いつものように酒場の仕事をして、早上がりで家へと足を運んでいると妙な気配を感じとった。振り返ってみても特にいつもと変わりない風景で誰もいない。それでも妙な気配に気持ち悪さを覚え、電伝虫で友人に連絡をして友人の家へと方向を変える。

歩きながら色んな所を見るがどこも変わった様子はない。

何事もなく友人宅に着き上げてもらい家へ連絡し、食事をご馳走になったあと友人に家まで送ってもらう。

「なんかごめんね」

「全然。なんかあるよりはな。いつでも頼れな」

「うん、ありがとう」

家に着くとお礼に川で取れた魚を何匹か渡した。

玄関を開けると母が心配そうな顔でおかえりと言う。安心させるようにお互いに抱擁し合いただいまと返事をする。

翌日。

友人宅の近所で娘が殺されたと訃報が入った。母を早くに亡くした父と娘の二人暮しをしていた家族だった。盗賊が山から降りてきて嬲り殺された事を帰宅後に知った父親は放心状態でいる。

自分の身に起きなかったことは幸いだが、自分の変わりに狙われてしまった娘に手を合わせ冥福を祈った。