活動に励む生徒達の力強い声や音を聞きながら教室に向かう。

「紗英理ちゃん！おはよう」

「おはよう。早いね」

「今日テストあるから予習しようと思って」

友人の手元にはまとめノートと書かれた物が開かれていた。テストがあるなんて聞いていないのになんであるとわかるのか聞くと、提出しにいった教科担当の先生にこっそり教えて貰ったらしい。範囲は教わってないとのことだが1人だけ知らされるとは狡いものだ。

続々と生徒が集まって教室が賑やかになった頃担任教師がやってきて、お知らせがあります。と生徒たちを静かにさせる。

「今日から皆さんと一緒に勉強する、転校生のトラファルガーくんです。では一言お願いします。」

「どうも」

「……。えっと、分からないこと沢山あると思うのでその際は教えてあげてくださいね。じゃあそこの空いてる席に座ってください」

言われた席は廊下側の前から二番目の席だった。そのまま朝礼が始まり一人ずつ名前を呼ばれ出席確認をし連絡事項を伝えられ、授業を始める準備へとそれぞれ動いた。

授業前後の少しの時間でも興味をもった人が席を立ち右前に集っていた。

その様子を見た友人がテストがある日に転校って大変だね、と呟きに来た。そうだね、と返し同じく眺める。どうも誰が話し掛けてもあまり反応を示さないようだった。群がっていた人はチャイムが鳴ると散っていった。

授業は特にテストもなく通常通りに進行していき休み時間は噂になってたのか転校生を見に来たり絡みに来たりと誰かしらが来ていた。

帰りの時間には部活動の勧誘を横目に友人と帰る。

「テスト無かったね」

「騙された！！」

遊ばれたね、と茶化しバスへの道を歩いていく。校庭と建物の間には淡く暖かな花びらが小さく跳ねるように舞うのだった。