+10了ヒバSS

了平のスリーピース

イタリアの生地の特徴としての光沢感



 イタリアの地で、了平が初めて仕立てたダブルのスリーピースは深みのある紺色だった。夜には、黒よりも黒らしく見えた。華やかな光沢のある、なめらかでしっとりとした生地だった。
「似合ってるよ」
 雲雀は思わず声にした。
「ツイードみたいな粗いのもいいけど、君みたいな武骨な男がしなやかな生地のスーツを着ると色気がある」
「わからんな。ほめてるのか?」
「嫉妬してる」
「む?」
 いよいよ理解できず、了平は眉をひそめた。
「もてる、って意味だよ」
「俺は雲雀にもてれば十分だ」
 了平はそう言って雲雀の肩を抱いた。
20211212
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